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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「“100%信じて読むのが一番楽しい!” オタキング流・歴史漫画の読み方」

2018/02/19 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/02/19
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今回は、ニコ生ゼミ2月11日(#217)から、ハイライトをお届けいたします。

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 “100%信じて読むのが一番楽しい!” オタキング流・歴史漫画の読み方


 僕が一番 良いと思う歴史漫画の読み方がどういうものかというと。

 たとえば「織田信長は秀吉に殺された」とか、「千利休は切腹の間際に大暴れをすることで最後のおもてなしをした」とか、「真田幸村は大阪の陣でレオナルド・ダ・ヴィンチの戦車に乗って戦った」と言うと、必ず「それは無茶だ」とか、「史実と違う」みたいなツッコミが一斉に入るんです。

 コメントにも、いっぱい流れましたよね?

 だけど僕は、千利休 流に言うと「そういったツッコミは “余計” だ」と思うんですね。


 歴史漫画を読む時に一番いいのは、「こうだったかもしれないな」どころではなく「こうだったに違いない!」と信じる所から始めることなんですよ。

 マジな話、完全に信じて読むと、面白さ倍増ですよ?


 もうね、これまで学んできた歴史的な常識とか、そういうものは全部 取っ払って、「絶対にこうだ!」って、信じたほうがいい。

 「千利休は、切腹を命ぜられた時、周りの人間に対してあえて毒づくことで、自分の介錯を行う古田織部の罪悪感を少しでも晴らそうとしてたんだ!」と信じた方が、はるかに面白いし、頭に入ってくるんですよ。

・・・

 たとえば、よしながふみの『大奥』っていう漫画がありますよね。

 「江戸時代に将軍家の男子がほとんど死んでしまって、女ばかりで将軍家やる」っていう漫画。


 あれも、「こんなことあるわけがないよな」とか考えるんじゃなくて、「江戸時代はこんなことになっていたんだ!」って信じて読んだ方が、絶対に面白いし、実は、その方が、作品内に散りばめられた“徳川家の政治の進め方”というのが、頭の中によく入ってくるんです。


 あとは『蒼天航路』っていう、僕が大好きな三国志の漫画があります。

 この『蒼天航路』の中では、なんと諸葛孔明は人間ではなく“妖怪”として描かれてるんですよ(笑)。

 だから、気が弱いやつには諸葛孔明は見えるんだけども、主人公の曹操孟徳は周りをフラットな目で見る人物だから、妖怪である諸葛孔明が見えないし、声が聞こえないんですよ。

 
 自分が無視されていることに諸葛孔明がすごく怒ると、周りにいる妖精たちが「孔明、お前、人間じゃないんだよ。忘れてた?」 みたいなことを言うシーンがあるんですけども。

 これについても、「諸葛孔明は妖怪だったに違いない!」と思って読んだ方が、絶対に面白いんですよ。


 なにより、三国志演義のような歴史書に大幅な演出を加えて作られた面白いエンターテイメントの中では諸葛孔明は大活躍するんですけど、正史の中での諸葛孔明って、ほとんど出てこないんですね。

 だから、妖怪と考えた方が面白いんですよ(笑)。


 他にも、宮﨑駿の『風立ちぬ』っていうアニメがあります
 
 あそこで描かれている主人公の堀越二郎というのも、実際の堀越二郎とは全く関係ないんですね。


 本当の堀越二郎は、別に人でなしではないし、ゼロ戦を作った後は、YS-11とか新幹線とかの開発に、ちょっと口を出したりする、わりと人のいいオッチャンだったんです。

 でも、「あのアニメの中に描かれているような、美しいものにしか興味がなくて、奥さんを見殺しにしたヤツなんだ!」というふうに考えてる方が、絶対に面白いんですね。

・・・

 「まあ漫画だし」っていう引いた目線で読んでいる限り、作者が見ている世界に触れるほどに近づけないんです。

 所詮、僕らはそれを見物している観客になっちゃって、面白くないんですよ。


 何回か前に「ブラゼルダ」っていうタイトルで『ゼルダ』の世界をブラタモリ風に紹介する企画をやったんですけども、あれにしたって、『ゼルダ』の中にあったことを歴史的な事実だと信じることで、ああいうふうに語れるわけです。

 『天空の城ラピュタ』というアニメを語った時も、「ラピュタという物語は、この世界の中に本当にあって、パズーやシータも実在している」と思わないと、やっぱり、あんなふうには語れないんですね。


