1月4日の日曜日、シンガポールで行なわれた『UFC Fight Night』には4人もの日本人選手が出場し、さらにその4人全員がUFC初参戦だった。その中にPRIDE、DREAMと日本のメジャー団体を主戦場とし、何度もUFC参戦を噂されながら日本にこだわり戦い続けていた川尻達也が初登場することで、2014年早々に日本のMMA界要注目の大会となった。
川尻選手はPRIDEに上がる前は修斗で戦っていたが、その頃はUFCやPRIDEなどには70キロ前後の階級がなく、必然的にその付近のウェイトの強豪選手は世界中から修斗に集まっていた。そして2004年12月に、当時寝技最強と言われていたヴィトー・シャオリン・ヒベイロをTKOで降して修斗の世界王者になってから、世界のトップファイターの一人として名を連ねて来た。
UFCの規模がどんどんと大きくなり、世界中の強豪選手と契約を交わし、世界一はUFCの王者だと認められる中、川尻選手は日本のメジャー団体で戦いながらも世界一を噂される数少ないファイターで、そのまま9年もの長きにわたり世界のトップに名を連ね続けていた。その川尻選手が満を持してUFCに参戦するのだから、MMAファンや日本のMMAの選手、関係者の多くが注目するのは当たり前と言えば当たり前だが……。
試合の方は1年ぶりの試合ということもあり、1Rの序盤は打撃の距離があまり合わないためか、相手との距離が遠く、タックルを切られていたが、一度テイクダウンをしてからはさすがの安定感。2R50秒にチョークスリーパーで一本勝ちした。そして、試合後のマイクでは、いままでの日本人選手では考えられないような「トップ選手との対戦要求」をする等、ほかのメジャー団体でトップを張っていたというプライドを見せた。
自分が思う川尻選手の強さというのは、身体や技術はもちろんだが、特筆すべきところは精神的な強さだと思う。自分は、彼が心酔する山田トレーナー率いるチーム黒船で、5年近く一緒に練習をしていたのだが、黒船の練習は本当にきつく、並みいるトップ選手が練習に参加しては脱落を繰り返す中、いつも最高強度の練習をやり続け、練習はほとんど休むことなく、本当に逃げない人だという印象を持っていた。
そして彼のその精神的な強さを一番感じるのは、昔からいろいろな物を背負おうとするところだ。彼が最初にPRIDEに上がったときも、当時彼が王者だった修斗を背負い、「修斗の代表として」という発言が多かった。そして、DREAMになれば「PRIDE武士道」を、K−1にあがれば「MMA」を、そして今回のUFCでは「日本のMMA」をと。こういったプライドを背負うプレッシャーというのは結構なもので、自分も昔はそういう団体や自分の所属ジムを背負って戦う姿に憧れてやろうとしたことはあった。
しかし、公の場でそのような発言をして負けたら……と、考えるとそのプレッシャーに負けそうになる。だから、公で発言するようなときは、どの試合もまったく個人的なものだと発言したり、その他の発言でも、どれだけ試合までに自分の試合へのプレッシャーを少なくして望むかばかり考えていた。しかし、彼の場合は、よりプレッシャーのきつくなる方に発言をしていく。
そういった発言をしたほうが注目を集めることはわかっていても多くの選手がそれがプレッシャーになり、重荷を背負いながら戦うことの難しさを感じている。それなので避けるほうを選ぶだろうと思うが、川尻選手は違うのだ。あえて背負う。精神的な強さは半端じゃない、だから背負えるのだ。
いままでのUFCにあがっていた日本人選手とは違うメディアやファンを意識しながら、行動ができる川尻選手が成績を残す事が出来れば、また日本でMMAが新たな注目を受ける事に期待が持てるので今後も、彼の試合だけではなくTwitterやFacebook等、様々な場での彼の発言には、これからも目が離せない。それでは!(大沢ケンジ @kenjiosawa)
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