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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/08/19
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おはよう! 岡田斗司夫です。
今日は週刊アスキー『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』の記事から、セレクトしてお届けします。

最初からの一気読みはこちらです→http://goo.gl/L10s6c

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◆岡田斗司夫の最終ビジネス(3)
 
 「SF大会、名古屋で決まったよ」
 
 東京の大物SFファンはそう言い放った。
 「困るなぁ。SF業界の慣例を知らない者にひっかき廻されちゃあ」

 大会の開催地はSFファングループ連合会議という組織で討議され、開催地を選定するという。
 そんな情報どこにも書いてなかったけど、それぐらいは”伝統あるサークルに属していれば”知っていて当然の常識だそうだ。

 「もう会場まで押さえたの?困った人たちだなぁ。とりあえず小さいイベントでもやりなさい。それが成功したら考えてもいいよ」
 肩を落として大阪へ帰った僕たちを待っていたのは、SF研OBたちの猛烈なお説教だった。
 後輩のしつけもできないのか、と東京ファンから散々、イヤミを言われたらしい。

 この一連の屈辱や復讐心が僕たちに火をつけた。
 
 小さいイベントでもやってろ?
 ようし、やってやる!
 本家のSF大会よりおもしろいイベントにしてやる!

 翌月のSFマガジンに僕は謝罪告知を出し、同時に「大阪でSFショーを開催します!」と宣言した。
 開催日は名古屋SF大会の一週間前。戦いのゴングは鳴った。
 ・・・と書くと格好いいが、現実は厳しかった。

 まず参加者が集まらない。
 ひと夏に二回のSFイベントは多すぎる。
 しかも名古屋SF大会の一週間前だ。
 
 内容もアピールに乏しかった。
 SF大会は公認イベントだから安心感もある。
 有名なSF作家も大勢参加する。
 どちらか一方に参加するなら、誰もがSF大会にするだろう。

 それにしても、七百名収容の会場で参加者たった百四十名は予想外だった。
 舞台から見下ろすと、ほとんどが空席。本当にガラガラという印象だ。
 
 負け惜しみを言わせてもらうと、内容的には健闘したと思う。
 参加者からの評判も上々だった。
 
 名古屋SF大会が例年と変わらぬマンネリプログラムで不評だった分、業界内で僕たちの地位は上がった。

 しかし、それ以上に僕たちには膨大な赤字が残された。
 
 八十万円。
  学生にとっては笑い事ですまない金額だ。

 僕は親に頭を下げ、借金を申し込んだ。
 返済方法は実行委員会メンバーで話し合い、一人十万円と決めた。

 とはいえ、みんなにとってSFファン活動は単なる趣味だ。
 十万円なんて大金、払いたくないに決まっている。

 現実問題として、返さなくても誰も困らないのだ。
 僕以外は。

 結果、実際に返してくれたのは二人だけ。
 残りはすべて言い出しっぺの僕が丸1年、ガードマンのバイトで支払った。

 そして一年後、復讐の時は来た。
 
 大赤字のSFショーはひとつだけ遺産を残してくれた。
 「あいつら、やるじゃないか」という業界での評価だ。
 
 僕たちは来年度の日本SF大会の開催権を勝ち取り、「81年は大阪SF大会 DAICON IIIで」とぶちあげた。

 二年前、あれほど苦労した参加者を集めるのも「SF大会」という公式イベントだと、あっけないほど簡単だ。

 定員千二百人はあっという間に埋まり、来る日も来る日も、我が家の郵便ポストには定額小為替が束になって届いた。
 参加費六千円×千二百人=七百二十万円。

 これだけの予算があれば、なんでもできる!
 浮かれきってる僕たちに、なんとも甘美な提案が持ち上がった。

 「せっかくだから、SF大会のオープニングアニメを作ろうよ」
 天国と地獄が、同時にはじまった。


以上、『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』よりお届けしました。



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