米MMAメディアにはときおり、めっきり名前を聞かなくなったかつての名選手の最近の動静を追う記事が掲載される。引退後の生活ぶりにはしばしば、ヒリヒリとした新鮮さと現実感がある。今回は、日本のプロレスでの活躍も記憶に残るブライアン・ジョンストン、UFC人気に火が付き始めた頃に「スポーツ・イラストレイティッド」誌の表紙を飾り、スター候補生ナンバーワンだったロジャー・フエルタの最近を紹介してみたい。

【ブライアン・ジョンストン編】

ブライアン・ジョンストンのMMAファイターとしてのキャリアは、1997年7月、UFC14でのダン・ボビッシュ戦でのTKO負けをもって終わった。生涯戦績は5勝5敗、うちUFCでは2勝4敗だった。現役生活はわずか1年と15日しか続かなかった。ジョンストンは現在、フェニックス郊外に在住している。

ジョンストンは2001年8月、日本で重い脳卒中を発症した。「この種類の脳卒中では9割の人が1年以内に死んでしまうらしい。残り1割の人も、自分ではほとんど何もできなくなるらしい。私のリハビリも、ほとんど何もできない状態からスタートした。発症後4か月間、私にできたことといえば、腕を少し動かすことだけだった。いまでは何とか逆境に打ち勝ち、娘のためにと思って気持ちを強く持って過ごしている。ファイターだった頃に比べても、いまの自分は100倍も1000倍もタフになったよ」

脳卒中はジョンストンの人生を一変させた。感情の表れ方がデタラメになり、ほとんど毎日、訳もなく号泣した。自分一人では何もできず、身体のバランスは取れず、手足の動きがバラバラになった。表現を失なったことは重大だった。ほほえむことも笑うこともできず、肯定的な表情も否定的な表情も作れない。声のトーンに意味を持たせることもできなくなってしまった。

ジョンストンは車いすを拒み、歩けるようになるまで、つえを使い続けた。リハビリの負担は大きかった。なにせ咀嚼能力すら、学び直す必要があったのだ。