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【プレイバック】新日本プロレス入門、野上彰だった頃/AKIRAインタビュー

2024/04/27 21:00 投稿

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★2021年1月にDropkickメルマガで掲載された記事を再録します

野上彰として新日本プロレスでデビューしたAKIRAインタビューシリーズ第1弾。入門、デビューするまでの狂った季節(聞き手/ジャン斉藤)


【1記事から購入できるバックナンバー】

・サイモン・ケリー「プロレスに関わることは倍賞美津子さんに大反対されました」




AKIRA あんまり面白い話はできないですよ?

――も、AKIRAさんって面白そうな場所にずっといたイメージはありますね。

AKIRA まあ、たしかに。周りはみんなおかしかったですからね。自分で自分のことおかしいと思ってたんですけど、周りが酷すぎて……(苦笑)。

――ハハハハハハハ! 自分がまともに感じちゃいますか。AKIRAさんは高校卒業後の1984年に新日本プロレスに入門しますよね。


AKIRA 入門する前、高校3年生の夏休みに新日本の道場を見に行ったんですよね。見学というか、なんだったら道場で座り込みしてテストは受けて「俺の力を見てくれ!」じゃないですけど。上野毛に新日本の道場があると本に書いてあったので、あの有名な新日本プロレスだから誰でも場所を知ってるだろうと思っていたら、駅周辺で話を聞いたら誰も知らなくて(笑)。

――駅から道場までけっこうありますしね(笑)。

AKIRA わかりやすい建物かなと思っていたら、全然そんなことはなくてですね。ちょっとウロっとしてたら、たまたま保険外交のお兄さんがいたんですよ。その人の声をかけたら「知ってるよ」と10分ぐらい一緒に歩いてくれて。着いたら汚いトタン屋根の建物で「うわ、これか!?」って。

――いまはリフォームされてますけど、以前は古い建物で。

AKIRA 午前10時ぐらいだったんですけど、合同練習の前で。翌日試合だったので選手たちが器具の搬入の手伝いをしているところで。練習が始まったら誰も外に出てこなくなって、外に座り込みじゃないですけど、昼の13時ごろまで待っていて。誰かに声をかけられてテストを受けてさせてくれるかもしれないと。そうしたらですね、永源(遥)さんに声をかけられて「アンちゃん、なにしに来たんだ?」と。「テストを受けもらえないですか」とお願いしたら「テストは事務所に履歴書を送って受けるもんだ」と。あたりまえの答えが返ってきたんですよね(笑)。

――普通ですね(笑)。

AKIRA 「やっぱりそうだったの?」って。アルバイトと同じ工程を踏まなきゃいけないんだなと。それで履歴書を事務所に送ったんですけどね。

――高校のときは何かスポーツはやられていたんですか?

AKIRA とくにやってなかったんですよ。当時はアマレスの部活があるのは県の中で限られたところぐらいだったし。柔道部はあったんですけど、ボクが通っていた高校は新設校で2年目だったんですよ。あんまりクラブ活動が全然盛んじゃなくて、なんか本当にゆる~い感じだったんですよね。そこでもやっときゃなんとか実力は上がったんでしょうけど。そんなに楽しくなくて、自宅で筋トレやったりとか、ちょっと空手道場を通ったこともあるんですけど、その程度だったんですよね。だからスポーツの実績がまったくなかったんですけど、入門テストは1回でパスできて。

――一発で受かるって凄いですね。

AKIRA テストまでに普通のスクワットは500回できるようにしていましたし。あとテレビを見ていたら「これがスクワットだ」ってジャンピングスクワットを紹介してて。それをスクワットだと勘違いしちゃって、ジャンピングスクワットを200回やってたんですよね。

――勘違いがいい方向に働いて(笑)。

AKIRA ボクらのひとつ前の世代でいえば佐野(巧真)さんだったりも、新日本プロレスに入る前はスクワット1000回とかやっていたという話で。カリキュラムがわからないから自分たちで考えてテストを受けるしかなかったんですよね。入門募集の告知が『月刊ゴング』に載っていて。そこに身長制限が書いてあって高卒は180センチ以上、大学卒業だと185センチ。自分は180センチなので高校卒業したらテストを受けなきゃダメだなってことで。その頃に佐山(聡)さんのスーパータイガージムもオープンしてるという記事が載っていて。「あ、こんなものがあるんだ」ってことで、声を震わせてジムに電話をかけたら、電話に出たのが佐山さんの声だった気がするんですよね……。

――新日本のテストは誰が試験官だったんですか?

AKIRA 山本小鉄さんだった記憶がありますね。集まった参加者は10人にも満たなかったですけど。

――参加者は他に誰がいたか覚えていますか?

