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新日本プロレスのメインレフェリーとして活躍し、現在はフリーで活躍する田山正雄レフェリー。新日本時代は橋本真也軍団の一員として破壊王の爆走ぶりを至近距離から目撃。みんな愛した橋本真也の生き様をたっぷりとお届けします! イラストレーター・アカツキ@buchosenさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付きで!



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「江口寿史の正直日記/江口寿史」
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――田山レフェリーと縁の深い安田(忠夫)さんが日本に帰ってきてるらしいですね。タイで「安田忠夫と飲めるカラオケ店」の店長をやっていたらしいですけど(笑)。

田山 帰ってきてるね。

――今度後楽園ホールで開催される橋本真也の追悼興行に合わせての帰国なんですかね(このインタビューは7月9日に収録)。

田山 いや、そういうわけじゃないと思うんだけど。安田さんが橋本さんの興行に来るという噂はあるんだよね。

――あ、そんな噂があるんですね(笑)。

田山 ボクもいまは安田さんとは疎遠になってるから、ちょっとわからないんだけど。安田さんの引退興行のときも「レフェリー頼むよ」とお願いされて、その日を空けておいたんですよ。でも、大会数日前になっても全然連絡がないから「当日はどうすればいいんですか?」って電話したら「ああ、興行の仕切りをゼロワンに頼んだらよ、レフェリーもついてきたから、いらねえ」って。そんないい加減な話はないでしょ?

――ハハハハハハ! 安田さんらしいですね(笑)。

田山 そんな話ばっかりだよ(苦笑)。

――安田さんが練炭自殺未遂騒動を起こしたときの第一発見者は田山さんなんですよね?

田山 そうそう。自殺事件を起こしたときに助けたのはボクなんだけど。安田さんからメールが来たんですよね。「いままでお世話になりました」って。

――ああ、自殺を示唆するメールが……。以前からそういう兆候はあったんですか?

田山 飛び降り自殺をするためにビルの屋上まで行ったけど、諦めた……という話はしてました。メールが来たとき、ボクはちょうど外に出ていたんで、帰り道に安田さんのアパートに寄ってみたんですよ。田園調布南と聞こえはいいんだけど、べつに高級住宅地でもなんでもない場所に住んでいて(笑)。

――地名の響きだけはいいんですね(笑)。

田山 安田さんのアパート、いつも鍵がかかってないんですよ。ドアを開けたら部屋の中が煙で充満してて、部屋の中には七輪が二つ置いてあって燃えてるんですよ。「これはヤバイ!」と思って窓を開けたんです。

――田山さんが駆けつけなかったら、死んでいた可能性も……。

田山 まあでも、ちゃんと練炭自殺するなら目張りしないとダメみたいですよ。煙が漏れちゃう。安田さんはそんな細かいことは考えてなかったでしょうけど、長時間やってたら、いくら煙が漏れるとしてもヤバかったんじゃないかな。

――未遂とはいえ報道されましたよね。

田山 そこはあえてネタにしようとしたんですよ。「エア焼肉をしようとした」とか、焼き肉するために七輪を買ったけど、お金がなくなって肉は買えなかったと(笑)。

――安田さんらしいところに着地して(笑)。しかし、安田さんは本当にギャンブルが好きですよね。

田山 奥さんがギャンブル癖に耐えられなくなって「ギャンブルと私たち家族をどっちを取るの?」って訴えたらしいんですよね。そうしたら安田さん、「バカ野郎!おまえらに決まってるんだろ!」と。

――さすがに家族が大事だ、と。

田山 奥さんは泣きながら「本当に?信じていいの?」と言ったら、安田さんは「賭けたっていいぞ!」って立ち上がったみたいで(笑)。

――そこで賭けちゃマズイですよ!(笑)。

田山 メチャクチャですよ(笑)。あるとき安田さんから携帯に電話があって「家の目の前のコンビニにいる。金を貸してくれよ」って。家の窓からコンビニを見ると、たしかに安田さんがいるんですよ。

――各方面にお金を借りまくっていたみたいですね(笑)。安田さんはギャンブルならなんでも好きなんですか?

