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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/02/27
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今回は、ニコ生ゼミ2月18日(#218)から、ハイライトをお届けいたします。

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 シャーデンフロイデの謎 1・“ざまあみろ!”という感情


 今日は“シャーデンフロイデ”、ドイツ語で「毒のある喜び」という意味なんですけど、これについて話をしようと思います。

 では、一番最初は「シャーデンフロイデとは?」の話から始めましょう。

・・・

 ローガン・ポールというYouTuberがいます。
 まあ、「世界で1番有名なYouTuber」と言ってもいいでしょう。

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 チャンネル登録者数が1670万人。
 わずか22歳にして年収14億円以上と言われています。

 有名なエピソードとしては、「去年の年末に、青木ヶ原の樹海に死体を撮影しに行って、それを晒した」ということがありましたね。

 まあ、その動画が大炎上したおかげで、お詫びした上に、自殺防止のために1億円以上を寄付したんですけど。

 だけど、そんなことがあった直後にも、死んだカエルに電気ショックをしたり、池から拐ってきた仮死状態の鯉に人口呼吸をするなどの炎上気味の動画を投稿していて、全く反省してないということで、非難が殺到しているそうです。


 これに対して、YouTubeのCEOは「まだアカウントの削除は出来ない」と言っています。

 YouTubeの運営方針としては“スリー・ストライク・アウト制”を取っているので、まだ1回目か2回目ぐらいしか悪いことをしていない彼のアカウントを削除することは出来ない、とのことなんですけど。

 こういった回答に対して「一般人のYouTubeアカウントは、ちょっとでもマズいことがあったらすぐに削除するくせに、なんでこのローガン・ポールに対しては削除しないんだ!?」ってことで、まあ、揉めに揉めています。

 つまり、「公平性を欠いている」、「YouTubeのルールがよくわからない」、「もし、一般人のアカウントに対して厳しいルールを適用しているのなら、ローガン・ポールのアカウントだって削除しろよ!」って言いたいわけですね。

 さらに、「ローガン・ポールに14億円も払っているということは、実はYouTube側は、それ以上に儲けているということ。だから、削除出来ないんじゃないか?」なんてふうにも勘ぐられて、まあ、揉めています。


 確かに不公平な感じがしますよね。

 アメリカでは、「許さない! ローガン・ポールのアカウントを削除するだけでなく、これまでの広告収入も全部没収せよ!」とか言ってる人もいて、炎上はまだまだ続いてます。

・・・

 こういうYouTuberの炎上というのは、最近、ニュースでもよく流れるようになりました。

 なぜこうにも炎上するのかというと、これは僕の想像なんですけど、まず「YouTubeでの成功というのは誰にでも出来そうに見えるから」なんですね。

 おまけに、ローガン・ポールがやってるような、「非常識なことをやって、アカウントを稼いでいる」という部分も大きいでしょう。


 ローガン・ポールは、樹海の他にも、たとえば、『ポケモン』のモンスターボールの形をした大きなボールを通りすがりの自動車に投げつけて「ポケモンだ!」って言ってる動画もアップしています。

 もう、本当に危ないですよね。

 なんか、今回の炎上についての謝罪動画でも、またアクセス数を稼いだそうなんですけども。

 そういう非常識な、他人の迷惑になるようなことをやって、アクセスを稼いでいるというところで、みんなから反感を買っているわけです。

 こういった、「なんだこいつは! けしからん!」と思った相手が罰を受けた時に、「ざまあみろ!」と思ってしまう感情のことを“シャーデンフロイデ”というんです。

・・・

 さて、このシャーデンフロイデという言葉が一番初めに使われたアニメ作品というのは、意外なことに、たぶん『ザ・シンプソンズ』なんですよ。

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 シーズン3の第3話の『ホーマーの願い事』というエピソードにおいて、この言葉が使われているんですね。


 これがどんな話かというと。主人公のホーマー・シンプソンが暮らす家の隣に、ネッド・フランダースという人が住んでいるんです。

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 このネッド・フランダースの家庭というのは、もう、何から何までが理想の家族なんですよ。

 奥さんは優しくて、ホーマーが言うには「あいつの奥さんは、自分の奥さんと違って尻がキュッと上がっている」。

 ホーマーの息子は家でも学校でも問題ばかり起こしているバカ息子なのに対して、フランダースの息子2人はお父さんの言うことを何でも聞いて、おまけにお父さんが大好きという、理想的なファミリーなんですね。


