ひさしぶりのRIZIN参戦! 大晦日に新居すぐる戦が決定した弥益ドミネーター聡志インタビューです(聞き手/ジャン斉藤)
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・【因と縁のRIZIN】斎藤裕「クレベルに勝てば、ケラモフ戦のラインに……」
弥益 今日は他に誰の取材をするんですか?
弥益 それは何か間違ってますよ!(笑)。
――年に一度は弥益選手のお話を聞いて、モノの見方を磨いておかないと! 大晦日RIZIN出場が発表されましたが、先程の記者会見では「迷いがある」と。
弥益 いやあ、こうやって発表されたいまでも迷いはありますよ。そもそもオファーの決断する前に試合が決まっていたんじゃないか……くらいのスピード感で(笑)。その前は「試合は来年の春くらいにやりたいな」という話をしていたんです。
――今年の試合は考えていなかったと?
弥益 正直、全然考えていなかったです。来年の春くらいにできたらいいかな……とボンヤリ考えていたら、あっという間に大晦日に試合が決まった感じです。周りからは「棚からボタ餅」なんて言われますが、本当においしいボタ餅なのか、ひょっとしたら毒が入っているのかわからないですけど(笑)。
――自分の気持ちはまだ追いついていないけど、断る理由もないって感じですね。
弥益 まあ、そんな感じです。気持ちはこれから作ろうかなと。
――試合が決まっても、いざスイッチは急に入らないもんなんですね。
弥益 ボクはすぐにバチッと入るよりは、対戦相手のストーリーや思い入れをだんだんと練り込んでいくタイプなので。だから試合直前はかなり入れ込んでるんですけど。わりと落ち着いた熟年夫婦のような日々を過ごしながら、だんだんと……ですね(笑)。
――弥益選手といえば、RIZINではフェザー級契約で戦えないことでおなじみですけど、今回はようやく……。
弥益 いや、まだ信用していないですよ!
――ハハハハハハハ!
弥益 66キロと発表されていますけども、俺がケガするかもしれないし。もしそうなった場合、キャッチウエイト契約にしてまで、このカードを成立させる意味があるのかどうかはべつとしてですね。
――前回の平本戦はメインイベントだったから、なんとか成立させたけど。あれからだいぶ試合間隔は空きましたが、戦いたいとは思わなかったですか?
弥益 なくても全然格闘技が楽しいというのが正直なところでしたね。勝ってスポットライトを浴びて拍手喝采を浴びて楽しい……という喜びはもちろんあるんですけど。いまRIZINで輝いてる人たちって俺の中で厳しく判定すると格闘家じゃないんですよ。
弥益 自分が格闘技を始める前に画面越しで見たり、会場で試合を見た人たちが俺の中で格闘家なんです。
――憧れの対象というか。
弥益 結局、その当時に憧れてた格闘家の皆さんの影を追い続けてるだけなんですよ。だからずっと自分のやってることは「格闘技ごっこ」だと思ってますし、いかにその「ごっこ」や「遊び」に真剣に入れ込めるかが自分の目的なんですよね。それだけで格闘技をやっています。だからこそ試合じゃなくて、それよりも格闘家だと思っている人たちに「強くなったな」とか「だいぶ成長したな」と褒めていただけることのほうが、めちゃくちゃ嬉しいんです。
――たとえば誰にですか?