 作者と同じ風景を見るどころか、作者以上に作品世界を信じ切ることができれば、絶対に面白いリターンが帰ってくるんです。

 なので、今回も、ブラゼルダの時と同じように、「『へうげもの』に描かれていることは歴史そのものだ! 真実だ!」と信じ切って語ります。


 ちなみに、これ、SFなどの完全に架空の物語を見る時でも、ノンフィクションのドキュメンタリーを見る時でも、全部 同じです。

 というか、これは僕は映画や読書、その他全てに当てはまると思うんですけども。「本当だったんだ!」と信じさせてくれる作品こそが良い作品で、信じきれない作品というのは、やっぱりイマイチな作品なんですね。

・・・

 ただ、こういうものを本気に し過ぎることには、もちろん欠点もあります。
 本当だと思って他人に話すとマズい場合もありますよね。

 だけど、そういった欠点については、リカバーの方法があるんです。
 
 それは何かというと、「他の歴史作品も読むこと」なんですよ。


 『へうげもの』以外にも歴史漫画っていっぱいあります。

 たとえば『センゴク』でも何でもいいです。
 そういうのを色々と比べて読んでみるんです。

 それらについても、全部 信じていいんですよ。

 『センゴク』を読んでる時は、「ああ、仙石権兵衛はこんなヤツだったに違いない!」とか、「秀吉は、きっとヤンキーのトップみたいなヤツだったに違いにない!」と信じて読む方が面白い。

 そうやって、色んな漫画を信じて読んでいると、それらのブレンドの中から、自分独自の歴史観が作られるんですよね。


 というか、これ以外の方法で、独自の歴史観なんて作れないんですよ。

 「歴史観というのは、正しく“間違ってないもの”をちゃんと読んだ上で作られる」なんていうのは幻想です。そんなこと、誰もやっていません。

 誰もが、司馬遼太郎を読んだり、TVドラマを見たり、人によっては『銀魂』を見たりして歴史観を育んでいるんです。

 ……いや、『銀魂』を見て「新撰組はこうだったに違いない!」と信じるのも全く構わないんですよ?

 『銀魂』以外も読みゃあいいだけなんだから(笑)。

 とにかく、そういったものをまともに信じちゃうという所から、興味の取っ掛かりが作られるんです。

・・・

 もちろん、その他にも「資料を真面目に調べる」という方法もあります。

 Wikiを始めとして、いろんな本や資料を調べるという方法、僕も今回やりましたけども。


 そういった資料を調べてわかることというのは、「本当はどうだったのか」ではないんですよ。

 資料を調べれば調べるほど「本当なんてものは、ないんだな」っていうのがわかるだけなんですね。


 今、僕らが本当の歴史だと思っていることというのは、「それぞれの資料を照らし合わせた中で最も辻褄が合うから、これにしておきましょう」という程度のものでしかないんです。

 新しい資料が出てきたら、ひっくり返るかもしれないようなものなんです。


 だから、「本当はどうか?」よりも、自分独自の面白い世界というのを作ることの方が、絶対に大事だし、そのためには信じ切って読んだほうが絶対いいんです。


 まあ、「僕らが本当だと思ってることも、諸説ある中の1つにしか過ぎない」という客観性を持てるという意味では、資料を調べるというのもいいことなんですけど。

 でも僕は、他の漫画も色々読む中で、それらを信じ切って独自の歴史観を作っていくというのが、一番 良いと思います。

・・・

 というわけで、今日は、オタキング流読書術で読む『へうげもの』です。

 『へうげもの』を歴史的事実だと信じ切って語る。

 すると、当たり前ですけど、これまでの歴史観が覆ります。

 だって、真田幸村は大坂夏の陣で、レオナルド・ダ・ヴィンチの戦車を繰り出しているわけですからね(笑)。


 これについても、「そんな面白いことがあったにも関わらず、後に家康がその事実を隠しきってしまったから、僕らはこれまで知らなかったんだ」っていうふうに思ったほうが、絶対に面白いんですよ。

 その上、これを信じることで、「実は、当時のヨーロッパと日本というのは、わりと繋がってたんだな」っていう、持っていても構わない歴史観というのが育まれるわけです。


 だいたい、ここでそれまで持っていた歴史観が間違えようが歪もうが、いいじゃないですか。

 正直に言いましょうよ?

 僕らは、もともと、たいした歴史観なんて持ってないじゃないですか(笑)。


 別に、専門家でもないし、漫画とかドラマを見るのに必要十分程度の歴史観しか持ってないんだから。
 
 そんなもん、歪もうが間違えようが構わないと思うんですよね。

 なので、「信じ切っても別に損するわけでもないので、ガンガン信じちゃいましょうよ!」ということであります。


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