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「『へうげもの』 に描かれる“侘び数寄”の世界・前編」
千利休の極めた“侘び茶”というのは、無駄を削ぎ落とした先にある美しさなんですよ。
それを完全に表現した茶室を見て、古田織部は驚いているんですね。
「豊かさとは装飾であって、余分なものであって、それらを外して行った先の貧しさの中にこそ、侘びという美しさがあるんだ」ということなんです。
「豊かな方がカッコいい」っていうのは誰でもわかるんですよ。
でも、「貧しい方がカッコいい」というのは、言われてみないとピンとこない。
師匠みたいな人がちゃんと伝えないと、「要するに、貧乏くさかったら何でもいいんだろ?」って、みんなどんどん間違えちゃうわけです。
つまり、千利休の提唱する“侘び茶”という思想には教育が必要だということなんですね。
劇中、千利休は秀吉にも「なぜ、黒なのか?」と聞かれるんです。
千利休の以前の時代というのは、確かに、古今東西、「黒はカッコいい」なんていう文明なんて、まあ、なかったわけですから。
さて、秀吉の問いかけに対して、千利休は「それが私の業にございます」と答えます。
それを聞いて驚いた秀吉が、「新しき価値観を天下に押し付けると申すか!?」と言うと、「信長公のもとではそれはかないませぬ。それを実現するには、私の道を知り、野心をともにする……」と答えます。
このあたりから、秀吉に対して「信長、殺しましょうよ」という説得が始まるんですけど、すごく良い導入でしょ?
つまり、千利休にとって、舶来好みな信長の作ろうとしている華やかな世界というのは邪魔なんですね。
安土城に行くと、安土城は真っ黒な漆に塗られているんですよね。
この黒い城、一応、千利休的なセンスによって黒く塗られてるんですけども。そこに金色の龍がワーッと描かれていて、まあ、メチャクチャカッコいいんですよ。
天守閣というのは、いわゆる物見台であって、観測のためについているものなのに、それがあたかも五重塔のようになっているんです。
佐助は「このお城、金閣寺と合体してるじゃん!」と思ってビックリしたんですね。
すると、その反応を見た信長のお付きの人から、「信長さんはあそこに住んでるんですよ。あれ、住居なんです」って言われて、「ええー? 天守閣を五重塔にして、おまけに中に住む? なんて破天荒なことを考えるんだ!」と、さらにビックリするんです。
安土城とは、そういう場所だったんですね。
なのに、信長は「おお黒、カッコいいじゃん。その上に金をあしらおう」という、なんか、池袋のヤンキーみたいなことを言い出して、華やかに華やかにしちゃうんですね。
さっきの部屋を見たらわかる通り、信長は舶来好みで、めっちゃ派手なんですよ。
なので、「黒こそが至高の色である」という自分のコンセプトに、とりあず理解を示して学ぼうとしてくれている秀吉を使い、この信長を暗殺したというのが、『へうげもの』の中で描かれている歴史の事実であります。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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