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前代未聞の引退挨拶だった。2月24日、Krush後楽園ホール大会。第7代Krushスーパーフェザー級王者・島野浩太朗の引退セレモニーが行われたが、その挨拶の中で島野は自らの浮気を突然告白。島野の節目に駆けつけていた家族に謝罪したのだ。以下、その衝撃マイクの一部抜粋である。

「島野浩太朗です。Krush後楽園ホール、2011年にデビューさせていただき、もっと前から夢を感じてここで勝負したい、どうしてもここで生きていきたいと思って始まったリングでした。そのリングで13年間選手生活を過ごさせていただき、こうして引退セレモニーまでリングでやらせていただいたこと、本当に幸せ者だと思います。ありがとうございます。今日、私がリングに選手として立つのは最後の機会になると思いますので、私の中で特別な人に思いを伝える機会をいただければ、と思います。<省略>次に家族に思いを伝えさせてください。彼女はボクの妻です。これまで私が現役生活を過ごす中で、仕事生活、家事、育児、全部支えてくれました。自分の楽しいことは全部犠牲にして、私の夢を支えてくれました。でも最後の最後、ボクは人として、男として最低なことをしてしまいました。浮気、不倫はよくない。ボクは最低だと思います。あなたが苦労してきたこの期間、あなたの家族、支えてくれてた方々、みんなを裏切る行為だったかもしれません。本当にごめんなさい。すいません。そしてこの一件があり、オマエとは絶縁だと、そう言って今日も会場に来てもらえなかった、40年間家族のために遊びも一切せず、バカ息子を支えてくれたお父さん、私を支えてくれたお母さん、本当にごめんなさい<省略>今日、ボクがこの話をさせていただいたリングはKrushのリングです。古い自分ダメな自分はすべて壊して新しい自分に生まれ変わって。これからは世のため人のため、いや、まずは家族のため、しっかりと生きていける人間、1人の男になっていきたいと思いますので、どうぞ厳しいご指導、応援いただけましたら幸いです。長いあいだ本当にありがとうございました!!」

突然の告白にざわつく会場。このマイクの前に島野は、奥さんや2人の子供とともに何事もなくリング上で記念撮影に収まっていたのだから混乱はなおさらだ。その島野の奥さんは何一つ表情を変えずに聞き入っていたが、公の場でけじめを付けたにしては重すぎる。第2の人生を歩もうとする島野にあえて浮気を明るみにしたその真意を聞いた(聞き手/ジャン斉藤)


――島野さんのマイクは本当にびっくりしました! 引退セレモニーの最中に浮気を謝罪するなんて聞いたことがないので。

島野 ……あの場所で明かすことは正直、自分の中でも葛藤する部分がものすごく、ものすごくありました。一番はKrushのリングって誰でも上がれるリングじゃない。ボクをずっと支えてきてくれた菅原会長にもずっと言われていたことですけど、特別な場所だったし、これからもそうであってほしいし、いろんな偉大な先輩方が人生を削って作られてきた現場じゃないですか。そこで私個人の失態をマイクで言うってことは汚すことになる可能性もあるし、いままで作り上げてきた先輩たちの価値を傷つけることになったら「じゃあオマエはその責任を取れるのか?」って言われたときに、いまの自分の力では到底、及ばないから、すごく迷ったんですけど……もう言った以上は仕方ないというわけじゃないですけど、こうして引退セレモニーをやっていただいた以上は自分の責任だと思うので、認めてもらうとまでは言わないんですけど……。

――SNSの反響はご覧になってますか?

島野 見てないです。まだ受け止められる自分が用意できてなくて。周りからはいろいろと言われてます。「すごいことになっているよ」とか「ファンゼロだよ」とか。そりゃそうですよね、と思います。

――このマイクをすることをKrushプロデューサーの宮田(充)さんには事前に伝えていたんですか?

島野 いや、伝えてはいなかったですね。

――この直前、奥さんやお子さんとリング上で記念撮影されてました。このマイクをすることを伝えたとき奥さんはどういう反応だったんですか?

島野 ……伝えたときですか?

――奥さんの了承を得るわけですね。

島野 了承?……うーん、はっきりと「今日、これ言うよ」というわけではなかったですね。

――えっ、奥さんにも伝えてはいなかったんですか……。

島野 はい。

――奥さんの反応を見ると、ものすごく自然だったので、事前に確認していたと見てたんですが……奥さんは「もしかしたら言うんじゃないか」と察していたんですかね。

島野 その頭は絶対にあったと思います。

――セレモニー終了後、奥さんと会ったときにこの話題は出たんですか?

島野 一度もなかったですね。

――島野さんから話題にすることはなかったし、奥さんからも何も言われなかったと。

島野 ボクのほうからはちょっと出せなかったですね。

――とにかく事前合意がないままマイクしたわけですね。

島野 はい。

――それなのに告白したのは、島野さんからすれば、浮気のけじめをつけたいところがあったんですか?

島野 それもありますけど……そうなんですけど、その日を迎えるまでに妻のほうが納得してもらえる一番のかたちが、あのリングのマイクだったのではないかなと。

――ええと、それは……つまり、あのマイクがやるまでは、この問題の解決はされてなかった、ということなんですかね?

島野 そうですね。

――このマイクを持ってお許しというか……。

島野 うーん、もうお許しはないんじゃないですかね。

――なるほど……。

立ち上がり早々不穏な雰囲気が漂う島野浩太朗インタビュー。筆者としては「取材を受けるということは、いろいろあったとはいえ問題は解決したから」という前提で臨んだが……ぬかるみに足を取られて一歩も前に進めないような出だしとなった。家族関係の修復が果たされていないのに公の場でマイクをしたこと、そしてこの取材を受けることを「いいか、悪いか」でいえば、断然後者の反応を示す方が多いことだろう。しかし、人間は倫理だけではなく感情で動く生き物でもある。周囲からすれば、そこに意味が見えなくとも本人には答えがある場合がある(それが正しいかはともかくだ)。こうした衝動にかられてしまった島野には何が見えているのか。引き続き話を聞くことにした。

――どこまで載せられるかは現時点で判断はつかないですが、とりあえず取材を続けさせてください。

島野 はい。

――まず浮気が発覚したのはいつ頃なんでしょうか。

島野 数ヵ月前ですね。

――どのようなかたちで奥さんに伝わったんですか?

島野 スマートフォンからですね。ボクは履歴なんかを消すことは一切なかったんで。<まだまだ続く>

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