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UWFやリングス、K-1まで、様々なリングで戦ってきた長井満也インタビューシリーズ第2弾! 地獄の新生UWF新弟子編です (聞き手/ジャン斉藤)

前回はこちら
長井満也「我が青春のスーパータイガージム、シュートボクシング」


――
長井さんはシュートボクシングをやめて、当時人気絶頂だった新生UWFの入団テストを受けることになるんですよね。

長井 入門テストを受けましたね。シュートボクシングで最後に試合をしたのは89年の2月くらいで、入門テストは6月だったんですよ。

――
けっこう空いてますね。

長井 そのときのUWFって履歴書を送ったら「じゃあテストしましょう」というわけではなく、定期的に入門テストをやってたんですよね。

――
よく『週刊ゴング』や『週刊プロレス』に告知されてましたね。

長井
 私は第3回目の入門テストですね。そのとき受けたのが同期の垣原(賢人)くんと冨宅(飛駈)くんで。第1回目のテストの合格者は田村(潔司)さんです。

――
テスト場所は世田谷区大蔵の道場だったんですよね。

長井
 世田谷の運送会社さんに間借りしていた道場で入門テストをやりました。参加者はすごい人数でしたよ。大げさかもしれないけど、20人30人はいたと思います。それこそ本気でプロレスラーになるために来ている子もいれば、ちょっと冷やかしっぽい子もいて。

――
試験官は誰だったんですか?

長井
 おぼえてるのは前田(日明)さん、高田(延彦)さん、船木(誠勝)さん、あのへんがオールスターで揃っていましたから、けっこうすごい入門テストでしたね。緊張したし、ボク的にはシュートボクシングをやめてきているから、もう後がない。「テストに落ちたからシュートボクシングに戻ります」とも言えないし、受かるために準備はしてきましたけど、不安はありましたね。

――どんなテストメニューだったんですか?

長井
 なんとなくしか覚えていないけど、最初にスクワット500回。それを何分でできるのか。それが終わったら腹筋と背筋。UWFの道場の近くに有名な坂があって、そこでダッシュもやらされたような記憶があるんですよね。めちゃくちゃキツかったですねぇ。

――
基礎体力的なメニューが中心で、ミットやスパーはなかったんですか?

長井
 それはなかったです。テストも道場の中じゃなくて、道場の前の車を置くような砂利のところでやってたんですよ。腕立て伏せにスクワットも腹筋もそこで。腹筋なんてケツのところが破れて血を流してやってる子もいましたよね。

――
途中で脱落した人もいたんでしょうね。

長井
 いっぱいいましたね。たしか入門テストを受けに来た中で、垣原くんが一番若かったんですよ。15か16歳。もうそのときから船木さんに目つけられてて、腕立て伏せがきつくなって止まりそうになったら、船木さんが前に来て声をかけてましたね。

――
船木さんも新日本の入門が15歳だったから、自分と重なり合わせてるところがあったんでしょうね。長井さんはシュートボクシングで鍛えられたことで、突破する自信はあったんじゃないですか?

長井
 体力はあったと思いますけど、シュートボクシングの中で腕立てやスクワットを500回やるみたいな経験がなかったんで。だからちゃんと用意してきましたね。そこで体力がなくて落ちたとなったら、「何しに来たんだ」って話じゃないですか。それまで自分のやってきたものを捨ててまで来たのに。

――
昔のプロレスの道場ってまず体力ですよね。

長井
 たとえば月謝を取って練習生として教えるんだったら体力はなくてもいいけど、プロレスの団体にしたら将来スターになるかもしれない選手をお金をかけて育てるわけじゃないですか。やっぱり最低限の練習に耐えられるものを持った人が来てくれないと、会社も困りますよね。

――
その体力テストを長井さんは最後までやりきったんですよね?

長井
 はい。合否は後日、郵便か何かで送られてきたような気がしますね。合格だったんですけど、嬉しかったというよりは、自分のやってきたものを捨てて挑戦したから、ホッとしましたねぇ。

――
長井さんがシュートボクシング経験者だってことも合格にプラスに働いたんですかね。

長井 シュートボクシングをやっていた奴が受けに来るってことは選手の皆さんは知ってたみたいです。だから試験前に前田さんや高田さんから声をかけられたりもしました。他の試験を受けに来た子からは「選手から喋りかけられてた奴がいたな。なんだよ、アイツ」みたいに言われてたのが聞こえてきましたね(笑)。

――
注目のテスト生だったから、UWF側からすれば、テストをクリアすれば取ろうという考えはあったのかもしれないですね。

長井
 まあちょっとはあったかもしれないですね。

――
そこから寮生活が始まるんですね。

長井
 そうですね。当時、寮が2つあったんですよ。中野(龍雄)さんと田村さんがいた寮と、もう片方に安生(洋二)さんと宮戸(優光)さん、鈴木(みのる)さんがいたのかな。

――
中野さんのほうが狛江で、安生さんのほうが喜多見ですよね。

長井
 そうそう。ボクと垣原くんは宮戸さんのほうの寮で、冨宅くんは中野さんのほうだったんですよ。

――
寮ってどんな感じなんですか?