弥益 それこそ茨城の先輩方……川尻(達也)さん、岩瀬(茂俊)さんとか昔から見ていただいた方ですね。金原(正徳)さんとは2~3年に1回くらい練習させていただいたりするんですけど、「久しぶりにやったけど成長してんな」みたいなことをふと言っていただけると、本当にもう……涙が出るくらい嬉しいです。
――やってることは格闘技じゃなくて格闘道ですね。
弥益 勝ち負けももちろん嬉しいですし、それが麻薬的なところはあるんですけど、自分が格闘家の役にうまく入り込めているかどうか。そっちのほうが日々嬉しいことだとは思っています。だからこそ練習しているだけで正直満足しているところがありますし、じゃあ、いろんな人に迷惑かけて自分の健康も削って、もしかしたらこの先の人生が短くなるかもしれない……というリスクと一瞬の快楽を天秤にかけたときに「格闘技ってそこまでしてやるものなのかな……」って考えちゃうと、やっぱり熱が冷めてくるんですよ。いざ試合になったら「このために死んでもいい!」って思えるんですけど。試合から1年くらい離れていたので、快感の薬が抜けてきたというか(笑)。
――流行りワードでいえば、「陰性」なわけですね(笑)。そこは最近の格闘家像と違いますね。何かバズるとかバズらないとかは……。
弥益 そこはどうでもいいです(笑)。自分の自己満足で、いい歳して、ずっと「格闘技ごっこ」「ヒーローごっこ」をやっているようなもんなんですよ。
――格闘家を大きく分類すると、弥益選手は青木(真也)さんや北岡(悟)さんのほうですよね。
弥益 まあ、そうですね。文化系というか、不良じゃないほうというか(笑)。
――A系(アウトロー系)か、B系(文化系)じゃないですけど。
青木さんや北岡さんのような方と同類なんて、おこがましい話なんですが、北岡さんとはずっと仲良くさせていただいて、このあいだも個室サウナに連れて行ってもらったんですよ。そこで北岡さんから「試合しないの?」って聞かれて。自分としては1年前の試合と比べて「ここがめちゃくちゃ伸びた」とか「ここがすごい成長した」というところがあんまり見えてない。だからまだ納得できてないし、自分の中でひとつのかたちにしてというから試合をしたいという思いがある……ってことを北岡さんに伝えたら「成長って、試合の中でするもんだからね」とおっしゃっていただいて。たしかに自分が得意になったことは試合の中で突然できるようになったことだったりするんですよ。
――普段の練習の積み重ねが、“試合”という極限状態の中で突然開花する場合もある。
弥益 北岡さんの話を聞いて、その喜びを得るためには「試合に出なくちゃいけないのかな?」っていう気もしてきたんです。練習を楽しむために、試合に出て成長するという考え方もあるのかなと。それで今回も動き出したいというか、試合をしたいなっていう思いがだんだん出てきたという感じでした。
――北岡さんは最近ご結婚されて。弥益選手は社会の先輩ではありますが。
弥益 結婚生活という意味では、ですね(笑)。
――結婚生活のお話はされました?
弥益 これは藤野恵実さんが北岡さんにおっしゃってたことで、あらためて自分からも「そうですね」と同意はしたんですけど、一緒に住むのは同棲じゃなくて同居だと。2人の人間がうまくやっていくために協力し合うのが同居。藤野さんスタートからのお話で「結婚生活もそうなんじゃないか」っていうお話はしました。
――北岡さんが「同棲する」とポストしたら藤野さんから訂正が入ったやつですね。青木さんや北岡さんたちの格闘技って生活に根付いてる感じがあって、じつは重いですね。
弥益 自分は青木選手とは1回もお会いしたことなくて、青木選手のいろんな媒体での発言なんかを見てると、格闘家という存在は格闘技以外はできない人がやるべきだ、そのほうがいいという持論を持たれていると思うんですよ。自分はどちらかというと、格闘技なんて全然いらないというか、むしろないほうがいいんじゃないかくらいに思ってるんですけど。そんな立場で格闘技をやっているからこそ、格闘技には捻くれた愛を持っているし、全然必要じゃないものなのになぜか手放せないというか。こうやって格闘技をやることによって、いろんなものを棒に振ってるところもあるんですけどね。
――同系とはいっても青木真也は「職業・格闘家」ですもんね。
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コメント
ドミさんの知性と品性がキラリと光る素晴らしいインタビュー。
「いかに行間を読んでいくか」のくだりは常々自分もそれに近いことを思ってた。
みんなで燃やして、いいね稼いで、後始末は誰もしない、それがSNSの楽しみ方と言ってしまえばそれまでなんだけど、「そこに深みはない」と言う感じです。
B(文化)系格闘家ならではの濃い視点でとても面白いインタビューでした。
ドミさんの「格闘技ごっこ」は、所英男選手が格闘技を「リングスごっこ」と言っているのに通じるものがありました。
偉大なあこがれの意味もこめて。
新居選手との関わりを佐藤大輔氏が煽り映像でどう料理するのかも楽しみです。
マッハさんとか茨城の選手にも出てほしいなあ。
ドロップキック読者でもある川尻選手本人がこれを読むのも面白いです(笑)