━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/06/12
───────────────────────────────────

おはよう! 岡田斗司夫です。

昨日のメルマガで朝日新聞『悩みのるつぼ』の相談文をお届けしました。
今日は、いよいよ回答文もお届けします

───────────────────────────────────


相談 「今の気持ちと未来の気持ち」

 21歳の女性です。

 就活中ですが、家族との時間を大切にしたい気持ちと家から離れたい気持ちとの間で揺れています。

 海外留学中、「いつでも帰ってきていいよ」と励まし、支えてくれた両親が大好きなので、なるべく一緒の時間を過ごしたいと思い、日本で就活をしています。
 家から通えるところがいい、という両親の気持ちは大切にしたいと思っています。
 万が一何かが起きたときにすぐ駆けつけることができるので、家の近くで仕事をしたいと考えながら企業を選んでいます。

 同時に、留学先で家族と離れて住むことに慣れてしまった自分が居ます。
 行き先を告げずに出かけ、好きなものを食べ、好きなものを買い、好きなときに寝て好きなときに起きる、という自由気ままな生活も捨てがたいと思ってしまうのです。
 そのため、この企業いいかも、と言うたびに「家から通えないけどいいの?」と返されることが辛いと感じるようになりました。

 留学で家族と離れていた時間が長かったからこそ、今後は一緒に時間を過ごし、育ててくれたお礼をしたい。
 将来「もっと一緒にいればよかった」と後悔したくない。でも、どこかで「私の人生なのに」と思ってしまう。
 心の片隅にある「何処か違う場所で生きたい」と思う気持ちが無視できません。

 今の私の気持ちと未来の私の気持ち、どっちを重視すればいいのでしょうか。

───────────────────────────────────



【岡田斗司夫の回答】


 あなたの「今の気持ち」は、親を大事にして、ずっと一緒に暮らしたい。
 でも未来のいつか、きっと「ひとりで暮らしたかった」と後悔するに違いない。

 たぶん、親にもあなたと同じく「今の気持ち」と「未来の気持ち」があると思うんですよ。
 親の「今の気持ち」は、可愛い娘をひとり立ちさせたくない。
 心配だし近くに置いておきたい。

 でも、もしこのまま暮らしていたら、親の未来の気持ちは「娘がずっと家から出ないのが心配」になります。

 では、もっと未来はどうなっているでしょうか?
 親と同居して、それを一五年ぐらい続けていたら?

 「もっと未来のあなたの気持ち」を勝手に私が想像すると、「いまさら家を出たくないなぁ」です。
 一人暮らしせずにずーっと親にご飯や洗濯・掃除の面倒をみてもらって、あまりに楽で家を出られない。
 じゃあ「もっと未来の親の気持ち」はどうなっているでしょうか?
 たぶん「しまった。三五を越えて娘は家から出て行ってくれない。いったいどこで間違えたんだろう?」だと思います。

 あなたと親、それぞれの「今の気持ち」と「未来の気持ち」と「ずっと未来の気持ち」
 お互い、いっしょに暮らしたいという「今の気持ち」だけは一致しています。
 でも近い将来や遠い未来のどこかで、それはすれ違い、ズレを生じるでしょう。

 どこかであなたはきっと後悔し、どこかで親はたぶん後悔する。
 なので、タイミングだけの問題だと思います。
 たぶんあと七年以内。
 
 二八才を越すと、そろそろあなたは家を出るのが面倒になる。
 同じ頃、いよいよ親はあなたが家を出ないことが不安になりはじめます。
 
 そうなる前、互いの気持ちがズレはじめる前に独立する。
 今のうちは、そう決心するだけでいいと思います。

 いますぐ決めなくていいんです。
 「いずれ出て行って、私は自由になる。だからそれまでは、いっしょに暮らすのが親孝行」「未来の私は、別々に暮らして親に心配かけないのが親孝行」
 
 とりあえず今はそれだけ意識すれば大丈夫。

 就活先ですか?
 あなたの好きに決めていいと思いますよ。
 親に聞かれたら「寂しいけど、大丈夫」って強がるのが、これからの親孝行です。