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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/03/30
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今回は、ニコ生ゼミ3月18日(#222)から、ハイライトをお届けいたします。

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 カリオストロ公国の秘密【3】“ルパンと伯爵は同じ欲望を抱えていた!


 伯爵家は、すでに無用となった大公家を滅ぼした。

 しかし、悲しいことに、彼らが行っている偽札の製造は、上手くいっているように見えて、「最近、印刷の出来がよくない」といった話が聞こえてきています。

 何よりも “国際金融 の波” というのがカリオストロ公国にも押し寄せているんですね。

 このアニメを作っていた当時ですら、紙幣よりも電子化されたデータが市場を動かすような時代になってしまっていたんです。

 つまり、もう、カリオストロ伯爵家が作っている偽札ですら、金貨を作っていた大公家が時代遅れになったのと同じように、徐々に時代遅れになっていっている。

 おまけに印刷精度は落ちているし、ジョドーをはじめとした暗殺者である “影” の面々も、もう中年のオッサンばかりという状態なんですね。

・・・

 なので、実は、この時点でのカリオストロ公国に残っている財産は2つしかないんです。


 1つは、「ヨーロッパで1番古い貴族の血筋」。

 つまり、なぜ伯爵はクラリスと結婚して2つの家を1つに合わせなければいけなかったのかというと、彼女と結婚して自分達の子供をいっぱい作るためです。

 その子供を、イギリスとかフランスとかスペインとか、どこでもいいから王家の跡継ぎに嫁がせて、なんとかどこかの王位に付かせることくらいしか、今のカリオストロ公国に打てる手は残っていないんです。


 それと同時に、伯爵が起死回生の手段として考えていたのが、「秘められた祖先の財宝」というヤツです。

 伯爵は、この正体の分からない財宝を獲得し、クラリスと結婚することによって、ヨーロッパで最も古い貴族の血をウリにして婚姻外交を続けることが出来れば、カリオストロ公国をもう一度 立て直すことが出来るのではないかと考えていたんです。

 「ハプスブルク家みたい」(コメント)

 そうそう。
 ハプスブルク家の戦略と同じですね。

 財産がなくなって貧乏になっちゃったハプスブルク家だと思ってください。

・・・

 では、最後に、ルパンが指摘し続けた、伯爵の “クラリスへの恋愛感情” についてなんですけど。
 これはね、正直、僕にも分からないんですよ。

 なぜかというと、この映画のカットの隅々まで見たんですけども「伯爵はクラリスが好きだ」という証拠は一切 描かれてないんです。

 「そんな感じがする」というカットならばあるんですけど、そこから次のカットに変わると、急に冷酷になって殺そうとしたり見捨てようとしたりしてるんですよ。

 要するに、宮崎監督としては、かなり注意して、恋愛感情みたいなものを入れないように作っているということなんですね。


 もちろん、「ストイックな人だから、あえて伯爵の中の恋愛感情は隠してる」という可能性もあると思うんですけども。

 でも、ここまで描かないようにしているというのも、宮崎さんにしては珍しいんです。


 じゃあ、なぜ、ルパンは伯爵を「色と欲」とか「ロリコン」などと罵ったのか?

 これはもう、僕から見れば明らかで「カリオストロ伯爵はルパンの “シャドー” だから」なんです。

 『ラピュタ』の特集をした時に、「おそらくパズーはシータと出会わなければムスカになっていた」という話をしたと思うんですけども、それと同じで、ルパンとカリオストロ伯爵も1枚のコインの裏表なんです。

・・・

 3月18日(#222)のニコ生ゼミの解説の中で「『カリオストロの城』のオープニングに込められたテーマは、真っ当な人達のまともな生活から除外された闇の世界に生きているルパンたちの孤独だ」という話をしました。

 伯爵というのも、それと同じく、真っ当な生き方から外れた闇の世界から、本当の光の世界を目指した男なんですね。


 実は、「いつまでも偽札製造や暗殺に頼っていてはカリオストロ公国に未来はない」ということを誰よりも知っているのは伯爵なんですよ。

 なので、国連にも加盟するし、インターポールにも友人を作るし、自分の結婚式を世界中に生中継させようとするんです。

 最も古い貴族の血を作ろうとしたり、祖先の財宝を求めていたのは、汚い方法を使わずにカリオストロという国を存続させる手段を探していたから。

 汚い世界から足を洗って、真っ当な世界に生きたいと思っていたからなんですね。


 クラリスに対して「そうとも、俺の手は血に染まっている。しかし、お前もそうだろう?」と言ったのはツンデレなんですよ。

 彼の言葉を綺麗な表現で言い直すと「だから、2人で手と手を取り合って、明るいまともな世界に生きようじゃないか」となるわけですね(笑)。

 彼の行っていた豪華な晩餐会も、結婚式も、全ては “闇の伯爵家” という自分の出自に対する反発であって、彼は、誰よりも、自分が滅ぼした大公家のようになりたかった人間なんですよ。


 それに対して、ルパン三世というのは、カジノに忍び込んで盗んだ金が偽物だと知り、それを捨ててカリオストロに来た男です。

 ルパン自身も、実は、泥棒稼業という闇の世界に疲れを感じていて、本物の世界に憧れてカリオストロに来たんです。

 そして、そこでクラリスという光のような少女に出会い、惹かれてしまった。

 だからこそ、カリオストロ伯爵が金と名誉だけでなくクラリスも欲しがっていることがわかってしまったんですね。

 なぜなら、2人とも闇の世界の住人であり、2人とも光を目指しているという意味では、ルパンと伯爵は全く同じだから。


 ただし、ルパンは光を目指す時にも “泥棒の流儀” で目指そうとするし、伯爵も自分がこれまでやっていた “陰謀家の流儀” で光の世界を目指そうとする。

 実は、この2人とも、自分の手法というのを頑(かたく)なに守る職人気質の野郎なんですよ(笑)。

・・・

 ルパンは、「カリオストロ伯爵が自分と同じくクラリスを欲しがっている」と考えているようなんですけど、伯爵自身は、この映画の中で一度も「クラリスが欲しい」だなんて言ってないんですよ。

 つまり、これはルパンの一方的な思い込みなんです。

 さて、僕は、このルパンと伯爵のような関係のヤツらを他にも知っています。

 それは誰かというと、ジンとパリストンなんです(笑)。

 『HUNTERXHUNTER』に出てくるジンとパリストンというのは、「俺とお前は似た者同士。思いつくのは外(げ)の道ばかり」と言うくらい、両者とも根が同じ人間なんです。

 だからこそ、お互いに「許せない!」「許せない!」ってなっちゃうわけですね。


 ひょっとしたら、ルパンと伯爵というのも、出会いの順番が違っていたら、もっと違った関係になれたかも知れない。

 だって、ルパンの相棒である次元にしろ五ェ門にしろ、いい加減、泥棒を家業としているクソみたいなヤツらですからね(笑)。

 出会いの順番さえ違ったら、カリオストロ伯爵とルパンというのも相棒になれたかもしれません。

 まあ、似た者同士ということで、終生 お互いのことを大嫌いだったかもわからないですけどね。

・・・

 つまり、ルパンと伯爵、そしてクラリスというのは、本来、出会うべきではなかったんです。

 『カリオストロの城』というのは、そんな三人が出会ってしまったことによる悲劇でもあります。

 悲劇なので、結局、クラリスだけはこの お話の最後に解放されたんですけども、伯爵は死んでしまう。

 そして、ルパンという泥棒も、このカリオストロでの1件を最後に歴史から姿を消すと僕は考えているんですけど、この話は番組の後半にしましょう。

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