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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/04/18
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今回は、ニコ生ゼミ4月8日(#225)から、ハイライトをお届けいたします。

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 主役主義な『エヴァ』と無能のいない『シン・ゴジラ』


 エヴァンゲリオン・スタイルには、もう1つ “主役主義” という特徴があると思います。

 主役主義というのは何かというと「作劇上、主役クラスと雑魚というのを明確に分けてしまう」というやり方なんですね。

 いわば、「主役クラス以外は全員バカ」という考え方なんですよ。


 まあ、この主役主義という言葉は、岡田斗司夫の勝手な造語だから、深く気にしないでください。

 僕は、この主役主義、つまり、主役クラス以外の脇役は全部バカというのが、すごく苦手で。
 だから、『エヴァンゲリオン』のドラマというのも、正直、わりと苦手だったんですよ。

・・・

 たとえば以下の部分ですね。

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 これは、第1話で、侵攻してきた使徒を国連軍が迎撃するシーンなんですけども。
 その際の、国連軍の幹部のみなさんの台詞です。

 「なぜだ!? 直撃のはずだ!」とか、「ミサイルが当たった!」と叫んでいるんですね。

 「戦車大隊は壊滅。誘導兵器も砲爆撃もまるで効果なしか」
 「ダメだ、この程度の火力じゃ埒があかん!」

 そんな事を言いながら、ドーンと机を叩くんですけども。
 別に、ここで机を叩いて悔しがっても、何も起きないんですよ。


 その次の “N2地雷” という、最終兵器、核兵器みたいなものを使った後のシーンもこんな感じです。
 
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 「なんだと!?」
 「我々の切り札が!」
 「なんてことだ!」
 「このバケモノめ!」

 そう言って、手前の人なんか、悔しさのあまり手がプルプルして、持っている鉛筆をボキッと折っちゃうんですけども。

 こういう台詞って、言っても仕方がないじゃないですか(笑)。

・・・

 変な言い方ですけど、手持ちの兵器で効果がないというだけで怒っちゃうような無能は、軍隊のような組織の中で出世なんてしないんですよね。

 そもそも、「N2地雷は効果がない」では ないんです。

 これ、ちゃんと第1話と第2話を見たら分かるんですけど、きちんと “足止め” が出来てるんですよね。


 だったら、N2地雷を、同じ場所に、1時間に1発の間隔で撃ち込めばいいじゃないですか。

 そういうふうに、ずーっと撃ち込み続けていれば、原理的には、使徒を無期限に足止めできるはずですよね?

 1日に24発、1年間で365×24発。同じ位置でN2地雷を爆発させれば、自己再生の時間を含めて、使徒を永遠にあの場所にフリーズさせることが出来るはずなんですよ。


 そういう事を考えて進言するのが現場指揮官の役割で、「無限にN2地雷を使ってもいいのかどうか」を判断するのが参謀の役割なんですよ。

 そういうふうに役職というのが分かれているんだから、ここで「効果がない!? なんだと! バケモノめ!」なんて言うのは、言っちゃあなんですけども “頭の悪い台詞” なんです。

 だから、ここでも特殊なアングルに頼らざるを得なくなるわけですよね。

 『エヴァ』において、こういった、すごくカッコよくキメたアングルというのが出てくる場面というのは、中身がちょっと薄い時なんですけども。

・・・

 これ、なぜかというと、『エヴァンゲリオン』という作品は、作劇の都合上、「全ての判断をネルフが行い、碇ゲンドウ司令が指示を出して、シンジくんたちが頑張る」という形になってるので、軍の上層部が無能でないと困るからなんですよね。

 だから、過剰に悔しがらせて、無理に感情的にならせている。

 この辺りは、もう、さっきも話した “ブリッジで騒ぐ雑魚” と同じ理屈なんですけども。


 しかし、そういう意味では、 “あまり無能っぽく描けない上層部の人間” も居るわけですよ。
 それが “人類補完委員会” のみなさんなんですけど。

 その結果、彼らは嫌味みたいな含みのある台詞しか言わせてもらえなくなります。

・・・

 これは、さっきの人類補完委員会の会議のシーンなんですけど。

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 暗い場所で会議をやっていて、オッサンの顔ばっかりがいっぱい出てくるんですけども。

 「しかし、碇君、ネルフとエヴァ、もう少し上手く使えんのかね?」
 「零号機に引き続き、君らが初陣で壊した初号機の修理費、国が1つ傾くよ」
 「聞けばあのオモチャは、君の息子に与えたそうではないか」
 「人、時間、そして金。親子揃っていくら使ったら気が済むのかね?」
 「それに、君の仕事はこれだけであるまい。人類補完計画それこそが君の急務だ」
 「さよう。この計画こそがこの絶望的状況下における唯一の希望なのだ、我々のね」
 「いずれにせよ、使徒再来における計画スケジュールの遅延は認められん。予算については一考しよう」

 ――ということで、真ん中のキール議長という人が浪花節っぽく、ドーンと言ったら、「では、あとは委員会の仕事だ」「諸君ご苦労だった」と言って、こいつらは消えちゃうんですけど(笑)。


 なんかね、散々揉めて、吊し上げをしながら、ほとんど「金をいっぱい使ったな、どうするの? 責任とってくれるの?」という話しかしてないんですよ。


 金額についても、いくら掛かったかを言わないし。
 そもそも、それだけ掛かるんだから仕方がないじゃないですか。

 「もっと安くつく方法があるんだったら、お前らが言えよ!」って思うんですけど。

 そういうツッコミを入れずに押し通すのは、やっぱり、無能としては描けないからなんですよね。
 
 その結果、嫌味を言わせることしかできないんです。

・・・

 ところが、『エヴァ』にあらわれていたこの辺の主役主義というのは、『シン・ゴジラ』に至る頃には、かなり切り替わっているんですよね。

 『シン・ゴジラ』の面白いところは「無能な人があまりいない」というところなんですよ。


 実は、実際のところ、『シン・ゴジラ』でやっている事というのは『エヴァ』とよく似ているんですよね。

 「大怪獣が海から上がって来る」という大情況が発生する。

 現用兵器では全く役に立たない。
 どうすればいいのかわからない。

 そんな、全く同じ現象を描いているんです。


 この時、『エヴァンゲリオン』では、これはテレビアニメだからと割り切って、「国連軍は使い物にならない。通常兵器では効果がない。軍人たちはパニックになって大声で叫んで感情的になっている。しかし、あくまで冷静な碇ゲンドウ司令は、最終兵器エヴァンゲリオンの出撃の指示を出したのだった!」って描いています。

 しかし、『シン・ゴジラ』を描く時には、これとほぼ同じシチュエーションでありながら、こういった、ちょっと楽をした作劇をしていません。

 主役主義、つまり「脇役は全てバカ」という扱いにすると、シナリオ全体に嘘が多くなってしまうので、内容を濃くしているんですね。

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