おはよう! 岡田斗司夫です。
思い切って、はしょろう。
オープニングアニメは、空前の熱狂と大歓声に迎えられ、他の企画も大好評だった。
SF大会の〆めは打ち上げパーティーだ。
スタッフたちは二日間、企画も見れずあこがれの作家に声もかけられず、ひたすら働いた。
その労をねぎらい、同時にゲスト作家の先生たちへのお礼の場でもある。
赤字がまた増えると考えるとのどが詰まりそうになるので、考えないようにしながら。
彼らこそ、かつて僕たちからSF大会を取り上げた東京の「有名SFファン」だ。
「一流ファングループでない君たちにしては、よくやったじゃん」
怒りで首筋まで熱くなるのを押さえた。
「SF作家のみなさんも、百名以上参加してくださるし」
僕たちの大会は、ゲスト作家は十数名だった。
SF作家の大半は東京に住んでいる。
わざわざ一泊二日で大阪に来てもらうのは大変なのだ。
東京だと時間もお金もかからない。
そりゃ大勢、来てくれるだろう。
別に彼らがすごいからではない。
でも、参加者にはそんなこと関係ない。
参加するファンたちの目的は、第一に自分が好きな作家と会って話すことだ。
自分の好きな作家が来るかどうかが参加の基準になる。
これをあっさり抜かれてしまうのだろうか。
僕たちの悔しさに流した涙、それを跳ね返すための踏ん張り、そのすべては、彼らの言うとおり来年の東京SF大会の踏み台にされてしまう。
そうだろう。
学生の集まりにしかすぎない僕たちは、最後まで舞台の取り回しに苦労した。
プロの照明マンはけっして素人の演出プランどおりにやってくれない。
そんな苦労も、コネや人脈の多い彼らには関係ないのだろう。
毎年のSF大会のように、参加者の自主性まかせなら良いコスプレが集まるかわからない。
だからスタッフみんなで手の込んだ衣装を作った。
一般参加者には、すごいものができるように、何度も手紙でアドバイスをした。
僕自身、四国や岡山まで行って、励ましたりコツを伝授したりした。
近くで見ると張りぼてだ。
『マトモ』じゃないだろう。
でも、舞台ではホンモノそっくりに見えたじゃないか!
彼は、生まれて初めてあんな大きな着ぐるみを、何度も失敗して何週間も徹夜して作り上げた。
大会当日の盛り上げのために、重くて暑いロボット衣装を着て、何時間も会場を歩いてくれたんだ。
どれほど努力したか、ではない。
どれだけ素晴らしいモノが提供できたか、がすべてだ。
僕たちの舞台が中途半端だったのも、コスプレがチャチだったのも事実だ。
そして来年の東京SF大会は、僕たちの成功をあっという間に乗り越えてしまうだろう、ということも事実だった。
え?
思わず耳を疑った。
「こっちのスタッフにプロダクション勤めてる奴、いくらでもいるしね。そこでオープニングアニメ作らせよう」
そりゃ毎週30分のアニメを作っているプロのスタジオなら、5分のアニメくらい、すぐできちゃうかもしれない。
それも来年には「記録」も「記憶」も塗り替えられ、過去のものになってしまうんだろうか。
言いたいだけ言って、次年度SF大会スタッフは去った。
大盛況のうちに終了して、ハッピーエンドとなるはずだった僕たちの青春物語。
エンドタイトルが出るはずだった打ち上げパーティーで、僕はひとり青ざめていた。
周囲には苦楽を共にした仲間たちが、何も知らずに乾杯を繰り返していた。
そんなもん、どうでもええ!
今月末、金がないんだ!!
───────────────────────────────────
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
番組内で取り扱う質問はコチラまで!
コメント
コメントを書く