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RIZINフェザー級王座を見事に防衛した鈴木千裕11000字インタビューです!(聞き手/松下ミワ)


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――
鈴木選手初の著書『夢を叶える「稲妻メンタル」』ですけど、なんと発売前に重版が決まったそうですね!

千裕 決まったっすわー! 本当よかったっす!

――
発売前ということは予約が殺到しているということですから本当に凄いです!

千裕 テンション上がるっすよね、純粋に。

――売れるかどうかドキドキしているところもありました?

千裕 ありますよお。ボクひとりの作品じゃないんでね。本をつくってくれる人とか皆さんが関わってるんで、売れなかったらみんなが間違ってることになるじゃないですか。

――
間違いまでは言い切れないですけど(笑)。

千裕
 Amazonのスポーツ・アウトドアの売れ筋ランキングで一瞬だけ1位取ったので。ちょっと順位が落ちてるんですけど、テンション上がるっすね!


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夢を叶える「稲妻メンタル」



――
そう考えると、やっぱり試合に勝つって大事なことなんですね。

千裕
 勝ったからこそ道が開けますよね。だって、説得力ないですもん。負けたのに「本、買ってください」と言われても「買わねーよ」となるんで。

――
メンタルを説いてる本だから、そこはよけいに。

千裕
 でも絶対に勝つと思ってましたよ。アントニオ猪木も言いますよね。「出る前に負けること考えるバカいるかよ」って。チャリティーイベントをやった能登のみんなにも勝利を約束してたんで勝ててよかったです。

――その金原正徳戦はもの凄い試合でした。金原選手が組みついてきたときにテイクダウンされなかったことが勝敗を分けたという意見が多いようですが、そこは実際どうでした?

千裕
 当然、金原選手がやりたいことはボクを倒してグラウンドに持ち込むことなんで、ファーストコンタクトを防げるというのは勝敗を大きく左右したのかなとは思います。というか、組んできたことで確信に変わるんですよ。「やっぱり組んで倒したいんだな」って。

――金原選手が最初に組んでくれたことで、相手のやりたいことが早めに見えたんですね。

千裕
 フィジカルに関しても、組んだときに「いける」と思いましたしね。これだったら組み負けないと確信に変わりました。タックルにも反応できているし、組んでもパワー負けしない。これなら競り合えると思いましたね。

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――
あと鈴木選手の構えが低いのも印象的だったなって。

千裕
 ああ、それは目線の問題ですね。ボクは目線を基準に構えるんですけど、金原選手はボクよりも背が低いんで、その目線に合わせただけです。それに、金原さんも腰が低いんで、そこに合わせたら必然的にそうなっちゃったのかなって。

――タックルを警戒して姿勢を低くしたわけでもないんですか?

千裕
 いや、タックルを警戒して姿勢を低くすると、逆に反応が鈍くなるんですよ。低く構えている状態で顔に打撃をもらうと、その瞬間に身体がアップライトになっちゃうんで、相手はテイクダウンに入りやすいんですよね。だから、中間くらいの目線がベストなんです。

――
それで自然とあの姿勢になったと。序盤にローを連発していたことも作戦だったんですかね?

千裕
 作戦というよりは、向かい合ったときの相手のリアクションでローが蹴れるなと思ったんですよね。インローを蹴って反応がなかったんで「これ、カーフを蹴ってもたぶんカットできないな」と。組みにいきたい選手って前屈みになるんで、前足重心になるんですよ。だから、前足を上げられなくてカットできないんですよね。キックボクサーはうしろに重心が乗ってるんで、前足を蹴られてもカットできるんですけど。

――
なるほど。タックルにせよ、カーフにせよ、そうやって金原選手がやりたいこと、できないことを瞬時に探っていったわけですか。

千裕
 しかも、ボクはスピードが速いんで「これ、反応できないな」と思ってカーフ蹴ってたら、だんだん相手のリズムが乱れてきたんで。そこで、こっちの戦い方をつくっていこうかなと思いました。

――
そのリズムですが、鈴木選手の試合のペースがめちゃめちゃ速く感じたんですよ。

千裕
 ああ、それでいうと、もともと金原選手はどっしり構えてるタイプだから、リズムに関しては早くないですし、直立でゆっくりなんですよね。そうやってガードをちょっと下げてオープンスタンスで立ってるんで、逆にボクが速く見えたんですかね。

――
鈴木選手は1.5倍ぐらいのスピードで戦ってるように見えました。

千裕
 ボクは1ラウンドからフルスロットルでいくと言ってたじゃないですか。馬力全開でエンジンかけてるんで、動きも必然的に速くなりますよね。

――
フルスロットルというのはパワーもだけど、スピードもってことですね。

千裕
 セーブせずにどんどん前に出るということも含めてですよね。もうガス欠になってもいいと思ってたんで。

――
24歳の鈴木選手にいきなりフルスロットルでやられると、さすがに金原選手はついてこれてないという読みなんですね。

千裕
 それはもうわかってましたね。キャリア後半を迎えてる選手のエンジンと言えばいいんですかね。それは10代、20代のエンジンと違って、どうしても古びてくるんで。車のパーツみたいに替えられたらいいんですけど、替えれない。人間の場合はメンテナンスし続けるしかないんですけど、その部分では絶対に負けないし、そこで遅れを取ったらボクの負けですよ。

――
若さで勝負するというのはそういうことですか。

千裕
 やっぱりボクもいろんな先輩方を見てきてますし、人間はどうしても劣化してしまうんですよ。どんなにいい治療を受けても10代のパワーは戻らないんです。

――
そこからローでリズムを崩して、ボディから連打と。終始、鈴木選手のペースだったんでしょうか?

千裕
 やっぱりテイクダウンだけは怖かったですし、打ち合いでもストレートをもらってたんで、金原さんも金原さんなりのリズムは取れてたんだと思います。だから、そこはお互いに勝負はできていたってことですね。ただ、ボクのほうがあの日、一歩だけ上手だった。勝敗を分けたのはそこだけです。

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――
結果は宣言どおりの1ラウンドKOでした。ただ、事前の下馬評は金原選手有利の声も多かったですよね。

千裕
 そりゃそうっすよ。やっぱり、みんなそう見ますよ。でも、ボクは「未来は自分で変える」と言ったじゃないですか。周りを変えるのはボクだし、結局リング上で戦うのはボクなんで。だから「黙って見てろ」と思ってましたね。煽りVでも「全員うるせえんだよ」とあったじゃないですか。本当にそのとおりの気持ちです。

――
ちなみに、以前パトリシオ・ピットブル戦についてお話をうかがったときに鈴木選手は「打ち合わざるをえないように仕向けている」と言われてましたよね。まさに、今回の試合もそうだったんですかね。

千裕
 まあでも、総合格闘技って打撃からスタートするじゃないですか。「打ち合いに仕向ける」といっても、よーいドンが打ち合いなんで勝手にそうなるんですよ。よーいドンでタックルが取れたらいいですけど、いきなりタックルは怖いから打ち合いで相手を乱してテイクダウンにいくわけじゃないですか。単発でタックル取れるのはアマチュアまで、もしくはブッチギリで強いレスラーしかできないですよね。

――
ところで、今回はキックを含めて人生初の防衛戦ですし、震災地の能登を訪問されたりしていろんな方の思いを背負った試合だったと思うんですが、そういうプレッシャーの面はどうだったんですか?


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