長井
 いま思えば本当に汚いアパートというか(苦笑)。1階が6~8畳のキッチンがある部屋で、2階が6畳と4畳半の部屋。上に宮戸さんと安生さんがいたんだけど、ボクらが入る前に安生さんは寮を出られたんですよ。鈴木さんは下の1部屋だったような気がするな。

――
当時の鈴木さんが寮に入っているのは意外ですね。

長井
 でも、ほとんどいなかったですね。彼女の家にいて(笑)。中野さんのほう2LDKのアパートで。中野さん1部屋で、田村さん、冨宅くんが同じ部屋みたいな感じで。そのあと中野さんは寮を出られたはずですね。

――
そこから大蔵の道場に通う生活が始まるということですね。

長井
 そこから道場までけっこう距離があるんですよね。あまりに昔のことで思い出せないですけど、私と垣原くんは自転車で通っていたのかなあ。そういえば寮に入ってから鈴木さんに「マックで買ってきてくれ」って言われて。鈴木さんの原付を借りて、用賀のインターの乗り口にあったマックまで行ったら、帰り道エンストで動かなくなっちゃって。1時間かけて原付を押して帰ってきたことがありましたよ。鈴木さんから「遅せえじゃねえか!」と怒られましたけど、汗だくで「すいません!」って謝ったら許してくれました(笑)。

――
あの頃の鈴木さんって正直、下の人たちからは恐怖の象徴的な存在ですよね。

長井
 新日時代の鈴木さんのことはわかんないですけど、寮に入って宮戸さんに道場に連れて行ってもらったんですよ。本当の初日ですよ。道場にいた鈴木さんに挨拶したら、鈴木さんが宮戸さんに「宮戸さん、コイツやっちゃっていいんでしょ?」って言われましたから(苦笑)。

――
うわー、初日からイヤですねぇ。

長井
 それが初対面ですよ。そっからマウント取りたかったんじゃないですか。

――
そこは長井さんはシュートボクシング出身だから「やれる選手」という意識もあったんじゃないですか?

長井
 そこもあったのかもしれないですね。あるときも「背がデカいからって、期待されやがって」みたいなこと言われましたから。まあ初日から「俺に地獄が待ってるんだな」って思いましたよ(笑)。

――
実際に地獄でした?

長井
 地獄でしたねぇ(しみじみと)。あんまり細かくいうと、UWFファンから批判されそうですけど……。

――
Dropkickメルマガの読者は大人のプロレスファンしかいないので大丈夫です!(笑)。

長井
 プロとして食べていくんだから練習がキツイのは仕方ないと思ってたんですよ。でも、それ以外がキツかったですねぇ。同期で入った子もあっという間にやめていったし。

――
同期は何人くらい入ったんですか?

長井
 ボクがおぼえてるのが冨宅くん、垣原くん含めて5人か6人だったんですけど、ボクら以外は2~3日であっという間にいなくなりました。なので今度は補欠が入ったんですけど、それもあっという間にいなくなりました。朝起きたらいないこともあるし、ちゃんこ番のときに「大根、買ってきます!」と出たきり、いまだに帰ってこない奴もいるし(笑)。

――大根を探してさまよってますか(笑)。相撲社会から受け継いでる縦社会の人間関係、かわいがりが厳しいってことですね。

長井
 もちろん入ってきて体力がなくて練習についていけなくてやめてしまうのは仕方ないと思うんですよね。厳しい練習は当然ですから。でも、そうじゃない理由でやめるのは……いまだったら逮捕者が出るようなかわりがりですよ(キッパリ)。

――
最近のプロレスインタビューの難しいところは、過去の細かい話を聞きづらいってところがあるんですよね。昔の話だとしても活字化できない内容もあって。

長井
 そうですよね。どこの団体とは言わないけど、会社からそういう話は絶対に禁止って言われてるみたいですよ。でも、そうあるべきだと思います。運動能力に優れてる子たちがそういう理不尽ないじめや暴力でやめていく。業界的にはすごいマイナスだと思います。それは本当にプロレスだけじゃなくて、他のスポーツも悪い習慣をなくしていくべきだと思いますね。たぶんですけど、ボクらの世代がそういうめちゃめちゃな時代の最後ぐらいだったと思いますね。

――
長井さんは地獄を生き残った、と……。

・あれ以上やらてたら死んでいた
・地獄のかわいがりエピソード
・安生さんを悪く言う後輩はいない
・幻のリングネーム「長井優樹」
・救われた前田さんのポルシェのエンジン音……などなど1万字インタビューはまだまだ続く

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