――試合前からいろいろあった超RIZIN2ですけど、笹原さんは何がいちばん大変でした?
――うわっ、それですか!(笑)。
笹原 この件はホントにグッタリしましたね……。
――鈴木千裕vsパトリシオ・ピットブル戦直後のリングサイドで両者の揉め事が始まって。いろいろあったあげく、クレベルがピットブル軍団の控室に殴り込んだとか。
笹原 ボクが控室に駆けつけたときには、イスが飛んでましたね(笑)
――ハハハハハハ。さすがブラジル人同士の喧嘩!
笹原 何がきっかけで始まって、何が起こったかは両陣営の言い分があるんでしょうけど。まず千裕vsパトリシオ戦後のリングサイドでパトリッキーとクレベルが揉めて、いったんは収まったというか、それで終わったように見えたんですよね。
笹原 そうです。で、そのあとにボクがスタッフから呼ばれたんです。「リングサイドでクレベルが怒ってるからすぐ来てくれ」と。で、むっちゃ興奮しているし、ボクも呼ばれたとはいえ前後関係もわかんないし、とにかく落ち着かせようとしたんですけど全然会話になんなくて。「もういま話してもこりゃ無理だな」と思ったんで「あとで話そう」ということで、ひとまずクレベルに控室に戻るように促したんです。
笹原 そう、そのあとクレベルが1人でピットブルの控室に乗り込んだんですよ。ボクは控室に戻れと言ったけど、その控室じゃねーだろ!(笑)って。
――ハハハハハハ。
笹原 で、休憩に入ったくらいのタイミングで「笹原さん!YAVAYことになってます!早く控室に行ってください!」って連絡があって、走って駆けつけたらサトシやマルキーニョスもいて、ピットブル軍団とボンサイ軍団が揉みくちゃになってたんですよ。で、とにかく引き離さなきゃいけないと思って、クレベルを見つけて正面から抱きついて、控室から連れ出したんです。
笹原 飯伏選手が現場にいたことは知らなかったですね。だって芸能人水泳大会の騎馬戦みたいになってましたから(笑)。サトシやマルキーニョスは全然冷静でしたけど、クレベルは興奮状態。ボクともフェイオフくらいの距離で言い合いになったんですよ。
笹原 チャーリー柏木もピットブル軍団に胸ぐら掴まれていたみたいですし、もうとにかく無茶苦茶ですよ!(笑)。なんとかクレベルを落ち着かせて、広報のN野さんが「こっちよ!」みたいな感じで別の部屋に連れて行ったんです。でも怒りが収まらないパトリッキーたちがクレベルのことを探し回ってるんですよね。
――うわー!
笹原 「この部屋か!」みたいにひとつひとつ探し回っていて、ホントに獲物を探す猛犬状態だったんですよ。N野さんが機転を利かせて、クレベルたちがいる部屋の鍵をかけたので「ここにはいないな……」って事なきを得たんですけど。
――一歩間違えれば『シャイニング』のジャック・ニコルソンですよ(笑)。
笹原 N野さんも控室の扉をそっと開けて外を覗いたら、あの兄弟がガルルッ!みたいな感じでクレベルを探している姿を見て、背筋が凍ったって言ってました(笑)。クレベルたちが会場にいるとまた揉め事が起きるので、都内のホテルに帰らせようとしたんです。そうしたらサトシが「でも、ホテルもピットブルたちと同じだからね。アハハハハハハ!」って。
笹原 まあサトシは笑うくらい冷静だったんですけど。そうそう、そのときも乱闘騒ぎを見ながら「ここブレイキングダウンじゃない、RIZINだよ!」って言ってたらしいです。
――さすがにそれは作り話でしょ!(笑)。
笹原 いやいや、ホントですよ!これサトシ本人から聞きましたから。
――超RIZINではなく超ブレイキングダウン感はありますけどね(笑)。
笹原 まぁそれくらいサトシは冷静で、ホテルもチェックアウトしてもらって、その日のうちに静岡に帰ってもらうことにしたんです。
――ピットブルたちもさすがに静岡までは追ってこないだろう、と(笑)。
笹原 で、クレベルはホテルに向かう車に乗る直前、ボクのところにやってきて「……ゴメンね」と謝ってきたんですよ。
――感動的なフィナーレ……じゃないんだけど、いい話っぽく聞こえます(笑)。
笹原 クレベルはその前にマルキーニョスに何か諭されてたんですよね。たぶんマルキーニョスから「クレベルよ、ケンカするのはまぁアレだけど、お世話になっている人たちにはちゃんと謝っておかなきゃダメだぞ」みたいなことを言われたんだと思います。
――ピットブル軍団とボンサイは仲直りしそうですか?
