“ライトスタッフ”とは「正しい資質」という意味です。
それは、トム・ウルフが宇宙飛行士たちを取材した時には、出て来なかった言葉なんです。
では、なぜこの言葉が本のタイトルになったのか?
なぜ、それがベストセラーになったのか?
それはアメリカ人が、誰も この言葉を知らなかったからなんですね。
宇宙飛行士やテストパイロットに、ずーっと話を聞いてるんだけど、誰も“ライトスタッフ”の事を言わないんですよ。
誰かが間違えてポロッと言っちゃうとか、そういうことはあるんです。
だけど、徹底的に隠された言葉だったんですよ。
あえて言うなら、「勇気」とか「死を恐れない心」とか。
あと「生き残ることの正しさ」「どうやって生き残るのかを考えること」なんです。
そういう事があった場合、「あいつにはライトスタッフがある」とか、「俺にはライトスタッフあるから」みたいなことを考えるんです。
だけど、絶対に口にしないんですね。
映画は、そこら辺の説明がすごく上手だった。
誰も「ライトスタッフ」なんて言葉を口にしないんですよ。
その映画の中で、宇宙飛行士になるテストパイロットにインタビューを続けているおっさん二人がこんなお喋りをしてた。
「あいつらにはライトスタッフがある」
「なんだそれ?」
「いや、あいつらに聞いても何も言わないんだけど、勇気とかそういうものかな?」
って。
死と隣合わせに生きているテストパイロットたちは、絶対にその言葉を口にしないんです。
でも、その映画のクライマックスで、ゴードン・クーパーが、「最高のパイロットとは何ですか?」って新聞記者に聞かれた時。
いつもの軽い調子で、「俺だよ、俺! 俺を見ろよ!」って言おうとしてた。
だけど、その瞬間にスイッチが入って、本気で語っちゃうシーンがあるんです。
テストパイロットの仕事とは、「飛行機がキチンと飛ぶのか」をテストする事では、ないんです。
「飛行機は、どこまでだったら壊れないのか? 」
「どこまでだったら、パイロットは死なないのか?」
それを、毎日毎日、ギリギリまで。
それこそ1mm単位で縮めるのがテストパイロットなんです。
そんな人間が、“最高のパイロット”について新聞記者に聞かれたんです。
その時に、「それは、ライトスタッフがあるかどうかなんだ」と言いかけて、「ライ……」まで言ったところで、パッと我に返った。
そして、いつもみたいに軽口を飛ばすっていう。
そんなシーンがあるんですよ。
それが、テストパイロット。
生存率75%の仕事と言われています。
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