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「『へうげもの』 に描かれる“侘び数寄”の世界・前編」
千利休の極めた“侘び茶”というのは、無駄を削ぎ落とした先にある美しさなんですよ。
それを完全に表現した茶室を見て、古田織部は驚いているんですね。
さて、秀吉の問いかけに対して、千利休は「それが私の業にございます」と答えます。
それを聞いて驚いた秀吉が、「新しき価値観を天下に押し付けると申すか!?」と言うと、「信長公のもとではそれはかないませぬ。それを実現するには、私の道を知り、野心をともにする……」と答えます。
このあたりから、秀吉に対して「信長、殺しましょうよ」という説得が始まるんですけど、すごく良い導入でしょ?
つまり、千利休にとって、舶来好みな信長の作ろうとしている華やかな世界というのは邪魔なんですね。
安土城に行くと、安土城は真っ黒な漆に塗られているんですよね。
この黒い城、一応、千利休的なセンスによって黒く塗られてるんですけども。そこに金色の龍がワーッと描かれていて、まあ、メチャクチャカッコいいんですよ。
すると、その反応を見た信長のお付きの人から、「信長さんはあそこに住んでるんですよ。あれ、住居なんです」って言われて、「ええー? 天守閣を五重塔にして、おまけに中に住む? なんて破天荒なことを考えるんだ!」と、さらにビックリするんです。
さっきの部屋を見たらわかる通り、信長は舶来好みで、めっちゃ派手なんですよ。
なので、「黒こそが至高の色である」という自分のコンセプトに、とりあず理解を示して学ぼうとしてくれている秀吉を使い、この信長を暗殺したというのが、『へうげもの』の中で描かれている歴史の事実であります。
いかがでしたか?
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/02/20
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「『へうげもの』 に描かれる“侘び数寄”の世界・前編」
じゃあ、『へうげもの』の中から、面白いところ、僕が好きなところを色々と紹介していきます。
最初に話したように、本能寺の変とは、実は千利休が裏で画策して起こさせたことなんですけど。では、なぜ彼はそんなことをしたのか?
これは、単行本4巻に描かれている一幕です。
千利休の茶室に招かれた古田織部が、「そうか、この暗さは、微妙な場に窓を置き、所作のみを鮮やかに見せるため。そして、この狭さは一切の無駄を削ぎ緊張感のみを増すため。ここは目を凝らさねばわからぬ恐るべき“数寄の要塞”なのだ!!」っていうふうに言っていますね。
千利休の極めた“侘び茶”というのは、無駄を削ぎ落とした先にある美しさなんですよ。
それを完全に表現した茶室を見て、古田織部は驚いているんですね。
では、そもそも、“侘び” という言葉が何を意味しているかというと、実は “貧しさ” のことなんですよ。
「豊かさとは装飾であって、余分なものであって、それらを外して行った先の貧しさの中にこそ、侘びという美しさがあるんだ」ということなんです。
「豊かさとは装飾であって、余分なものであって、それらを外して行った先の貧しさの中にこそ、侘びという美しさがあるんだ」ということなんです。
ところが、この侘びという概念は理解するのが難しいんですね。
「豊かな方がカッコいい」っていうのは誰でもわかるんですよ。
でも、「貧しい方がカッコいい」というのは、言われてみないとピンとこない。
師匠みたいな人がちゃんと伝えないと、「要するに、貧乏くさかったら何でもいいんだろ?」って、みんなどんどん間違えちゃうわけです。
「豊かな方がカッコいい」っていうのは誰でもわかるんですよ。
でも、「貧しい方がカッコいい」というのは、言われてみないとピンとこない。
師匠みたいな人がちゃんと伝えないと、「要するに、貧乏くさかったら何でもいいんだろ?」って、みんなどんどん間違えちゃうわけです。
つまり、千利休が完成させた侘び数寄という概念には、正解と間違いというのが明確にあり、この正解というものを、お互いが切磋琢磨しながら目指して行くという、かなり知能指数の高い概念。
つまり、千利休の提唱する“侘び茶”という思想には教育が必要だということなんですね。
つまり、千利休の提唱する“侘び茶”という思想には教育が必要だということなんですね。
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当然、侘びという概念は周りの人からもよく理解されません。
劇中、千利休は秀吉にも「なぜ、黒なのか?」と聞かれるんです。
劇中、千利休は秀吉にも「なぜ、黒なのか?」と聞かれるんです。
これは、1巻の後半に載っているエピソードです。