 仕事でも成功しているし、自宅の庭でバーベキュー・パーティーをやったら、人がいっぱい来てくれるくらい人望もある。

 ホーマーはそれが羨ましくてしょうがないんです。

 おかげで、パーティへの招待状を貰ったんだけども、悔しくて、素直に喜べないわけです。


 そんなネッド・フランダースは、バーベキューの途中で重大発表というのをします。

 「もう俺は、会社を辞めることにした!」と言って、ネクタイをその場で、バーベキューのグリルで燃やしちゃうんですね。

 会社を辞めて何をするかというと、“左利きの専門店”を作ると言うんです。「アメリカ人の10人に1人は俺と同じ左利きだ! だから、左利きの専門店を作るんだ! 独立するぞ!」って言うんですね。

 それを聞いたホーマーは、なぜだかもう、ムカムカしてきて「失敗すればいいのに!」って願ってしまうんですね。

 アメリカには“チキン占い”というのがあるんです。

 「バーベキューの時に鶏とか七面鳥を丸々焼いた時に残った骨の両側を、2人が片方ずつ持って引っ張りあって、骨が割れた時に多く残った方の願いが叶う」みたいなものなんですけど。

 これをネッドとホーマーの2人でやることになった時、もちろんフランダースの方は「自分の店が成功しますように」って願うんですけど、ホーマーの方は、ついつい心の中で「誰も客が入らずに閉店してしまうフランダースの馬鹿げた左利き専門店」という情景を思い浮かべて、これを願ってしまうんですね。

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 さて、ネッドの店が開店したわけなんですが、ホーマーが店を見に行ったら全くお客さんが入っていなかったんですね。

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 それを見たホーマーは、なんだか楽しくなって、ニヤニヤしながら「ネッドの店はガラガラだったぞ!」と家族に話します。


 すると、ホーマーの娘である天才児のリサ・シンプソンが「パパはシャーデンフロイデよ」というふうに言ってくれます。

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「シャーデンフロイデってなんだよ?」とホーマーが聞くと、「ドイツ語で“他人の不幸を喜ぶ恥知らず”っていう意味よ」とリサは続けるんですね。

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 それを聞いたホーマーは、「自分にそんな卑しい感情があるとは思ってもみなかった!」って、すごくビックリするんです。

 まあ、アニメを見てる人間は、みんなわかってたことなんですけどね(笑)。


 ホーマー・シンプソンというのは、実はかなり単純な性格で、自分が他人の不幸を喜んでいるだなんて思ってなかったんです。

 なので、「いつもチヤホヤされて幸せそうだから、パパもつい……」って、一生懸命リサに言い訳をします。

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 「まあ、俺一人がそんな悪い想像をしても別にかまわないだろ」っていう、僕らもよくする言い訳みたいなものですね。

 だけど、娘のリサは、そんな父親のことを、なんかすごく嫌な目で見るんですね。


 この、「ネッドの店はガラガラだったぞ!」と言って喜ぶ感情がシャーデンフロイデです。

 このエピソードのオンエアは、なんと今から27年前の1991年。
 『シンプソンズ』、メチャクチャ早いですね。

・・・

 さて、このシャーデンフロイデという概念について、最近、本が出ました。

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 まずは、とにかくベストセラーをバンバン出している中野信子さんの『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』という本。

 これはすごく売れてます。

 そして、もう一冊は、たぶん、この本の元ネタになっている、リチャード・H・スミスの『シャーデンフロイデ 人の不幸を喜ぶ私たちの闇』という本ですね。

 こちらは少し難しいです。

 この2冊の本をベースにして、今日は話をしていきます。


 中野先生の本は、すごく読みやすくて、サッと読めるんですけども、「あれ? これ、科学的にどうなの?」とか、「ちょっと待って、ここ、検証されてるの?」っていう部分がいっぱいあったんですよね。

 なので、僕もかなりいろんなところを調べたり、あとは、洋書の翻訳本の方を読んで裏を取ったりしたので、一応、今日、話す部分については、わりと大丈夫な感じだと思います。

 今日の前半では、この2冊の本の内容紹介と補足説明の話から入っていこうと思います。


「どっちを読んだほうがいい?」(コメント)

 読むんだったら、中野先生の方が読みやすいので、わりとパッと読めちゃうし、お薦めですね。


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