田山 聞くところによれば、公営から違法までなんでも。昔ポーカー屋が流行ったじゃないですか。ある人が安田さんに一度連れて行ってもらったそうなんですけど、ポーカー屋の店内の壁に「安田忠夫様 ビッグおめでとうございます」という張り紙だらけだったみたいで(笑)。

――有名人なのにマズイですよ!(笑)。

田山 噂ですけど、四谷にカジノがあったときも安田さんが入り浸って借金して。向こうだって違法だからそんなに強くは取り立てはできないでしょ。最終的には焦げ付かしちゃったみたいで。

――やっぱりプロレス会場にも取り立てはあったんですか?

田山 ボクが知ってるのは、安田さんが新日本入門した頃、◯◯関が道場まで取り立てに来た(笑)。

――ウワハハハハハハハ! ◯◯がわざわざ新日本道場まで!(笑)。

田山 「あれは◯◯じゃない?」って道場も騒ぎになっちゃって。安田さん、電車賃がなくなるまでギャンブルをやりますからね。

――破滅型ギャンブラーですよね。

田山 生活は不規則になって眠れないから睡眠薬をバンバン飲むんですよ。フリスクと一緒。

――それじゃあ精神も落ち着かないですよね。安田さんの話はそれくらいにして、田山さんが新日本プロレスのレフェリーになったきっかけをうかがいたいんですけど。

田山 それは雑誌にレフェリー募集の広告が載ってたんですよ。それでレフェリー試験を受けて。

――レフェリー試験ってどんな内容なんですか?

田山 ミスター高橋さんが試験官で主に体力テスト。腕立て、スクワット、縄跳び。ボクはもともとレスリング出身で体力はあったから、テストを受けた人間の中ではズバ抜けていたんです。

――テストを受けた人間は何人もいたんですか?

田山 10人はいたかなあ。受かったのはボクだけでした。レフェリーはそんなにいらないし。

――レフェリー見習いはどんな生活なんですか?

田山 最初の1年は寮に住んでいましたよ。

――新弟子と同じ生活なんですね。

田山 大変ですよ。トレーニングに至っては新弟子と同じメニューですから。ボクは新弟子テストを受けて入ったわけじゃないのに(笑)。スクワット何千回とか、時には新弟子とスパーリングをやったりとか。

――レフェリー見習いなのに(笑)。レスラーの同期は誰になるんですか?

田山 高岩竜一選手、大谷晋二郎選手ですね。寮長は小原(道由)さんだったかな。

――当時は道場の鬼軍曹として健介さんが相当厳しかったんですよね。

田山 それは有名な話じゃないですか。

――高岩さんが言うには「扉をバーンと開けて、胸を突き出して、周囲を睨みつけながら道場に入ってきた」そうですけど(笑)。

田山 あの頃は三銃士がプッシュされてたんですけど、佐々木選手は足を怪我をしたりして焦ってたんですかね。そのフラストレーションがあったんだと思いますよ。怒る理由が「関西弁だから気に入らない」とかだったりしますからね(笑)。

――健介さんも西の人なのに(笑)。馳さんもコーチだったんですよね。

田山 馳さんの練習も厳しかったけど、学校の先生タイプだったから。実際に学校の先生だったんだけど。「スクワット1000回!」と言ったら自分も1000回やる。だから厳しくてもちゃんとリスペクトできるし、ちゃんと叱ってくれるし。ただ怒るんじゃなくて、何がダメか叱ってくれるんです。それこそ昔は「水も飲むな!」っていう世界だったんじゃないですか。馳さんはそんな理不尽なことは言わないし。

――レフェリーの練習はどんな内容なんですか?

田山 ないですよ。

――えっ、ないんですか(笑)。

田山 本番が練習。うまくできないと本番で恥をかくからそれで覚えるみたいな。

――当時の新日本にはミスター高橋さん、タイガー服部さん、柴田勝久さんの3人のレフェリーがいましたよね。とくに指導されなかったんですか?

田山 3人とは年齢がだいぶ違うじゃないですか。あとボクはけっこう珍しいケースというか、それまでのレフェリーって現役を引退した選手がやったりとか、リング屋さんをやりながらなんですよ。

――そういえば、ストレートにレフェリーコースは珍しいですね。

田山 だから先輩の方々に言われましたもん。「俺、おまえの歳だったら絶対にレフェリーなんてやってないよ」って(笑)。でも、あの頃は景気がよかったから、レフェリーだけでやっていけたんですよね。いまは時代が違うから兼業が多いですけど。昔は他人の仕事をやると怒られたもんですよ。空港に外国人選手を迎えに行く仕事の人がいるのに、迎えに行ったりすると怒られて。

――レフェリーってリング外の仕事も多いですよね。

田山 当時はレフェリーを雑用係くらいしか思ってない人がたくさんいたから。日本人側は新弟子がいろいろとやるじゃないですか。外国人側は面倒を見れるのはレフェリーしかいないんですよ。だからみんなボクに仕事が降り掛かってくる。一番イヤだったのはベイダーかなあ。近寄ったら無意味に小突かれたり。

――それはコミュニケーション行為ではなく? 