「だが、わからないことが一つある。千利休殿は何ゆえ黒を好むのか? 黒というのは喪に服す色だ。死を司る色だ。日常に用いる色ではない。南蛮でも明でも朝鮮でも、古今東西、黒が最も格好良しとは聞いたことがない。なぜ、わざわざ黒く作るのだ? こんなものは、下賤な者から高貴な者まで誰も欲しがらぬ」と、秀吉は言います。
まあ要するに「普通に考えたら、黒がカッコいいはずがないじゃんか」と言っているんですね。
今、コメントで「でも、黒猫はカッコいいですよね」って流れたけど、そう思えるのは、僕らが、千利休が作った「黒はカッコいい」と思える世界を通ってるからなんですよ。
千利休の以前の時代というのは、確かに、古今東西、「黒はカッコいい」なんていう文明なんて、まあ、なかったわけですから。
千利休の以前の時代というのは、確かに、古今東西、「黒はカッコいい」なんていう文明なんて、まあ、なかったわけですから。
さて、秀吉の問いかけに対して、千利休は「それが私の業にございます」と答えます。
「何事も、続けていれば無駄を見つけてうるさく感じる。その無駄を省いて省いて省くと、最後はこの色のごとくなる。この黒こそが、私の理想とする色であり、理想の生き方。世にいう“名物”というのは全て渡来のもの。その価値を破壊してでも、私は黒こそが至高だと証明したく存じます。それが止むに止まれぬ業なのです」と。
つまり、「外国から来たものこそが最も価値があるという、その当時の常識を破壊してでも、国産のものが最も優れていることを証明したい」と言ってるんですね。
それを聞いて驚いた秀吉が、「新しき価値観を天下に押し付けると申すか!?」と言うと、「信長公のもとではそれはかないませぬ。それを実現するには、私の道を知り、野心をともにする……」と答えます。
このあたりから、秀吉に対して「信長、殺しましょうよ」という説得が始まるんですけど、すごく良い導入でしょ?
つまり、千利休にとって、舶来好みな信長の作ろうとしている華やかな世界というのは邪魔なんですね。
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一方で、信長とはどういうセンスを持った人物だったのかというと。
これは、主人公の古田織部が、まだ“古田佐助”と呼ばれていた時代に、安土城に行くシーンです。
安土城に行くと、安土城は真っ黒な漆に塗られているんですよね。
この黒い城、一応、千利休的なセンスによって黒く塗られてるんですけども。そこに金色の龍がワーッと描かれていて、まあ、メチャクチャカッコいいんですよ。
佐助は、「なんと、五重塔の天守閣!」と驚きます。
天守閣というのは、いわゆる物見台であって、観測のためについているものなのに、それがあたかも五重塔のようになっているんです。
佐助は「このお城、金閣寺と合体してるじゃん!」と思ってビックリしたんですね。
天守閣というのは、いわゆる物見台であって、観測のためについているものなのに、それがあたかも五重塔のようになっているんです。
佐助は「このお城、金閣寺と合体してるじゃん!」と思ってビックリしたんですね。
すると、その反応を見た信長のお付きの人から、「信長さんはあそこに住んでるんですよ。あれ、住居なんです」って言われて、「ええー? 天守閣を五重塔にして、おまけに中に住む? なんて破天荒なことを考えるんだ!」と、さらにビックリするんです。
・・・
で、城の中にはいった古田織部は、「ここにいると宗易(千利休)殿の茶室とは真逆の興奮が……!」という感想を漏らします。
つまり、千利休の茶室を見て、「これは数寄の要塞だ! 無駄を取り払うということはカッコいいんだ!」と思い知ったはずの古田織部も、それとは逆に徹底的な装飾を凝らして作られた信長の城を前にして興奮を押さえられない。
安土城とは、そういう場所だったんですね。
安土城とは、そういう場所だったんですね。
信長の元に行くと、上半身裸でひたすら仕事をしていた信長が、「ハロー」みたいな気さくな感じで、「ボアノイチ!」というポルトガル語で挨拶してくれる、という流れになっています。
千利休にとって、信長のこういった舶来好みとか、華やかな世界というのは邪魔なんですね。
千利休としては、安土城を黒く作るんだったら真っ黒にして欲しい。
なのに、信長は「おお黒、カッコいいじゃん。その上に金をあしらおう」という、なんか、池袋のヤンキーみたいなことを言い出して、華やかに華やかにしちゃうんですね。
なのに、信長は「おお黒、カッコいいじゃん。その上に金をあしらおう」という、なんか、池袋のヤンキーみたいなことを言い出して、華やかに華やかにしちゃうんですね。
さっきの部屋を見たらわかる通り、信長は舶来好みで、めっちゃ派手なんですよ。
なので、「黒こそが至高の色である」という自分のコンセプトに、とりあず理解を示して学ぼうとしてくれている秀吉を使い、この信長を暗殺したというのが、『へうげもの』の中で描かれている歴史の事実であります。
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