――RIZINファンは毛利道場といえば摩嶋一整選手のイメージが強いんですけど、代表の毛利さんの経歴がものすごいので、前からお話は聞きたかったんです!
毛利 たしかに25年やってきてますから、たくさん話すことはありますね。
――大仁田(厚)さんと電流爆破デスマッチもやってるわけですし、そういった活動が摩嶋選手にもつながってるのかなと。
毛利 ハハハハハ。たしかにそうかもしれないですね(笑)。
――地元・山口の修斗で宇野薫戦が決まったので、いろいろとお話を聞かせていただきます。まず山口を中心に活動するのは、なかなか難しいことですよね。

毛利 ボクが格闘技を始めたのは2000年代ぐらいですけど、あの頃は総合格闘技を習うところはどこにもなかったですからね。
――地方じゃなくても東京でも総合のジムはわずかでしたね。
毛利 ボクはもともとプロレスが好きだったんですけど、親父が柔道で坂口征二さんの後輩だったんですよ。
――あっ、そうだったんですか!
毛利 そういった縁もあって、親父は徳山でやっていたプロレスの大会を手伝ってて。だから昔は選手がよく家に遊びに来てたんです。それこそ初代タイガーマスクの佐山(聡)さんと一緒にタクシーに乗って幼稚園に行く写真がありますね(笑)。
――ハハハハハハハ! 佐山さんは山口出身ですし。
毛利 佐山さんと食事をご一緒させていただいたこともあります。息子の聖斗さんの会社がTORAOのスポンサーについていただいたんですよね。
――プロレスに近い環境で育ったから自分も将来はプロレスラーになりたいと?
毛利 いや、ボクは幼稚園や小学生の頃は女の子みたいで、ハッキリ喋ることもできなくて、気も弱くて運動もできない弱々しい子だったんですよ。でも、プロレスラーという強くて身体も大きい存在が身近にいたことで、心の中で憧れはあったけど、弱い自分が「プロレスラーになりたい」とは思ってなかったですね。
――でも、格闘技を始めたんですよね?
毛利 弱い子だったからスポーツも全然やってなくて。あれはいつだったかなあ。小学校のときにいじめっ子から、弱い者同士で手に給食袋を付けさせられて「ボクシングで戦ってみろ!」と。そこで全力でやったら勝ってしまったんですよね。そこで認められたことで調子に乗ったのか、「強いってなんかいいなあ」と。で、高校に進むときにプロレス好きということもあったので「プロレスラーになれるからレスリングで高校に入ってみないか?」って誘われたんですよ。
――プロレスをエサに(笑)。
毛利 そうなんですよね(笑)。しかもあの長州力さん出身高校のレスリング部なんですよ。桜ケ丘高校。
――じゃあ、かなりの名門だったりするんですね。
毛利 プロレスファンだったから長州さんの憧れは当然あったし、プロレスラーになれるかも……という感じでレスリング部に入ったんですよ。そうしたらテレビで見るプロレスとはまったく違う(苦笑)。
――アマレスといっても、アマチュアのプロレスじゃないんですよね(笑)。
毛利 練習もものすごく過酷で、すぐに抑え込まれてなんにもできないし、先輩もすごい怖いし。心も身体も弱いので、すぐやめたんです。それからスポーツに戻ることもなく、高校時代はバンドとかやって。高校卒業後は音楽の専門学校で東京に行ったのかな。地元に帰ってきて就職したんですけど、何をやっても中途半端でろくに続かなかったんですよね。それで24歳のときに「俺は何をやりたいのか」とふと思って。やっぱりプロレスは好きでずっと見ていたし、その頃はPRIDEも始まっていて。UWFも大好きだったし、プロレスラーが総合に立ち向かっていく姿に興奮してたんですよね。
――初期PRIDEはプロレスラーのMMA挑戦物語でしたね。
毛利 PRIDEを見て、やっぱり強くなることに憧れていたことがわかったんですよね。何も格闘技らしきものをやってなかった自分なんですけど、ホームセンターでブルーシートを買ってきて庭に敷いて、木を4本立ててホースで巻いてロープ代わりにして。自前で作ったリングで総合格闘技ルールで戦い出したんです(笑)。
――えっ、相手は誰なんですか?
毛利 当時は総合格闘技をやってる人はいないんで、素人の喧嘩自慢や空手家、柔道家、ボクサーを呼んだりして。
――異種格闘技戦を勝手にやってたんですか(笑)。
毛利 もちろんちゃんとした総合格闘技のルールを作って試合してましたね。
――それが毛利道場の始まりだったんですか?
毛利 あそこがボクの始まりなんですよね。最初は雨が降ってる中で試合してました(笑)。
・九州天下一武道会からHERO'Sに
・自主興行「ロックアップ」の出世魚ぶり
・プロレスは上井文彦さんの勧め
・電流爆破は中村祥之さんに
・地方のジムからプロを生み出すには……続きはこのあとへ
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