田山 違う。ただ性格が悪い。そういうことをやってくるのはベイダーだけ。スコット・ノートン、ホーク、スタイナー・ブラザーズとは仲が良かったですけどね。あの時代のプロレスを見てファンになったから、ホークなんて大スターですよ。アメリカまでスタイナーやホークの家まで遊びに行ったりね。

――外国人の面倒を見るってけっこう大変ですよね。

田山 ホークはしょっちゅうケンカしてた。夜の六本木でケンカしてナイフかなんかで顔を切られたときもあったし。でも、ボクはホークのことが好きだったから苦労だと思わなかった。

――90年代の新日本って高橋さんがメインレフェリーでしたけど、途中から服部さんに変わりましたよね。

田山 そこは長州さんの好き嫌いというか、さじ加減。表向きは高橋さんを立てながらだけど。服部さんのほうが長州さんがものを言いやすかったんじゃないですかね。

――服部さんは長州ラインでしたね。田山さんは長州さんとの関係はどうだったんですか?

田山 ボクは橋本さんにかわいがられていたから。

――ああ、橋本さんと長州さんの仲はよろしくなかったですね。

田山 いまは長州さんによくしてもらってますけどね。だって長州さん、かなり変わったじゃないですか。バラエティ番組にもバンバン出てて。昔だったら考えられないですよ。

――橋本さんはどうして長州さんとソリが合わなかったんですか?

田山 うーん、両方とも似ているところがあったからじゃないかなあ。

――橋本さんも我が道を行くタイプですもんね。

田山 橋本さんは自由奔放というか。橋本さんの家で数カ月に1回くらいのペースでパーティーがあるんですよ。それが終了時間がとくに決まってないんですよね。

――終わらない宴ですか(笑)。

田山 昼ごろになると橋本さんから電話がかかってきて「今日はどうや?」と。それで橋本さんの家に行くんですけど、スーパーでパーティーの材料を“マイケル・ジャクソン買い”ですよ。

――“マイケル・ジャクソン買い”(笑)。

田山 ヒレ肉、ロースを買うときは「一番高いの!」ってショーケースにあるものを買い占めて(笑)。

――ハハハハハハ!

田山 で、パーティーがダラダラと始まるんですけど、時間がとにかく長いから参加する人も入れ替わり立ち代りなんですよ。横浜ベイスターズの三浦大輔さんが来たりとかね。

――橋本家の玄関先で三浦さんの子供が頭から落ちたんですよね(笑)。

田山 そうそう。三浦さんが来たときに、橋本さんが子供が入ったカゴを受け取ったんだけど、紐が緩んでいて玄関に子供がゴロンと転がってね(笑)。

――しかし、そんなに長い時間パーティーって何をするんですか?

田山 飲んで食って話をして、橋本さんの大好きな時代劇やウルトラマンのビデオを延々と見るんですよ(笑)。

――ハハハハハハ! 最後まで付き合うんですか?

田山 ボクは終わるまで帰れなかったね。橋本さんが気を失わないとパーティーは終わらないので(笑)。

――“破壊王失神”が終了の合図(笑)。

田山 橋本さん、寂しがり屋なんですよね。

――新日本の巡業のときも、夜は橋本さんの部屋に集まって朝までコースなんですよね。

田山 橋本さんの部屋に集合して、まずは外に飯を食いに行って、帰りにコンビニに寄るんですけど。橋本さんが「好きなものを買え!」ってそこでも“マイケル・ジャクソン買い”。常識的には翌日の朝食までは買っていいという暗黙の了解はあったんです。でも、そのうちみんなエスカレートしてね、エロ本や整髪料とか買いだしちゃって(笑)。

――これくらいはバレないだろう、と(笑)。

田山 一説によるとね、電話代を払った奴がいたとかね(笑)。

――ハハハハハハハハ!

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