『マンガ夜話』とは、13年ぐらい前までNHKで続いていたシリーズです。
大月隆寛さんという人が司会をやっていて、いしかわじゅん さんと、夏目房之介と僕とがレギュラーをやっていた。
そして、毎回ゲストが来て、漫画のことを語っていたんです。
こんな感じの配列になっていました。
○大月隆寛・進行。作者の思いを代弁。
○いしかわじゅん・どの方向で努力しているのか?
○岡田斗司夫・「わからない」担当。イレギュラーな切り口。
○夏目房之助・作品の位置づけ。特殊性。
○ゲスト・愛や思い入れ。
役割としては、大月さんが熱く語るんですけども、基本的に進行をしてくれる。
いしかわじゅん が、暴言を吐いたり断言をする。
具体的に言えば「コイツはマンガが下手だから」とか「コイツは絵が下手なんだけど」と、バーンと決め付けてくれる。
そして、夏目さんが分析的に語る。
「この作品は、漫画の歴史では、どこにポジショニングするのか?」という。
そして、僕がイレギュラー担当という事になっていた。
こういう番組を作る時に、いちばん危険なのが「スタッフの全員が、その漫画をわかっちゃう事」なんだよね。
“漫画”っていうのは、10万部売れたら大ヒットなんだ。
ところがNHKって、日本全国でオンエアされるから、視聴率がたとえ5%でも500万人が見てるわけなんだよ。
大ヒットでも5万部10万部の媒体と、低視聴率でも500万人が見ているメディアとか混ざっちゃうと、ついつい誤解が発生しちゃう。
出演者の全員がその漫画を読んでいるし、「この漫画は有名だから」と、みんなが知っている事を前提で話しちゃうんだ。
だけど、たとえば『ワンピース』でも、単行本が一巻 出るたびに100万人程度しか読んでないんだよ。
そしたら視聴率5%の低視聴率番組でも、5人に1人しか読んでない事になっちゃうんだよね。
なので、「大半の視聴者はその漫画を読んでいないし、おそらく一生、読まないだろう」という前提で番組を作らなきゃいけない。
ところが番組の中では全員が読んでるから、「みんなが読んでいる」事が前提でどんどん話しちゃう。
そうなるとマズいので、誰かが「よくわからない人」というのを担当しなきゃいけないんだよね。
毎回 呼ぶゲストは、その漫画が好きな人が来るから、当然その漫画を読んでいる。
「それじゃ、わからない人は俺がやろうか」という事で、自然に岡田斗司夫は「わからない」担当になった。
特にやらなきゃいけなかったのが、少女マンガの回なんだよね。
いしかわじゅんさん は、世代的に少女マンガがすごく好きだから、マンガ夜話の作品を選ぶ時に少女マンガが必ず多めに入るんだ。
マンガを4つ取り上げたら、1つか2つは少女マンガ。
そうすると僕はそのマンガを読んで、「これ、よく分からないんです」とか「何が面白いんですか?」とか「僕はちっとも面白くありませんでした」って言う担当になる。
ところが、それを言うだけだったら、単に芸人さんがチャチャを入れてる感じになっちゃうでしょ。
つまり、これは「少女マンガを読まない男性の視線」だったり、「読んで一生懸命に分かろうとしたんだけど、分からなかった男性」という、いい感じの線を狙わなきゃいけないんだ。
でないと、ただ単に「そんな意見もあるけど、このマンガは面白いよね」って進行しちゃう。
という事で、この番組を作る時は、キャラ配列のバランスがすごく難しかったんだ。
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