山田武士トレーナーが語るリング禍について(聞き手/ジャン斉藤)
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――井上尚弥と青木真也のリング禍を巡るSNSのやりとりが話題になってますが、そこに加わった山田さんのポストも炎上してましたね。
山田 お騒がせしました。ジャンさんが「SNSは議論に向いてない」と書いてましたけど、文字数にもかぎりがあるし、本当に難しいです。ボクも青木くんのことは知らないわけじゃないから、あれが芸風だってことはわかってるんですよね。でも、多くのボクシングファンは青木くんのことを知らないじゃないですか。だから黙っていられないところもあって。
――青木真也もべつに特段おかしなことを言ってるわけじゃないんですけど、あの「芸風」を分析すると、たとえば下世話な話をよくするのに、他人が下世話な話をすることは許せない感じのカウンター気質だったり、その瞬間はエッジが効いた言葉を放つんですけど、状況や角度によって発言やスタンスが変わってくるので、線で見ると整合性がないように見えるんですよね。良い意味で考えが変わるのは人間だから、そこも青木真也の人間臭い面白さではあるんですけど。
山田 ボクも「ああ、いつもの青木くんだな」と思ったんですけど、井上尚弥選手がアンサーしたじゃないですか。あの井上チャンプがこういうことで動くことはないので、お亡くなりになった穴口(一輝)くんは自分の試合のセミファイナルだったからだと思うんです。それに対して青木くんが「美談にしちゃいけない」って返してるから、これは誰かが言わないと思って……。
――青木選手が指摘したのは、穴口選手の激闘が年間最高試合に選ばれたことについてですね。美談にするつもりはないと。
山田 穴口くんの試合が年間最高試合に選ばれたのは、彼がお亡くなりになる前のことで、それは井上チャンプが書いたようにエールだったと思うんですよね。ボクらは穴口くんが目を覚ますことを祈っていたし、そう信じていました。いつの日か目を覚まして社会復帰したときに、もうボクシングができない身体だったとしても年間最高試合に選ばれたことを振り返ることができれば……そう願ってのエールだったと思いました。
――あのタイミングで年間最高試合を与える決断を重かったと思ったんですね。批判の声はあるわけですから。
山田 たしかにそうなんですよね。あの受賞の数十分後にはお亡くなりになって、こんなことをいうと美談にするなってまた言われちゃうかもしれないですけど、まるで受賞を確認した感じもあったんで。
――井上チャンプもあのツイートすることは相当、逡巡したと思うんです。どんなに言葉を尽くしても何か言われるに決まってますし。
山田 そうですね。だからなのか時系列と自分の考えをシンプルに説明して。
――青木選手も決して間違ってことは言ってないのに、なぜ受け付けられない人がいるのかといえば「お気持ち表明」というネットスラングを使った時点で議論ではなく、煽りたいだけのSNSバトルに見えてしまったところもあるのかなと。実際にあそこから感情的な煽りあいに火がついた感があって。青木選手の言ってること、井上チャンプの言ってることを擦り合わせていくのが議論なんですけど、SNSバトル化したことで建設性が失われてしまった。
山田 「議論すべきだ」と言われてもボクシング界は長年、安全面の問題には取り組んでいるんですよね。こういう事故が起きてしまった以上は何も言えないところはあるんですけど……。
――そういったボクシング界の取り組みを理解しているから、山田さんが感情的になったところもあるんですか? 議論は行なわれていると。
山田 そうなんですよねぇ。ボクは青木くんの芸風を理解してる側だったんですけど、一応ボクシング界の人間なんで。
――最近のMMAファンは山田さんのことを完全にボクシング側の人間だと思ってますよ。
山田 ってことですよね。俺ほどグレーな人間はいなかったのに。
――MMAに関わってしまったためにライセンスが剥奪され、指導もできなくなった時期もあって。
山田 ボクシングもずっと事故防止には取り組んではいるんですけど、残念ながら国内でも国外でもどうしてもゼロにすることは……国内でいえば、2013年に4回戦の試合でお亡くなりになってるんです。
――デビュー戦の試合だったそうですね。
山田 その前でいえば、2008年、2009年、2010年と3年連続で死亡事故が起きてしまいました。しかも大きな試合、タイトルマッチで毎年事故が起きてしまったことがものすごく……14年前のことですけど、ついこないだのような感覚があります。2013年からの10年間は事故がなく行われてきました。
――ボクシングが他の格闘技競技と比べると事故の件数が多いのは、まず試合数の多さが挙げられますね。
山田 ボクシングは年間約2000試合やってるから10年間で2万試合はやってるんですけど、何試合やろうがゼロでなければいけない。それでも昔と比べると減っているのは、何か起きればレフェリー、ドクター、セコンドからヒアリングするなどして事故防止に務めてきたからですね。
――昭和や平成中期までは、数年おきに事故が起きてますね。
山田 今回の穴口くんのことを受けてボク個人としては思ったのは1試合3回のダウンで止めるべきなのかなと。このルールになれば3回ダウンしてからの大逆転KO劇はなくなりますけど、それが時代なのかなと思います。
――1ラウンド3回のダウンで試合を止める「3ノックダウン制」ではなく1試合3ダウンでストップ。格闘技に対しての情報や知識が深まってる現在だとそうすべきかもしれません。
山田 15ラウンド制が12ラウンド制に改められたのは、レイ・マンシーニvsキム・ドゥックの世界戦で、終盤14ラウンドにキムがノックアウトされて、亡くなってしまったことがきっかけです。その試合を裁いたレフェリーも自殺しちゃったんですよね……。
――ああ、試合を止められなかったことに苦悩して。
山田 レイ・マンシーニvsキム・ドゥックから世界タイトルマッチは12ラウンドに変わりました。事故が起きてからルールを変えてるのは後出しじゃねえかって言われるかもしれないですけど、どうすべきは議論されています。
――ボクシングは5ラウンド制にすべきだという意見もありますね。
・5ラウンド制の難しさ
・8オンスより6オンスのほうが安全?
・トーナメントの是非
・試合後の担架あるいは車椅子はマスト
・コンタクトスポーツと脳ダメージ
・水抜きはやらせていない……まだまだ続く!
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コメント
山田さんてこんな思慮深い人だったんだ
輩トレーナーだと思ってた
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(ID:38065370)
ONEは50歳近い秋山に1Rボクシング、2Rキックという専門外ルールで3RでやっとMMAという無理ゲーやらせてるから、水抜き防止で安全に気を使ってるのか良く分からないところがありますね。
2階級下で観客席にいたリネカーを代役で出したり、その発端の欠場もONEの確認不足だとシュウさんに指摘されてますし。
それこそ青木がチャトリとの愛憎劇でお涙頂戴にするような話ではなく、運営サイドにコンプレインすべき問題だと思うのだけど。