イギリスSF作家のブライアン・オールディスが書いた、『地球の長い午後』という小説。
これが『風の谷のナウシカ』の元ネタの一つと言われています。
イギリスの出版は1961年です。
日本で紹介されたのは1967年ですから、宮崎さんが、まだ『太陽の王子ホルス』を作る前ですね。
『地球の長い午後』は、数億年未来の話です。
地球と月との位置関係で潮汐力(ちょうせきりょく)が関係し、地球の回転する自転の運動量は、ゆっくりと月の公転する速度に移し変えられてるんですね。
この辺の詳しい説明は、“角運動量保存の法則”でググッてみてください。
その結果、地球の自転は十万年につき2秒ずつ遅くなっています。
なので、超遠未来に地球の自転は停止しちゃってる。
その分、月は今よりも、ずーっと遠くへ行くわけですね。
その時代の話です。
人類は身長が30センチぐらいの生命になっちゃってます。
地球は巨大な植物が生えて、ほとんどの動物が死に絶えています。
ほぼ植物と昆虫だけの世界になっていますね。
この時代の植物は、地球の重力が軽くなってきているので、蔓をどんどん伸ばして、月にまで蔓が伸びているんです。
そして地球と月との間に、植物の蔓が繋がっちゃってる。
ここを体長2キロぐらいある“ツナワタリ”という巨大なクモが、月と地球を往復しています。
そんな、すごい世界を書いています。
そして、そんな地球には、細々と絶滅を待つ人類が出てきます。
主人公の男の子は、ほとんど滅びかけている人類で知能も無ありません。
しかし“アミガサダケ”というキノコに寄生されます。
このアミガサダケというキノコは、人に寄生する代わりに、人に知性を与えるんです。
なので主人公は、それまで出来なかった“考える”というスキルを手に入れます。
もう失われた技術なんですけど、“考える”事と“覚える”という事が出来るようになる。
そして、この世の中のあり方が、だんだんと分かってくる。
その代わり、自分の行動は、アミガサダケの「こうしたい」という意思に支配されている。
この両者が、徐々に共生していくんですよ。
イギリス人が書く小説というのは、かように すごく設定が複雑なんですよ。
この本が、ナウシカの元ネタの一つなんですね。
ブライアン・オールディスの『地球の長い午後』は、ハヤカワ文庫からも、オールタイムSFのベスト100か何かに入っていて、いまだに刊行されています。
もし よろしければ、読んでみてください。
ナウシカという作品は、いろんな先人達の、いろんなイメージが、うまく重なっているんです。
それを掘り下げてみるのも、面白いと思います。
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