AKIRA いや、もう覚えてないですね。誰も残らなかったです。ちょっと調子のいい男も受かったんですけど、入門して1週間ぐらいで消えちゃいました。自分も本当に受かるとは思ってなくて。テストが終わったときに小鉄さんが「こういったトレーニングは一生涯を通じてやるもんだから続けるんだぞ」と。ありがたい言葉だなあと思ってそのまま道場から帰ったんですけどね。3月に高校を卒業して、なるべく早く入ろうと思って。道場のしきたりとか先輩の関係もあるじゃないですか。あんまりウカウカしてられないと勝手に思い込んじゃって、早めに寮に入ったんですけど。

――先に誰か入門してました?

AKIRA 同期はいわゆる闘魂三銃士や船木(誠勝)選手なんですけど、彼らはすぐあとに入ってきたんですよね。

――道場生活はやっぱり過酷でした?

AKIRA 過酷というか、わけがわかんなかったですね。酷いですね、もう。頭のおかしい人が集まっちゃってましたね(笑)。

――ハハハハハハ! ライガーさんが仕切ってて、そこに船木(誠勝)さんと橋本(真也)さんも一緒に乗っかってくみたいな。

AKIRA あの頃がヤバイ。ライガーさんとくっついちゃうとね、止まらない。言葉は悪いですけど みんないわゆるアスペルガー症候群というか。

――な、なるほど(笑)。

AKIRA 本当ですよ(笑)。ボクもけっこう軽いアスペルガーなんですけど、ちょっとおかしいところがありまして、なかなかモンだったんすけど。歳を取るにつれて、20歳の頃にはそこそこのまともさにはなってたんですけど。それに輪をかけたヤバイ人たち、幼稚園レベルばっかの集まりなので(笑)。

――とんでもないところに放り込まれたわけですね(笑)。

AKIRA 覚悟はしてたんですよ。軽いイジメ的なもの、かわいがりはあるだろうと。でも、それも面白いだろうなと思ってたんですよね。

――面白体験じゃないですけど。

AKIRA 変な格好をして店に買い物に行かされたり。練習に関してはちゃんとできてたので、そんなにムチャは……。ふるいには、かけられていたのかもしれないですけどね。

――練習は相当ハードですよね。道場は蒸し風呂状態じゃないですか。

AKIRA 室内の温度が40°を超えていて、スクワットをすると汗で水溜りができるんですよ。話には聞いていたので「ああ、これのことか……」と。たしかに練習は厳しかったですけど、まっすぐ夢に向かっていたので、なんとかやっていけましたね。

――やめようと思わなかったですか?

AKIRA やめようとは思わなかったですね。ただ、ボクは何事も長く続かなかったんですよ。中学の頃は野球も一生懸命やったつもりでもちょっと続けなくて。一生続かない人間になるのはイヤだなあとは思ってて。プロレスはなんとかはやってやろうという気持ちしかなかったんですね。たぶん小鉄さんもそんなに続かないけど……という感じで入れたと思うんですよ。そのあと何人も入門して途中でやめちゃいましたからね。たくさん入れた中で誰かひとりでも残ればいいやという感じだったんじゃないですかね。

――やめる前提でたくさん新弟子を入れていたところはあるでしょうね。

AKIRA まだ若いし、食い扶持がなくなるわけでもないだろうし。将来に対して責任を持たなくてもいいだろう……っていう世の中でしたからね。

――ライガーさんの新弟子に対するイタズラは、結果的にふるいにかけるものになってしまって。

AKIRA というか、あれはもはや、イタズラじゃないですよね(笑)。生き死に関わりかねないものもあったりするから。

――その影響を受けた船木さんが藤原組やパンクラスでやっていたイタズラも、いまは表に出せなかったりしますからねぇ。

AKIRA あれはやっぱり縦社会の「イエッサー」の世界ですからね。凄いことをやるなって。イタズラの標的にあった子には慰めの声かけるぐらいしかできなかったですね。そういうときに面白がれて狙われるタイプの子っていうのもいたし、それでいうと自分はそんなに被害に遭わなかった気がしますね。どちらかというと、面白がってやられるタイプではあったんですけど。

――道場の生活はあまりにも厳しいから、新弟子時代の武藤さんが「みんなでやめよう!」と言い出すことがあったみたいですね。

AKIRA 武藤さんはね、しょっちゅう言ってました(笑)。

――ハハハハハハハハ!

AKIRA 小鉄さんに「やめます」ってよく言ってましたよ。小鉄さんは合同練習後、みんなが飯を食うのを見届けるんですが、寮の応接間でみんなを集めて昔話をすることがあるんですよね。そのときに武藤さんが「もうやめようと思うんですけど……」って。そうすると船木選手は「ま~た口車が始まった。絶対に残るのに」と(笑)。

――その武藤さんに口車に乗せられて実際にやめちゃう人もいるんですよね?

異常だった新日道場エピソードはまだまだ続く
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