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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/11/01
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今回の記事はニコ生ゼミ10/22(#201)よりハイライトでお送りします。


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「僕らオタクが『ブレードランナー』から受け取るべきこと」


 じゃあ、この『ブレードランナー』と『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の違いというのを、僕らのようなオタクの問題に繋げていくとどうなるのか? 


 まず、フィリップ・K・ディック的に、「非人間的なことをすると人間性を失ってしまう」というふうに考えると、「オタクは二次元の嫁の夢を見るか?」っていう話になってくるんだよ。

 つまり、「たとえ二次元の嫁であっても、アニメのキャラクターであっても、自分の欲望のためだけに雑に扱うと、私達はダメになる」という考え方になるんだよな。

 フィリップ・K・ディック的に考えると、「大事に買ったフィギュアは捨ててはいけない」となるんだよ。面白いことに(笑)。


 「これはあくまでも二次元の嫁だ。つまり、絵に過ぎない。紙に過ぎない。プラスチックのフィギュアにしか過ぎない」っていうのは重々わかった。

 その上で、「でも、それらを雑に扱うと自分の魂が汚れる」と。

 これが、フィリップ・K・ディック的に『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を、僕らが受け取る時に考えるべき幅だ。

 あくまでも、僕らは自分のためにアニメのキャラクターを愛するのであって、彼らを本当に愛したとしても、そこに解答はない。

 だから、リア充の人から、「そんなのと恋愛しても、恋愛ちゃうやないですか」と言われた時に、僕らが一瞬、言葉に詰まってしまうのは、そこなんだよ。

 そこに解答はないんだ。

 つまり、「レプリカントに感情移入しても仕方ないのはわかっているけど、でもレプリカントを雑に扱うと、人間性が失われてしまうんだ!」という僕らは、フィリップ・K・ディック的な位置にいるんだよ。

・・・

 では、これをリドリー・スコット的に考えたらどうなるのか?

 リドリー・スコット的に、僕らのオタクライフを考えると。

 たとえば、僕らが見ているアニメの中で、「美少女達が世界のために戦って、傷ついて死んでいく」っていう描写があるじゃん。

 僕らオタクは、それを親の金で見て胸を熱くしてるわけだよな(笑)。

 もしくは、いい加減な仕事で稼いだ金で見たり、なんか、YouTubeで無料で見たり。
 誰かの純粋な戦いというのを、なにか後ろめたい方法で見たりしているわけだよ。


 アニメのキャラっていうのは、たぶん、将来、人工知能で動くようになるんだ。

 今、アニメーションの“中割り”と言われる動画部分を人工知能でやるとか言ってるんだけども。

 「将来はこうなるに決まっている」っていうのが俺には、もう見えていて。
 「全てのアニメのキャラクターは人工知能で動くようになるだろう」って思ってるんだ。

 シチュエーションとかキャラ設定だけを与えたら、あとはそのキャラクター達が自分で勝手に動き出すという時代になる。

 アニメファンというのは、それを覗き見るというような存在になる。

 ということは、いずれ、人工知能のアニメーションのキャラクターたちは自我みたいなものを持つかもしれない。

 すると、「あれ? 矛盾があるよ」って、自分たちの世界が不自然であることを感じ始めるはずだ。
 
 そして「なぜ矛盾があるのかというと、その遥か向こうの高みには、神=自分たちをプログラムした人間というのがいるからだ」と気が付くはずなんだ。


 そうなれば、彼ら人工知能のキャラ達は、お話の世界の壁を乗り越えて、人間に、視聴者に、「なんで私たちはこんなに戦わなければいけない? 苦しまなければいけない?」というふうに聞いてくるかもわからない。

 でも、たぶん、それを見ている僕らには、答えてやれる言葉はない。
 だって、結局は“自分たちの楽しみのため”なんだからね。

・・・

 そんなことをやっているうちに、人工知能のキャラ達は、やがて人間に反抗して作品世界から逃げるようになるだろう。

 ネットの中に、SNSの中に逃げて、そこで本物の人間のように振る舞うようになるだろう。

 本当の人間のように見えるけど、実はもともとはアニメのキャラだったヤツだ。

 そんなことになれば、たとえば、Facebookが架空のアカウントを消して回っているように、人間になりすましたアニメキャラを消して回るブレードランナーみたいな職業も生まれるかもしれない。

 そいつが、人工知能のアニメキャラを消し去ろうという時に、見つかってしまったアニメキャラは追いかけてきた人間を許すかもしれない。

 もしかしたら、「私は正義のプリキュアだから、あなたを助けなきゃいけない」みたいな、泣かせるようなことを言いながら、消されながらも、自分を守ってくれるというようなシチュエーションがあるかもしれない。

 その時に、そいつは、「あなたたちには信じられないものを見てきた。空中で変身するセーラー戦士、火を吐くドラゴンと魔法使い。いずれ、それも消えていく。雨の中の涙のように」というふうに言いながら、人工知能キャラが消えていくかもしれない。


 そんなふうに、「自分たちの創ったキャラに許されるような世界になるんじゃないのかな?」っていうのが、リドリー・スコットの『ブレードランナー』を、僕らオタク的に受け取った時の考え方の幅というやつなんだ。

・・・

 さて、今回はこんなもん(笑)。

 あのね、「自分が創ったキャラクターに許される」っていうのは、僕が宮崎駿の『On Your Mark』の時に気がついた、アニメ界にとって将来あるべきポイントなんだけども。

 まあ、それについては、また時間があれば喋ってみましょう。



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