プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は中嶋勝彦を見よう/「プロレスの仕組み」論す!


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――
小佐野さんが配信の解説もやっている全日本プロレスがいろいろ大変なことになっているんですけど、現場はどんな状況なんでしょうか。

小佐野 そちらで事情通Zというコラムでいろいろやっているようだけど(笑)。

――
恐縮です! あの記事から選手・関係者みんなが一気に喋りやすくなったみたいで。

小佐野
 今年の全日本の会場の雰囲気は悪くないんだよね。選手たちは一致団結してるじゃないけど、とにかくいい方向に持っていこうとしている感じがした。

――
現場監督的ポジションだった石川修司選手は離脱しましたけども。

小佐野
 結局、残った選手たちみんなでリングを盛り上げていこうという前向きな空気を感じているね。裏を返すと中嶋勝彦や、その裏にいる「黒幕」とされている人たちは大ヒールなんで(苦笑)。

――
現実に起きている混乱がリングにも組み込まれて面白くなるのがプロレスの醍醐味ではありますね。

小佐野
 ヒールがいるとみんな一致団結する。それは一般社会でもそうだけど、会社にイヤな上司がいたら結束したりするでしょ。

――
古いたとえでいえば、ドリフターズのいかりや長介のような「権力者」を弄ることで他のメンバーが輝くってやつですね(笑)。暗黒・新日本時代のプロデューサーだった猪木さんもそんな立ち位置でしたし。

小佐野
 それで2月20日の大会は平日の後楽園なのにお客さんが入っている。むしろ以前よりお客さんが熱いんだよね。第1試合目が諏訪魔vs鈴木秀樹だったから最初からお客さんが熱いわけ(笑)。

――
最高のカードですよね!(笑)。

小佐野
 「いい試合だ!」っていう声が出たくらいで。試合に勝った諏訪魔が鈴木をおぶって帰る感動的なシーンだったんだけど、鈴木が背後からスリーパーで締め上げて、またバカバカ問答を始めるっていうオチだった(笑)。

――
ハハハハハハ!

小佐野
 全日本ファンは諏訪魔vs鈴木秀樹に昔の全日本を追い求めてるんだと思うよ。鈴木秀樹は本当に頭を使っているし、全日本にとってはかなり重要だと思う。

――
伝え聞く話では、全日本は中嶋勝彦参戦前から上り調子的なところがあって、そこに今回の騒動が重なったことで……。

小佐野
 どの要因かはわからないけど、騒動の効果は出てると思う。中嶋勝彦もああいう感じでやってるけど、リング上に関しては決して悪くないわけだから。試合は面白いし、彼のコンディションはいつも素晴らしい。ちゃんとした試合をやらないと「☓☓スタイル」のキャラクターに飲み込まれちゃうからね。

――
キャラだけだったらキワモノ扱いされますよね。

小佐野
 そう、単なるキワモノになっちゃうから。それだとメインを任せられないし、お客さんだって惹かれないでしょ。

――
鈴川真一の挑発に乗っかって中嶋勝彦を馬鹿にする一部のファンがいたんですけど、どう見たって実績やパフォーマンスは比べ物にならないんですけどね。中嶋勝彦の周りに誰かいるのはたしかなんですけども、彼が全部言いなりになってやってるとは思わないというか、あのキャラも背中に張り付いてないとできることじゃないですし。

小佐野
 やってることが「どこまで本当なの?」っていう感じが面白いんだろうね。「闘魂STYLE」で
謝罪したあとに三冠戦前日にスペアリブをむしゃむしゃ食っていたり(笑)。それまでの中嶋勝彦のイメージを完全に消している。周りに何を言われてもどこ吹く風のメンタルの強さを感じるよね。

――
普通は日和ってもおかしくないですよ(笑)。

小佐野
 だって15歳の中学生のときにWJに入団して、X1で格闘技デビューして、16歳の誕生日前にプロレスデビューもしてるんだから。そして16歳で佐々木健介・北斗晶の家に住み込み。昔インタビューしたときに「よく佐々木さんのところで持ちますねみたいなこと聞かれるんですけど、ボクはそこしか知らないんですよ」と言ってたから。

――
プロレスが好きでプロレスラーになる選手がほとんどの平成の時代に、中嶋勝彦は「メシを食う」ために中卒で入ってきた。ハングリー精神が違いますね。

小佐野
 健介オフィスの初めは勝彦ひとりきりで、やめていく選手も多い中、最後の最後まで彼は残ったんだから。

――
佐々木健介引退と健介オフィスは事実上の活動停止だから、所属を変えてもいいはずなのに、そのあともしばらく在籍しましたよね。

小佐野
 やっぱりね、並のハートじゃないし、生き抜く力は持っていますよ。結果的に全日本のリングがピリピリし始めたわけだから。何が起こるかわからないし、まさに猪木さんじゃないけど「一寸先はハプニング」的なものも感じてるんじゃないかな(笑)。

――
まさに闘魂STYLE!(笑)。

小佐野
 いや、ホントに。もしかしたら全日本はここからすごい低迷期に入るかもしれないし、突き抜けるかもしれない。そんな面白さがあるよ。
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