笹原 無理ですね(笑)。
――即答!
笹原 いや、これ正確にはピットブル軍団とボンサイチームが揉めたんじゃなくて、ピットブル兄弟とクレベルのあいだの揉め事ですからね。ピットブル兄弟とサトシ、マルキーニョスのソウザ兄弟はお互いに尊敬しあっていますから。
笹原 クレベルとボクが言い合いになったのも、クレベルは「自分はちゃんとRIZINの言うことを聞いてるのに、ピットブルブラザーズのことは、なんで許してるの? オマエは向こうの味方なのか」みたいなことをボクに言ってきたからなんですよ。
――「ササハラ、おまえはファミリーじゃないのか」と。
笹原 で、カチーンときたんですよ(笑)。オギちゃん(扇久保博正)からもファミリーと言われている俺に向かってそんなんこと言うのかと(笑)。で、大声で「俺はオマエの味方だし、オマエの気持ちを理解しているし、オマエが恥を欠かされたら戦うに決まってるだろ!」と。
――“江夏の21球”のときに「オマエに何かあったら、オレも一緒にユニフォームを脱ぐから」と励ました衣笠祥雄みたいです(笑)。
笹原 でも、どっちがいい悪いじゃなくて、みんなに迷惑をかけることしちゃダメだろ」と。このときに一番心配していたのは、次に試合を控えている選手のことですし、とにかく乱闘を収めて一大事にならないようにするために必死でした。
笹原 たしかに。今回もブラジリアン同士ですけど、お互いのメンツがあるから、いったん火がつくと本当に誰にも止められないですよ。勝手に全面対抗戦が始まっちゃう感じですもん(笑)。
――榊原さんは試合後の総括コメントで「よくあること」という感じでしたね。
笹原 社長はリングサイドで試合を見ていたので全然知らなかったんですよ。あとから説明しましたけど。
――「リング上で決着だ」ってことで榊原さんは腕まくりしてそうですけど。
笹原 まぁでもこのケンカのそもそもの原因もよくわかりませんし、どっちがいいとか悪いという話じゃなくて、もうケンカ両成敗ですよね。クレベルが一方的に暴れたということでもないですし、彼の名誉のために言っておくとクレベルだけが悪いなんて、こっちは少しも思ってないですし。……って、ここまで試合の話は1ミリもしていないですよ!(笑)。
笹原 もちろん再戦前提で動きますが、今回はベラトールでの初代フライ級王座決定戦だったじゃないですか。じゃあアメリカのベラトールで再戦をやるのかといえば、そういう簡単な話ではないんですよね。
――堀口恭司vs神龍誠って日本大会だから組まれたところがありますし。
笹原 そこはRIZINでやるのかを含めてベラトールとの話し合いになりますね。RIZINでやるにしても、大晦日まで引っ張らなくてもいいんじゃないかと思いますし。
笹原 うーん、それはちょっとかわいそうですね。ドクターが何度か神龍選手に「見えるか、見えないか」のチェックしたじゃないですか。
笹原 それでも「見えない」ということでレフェリーのストップが入ったんで、神龍選手を責めるのはちょっと酷だと思います。見えてれば、試合をしたでしょうから。あそこはベラトールパートで、競技運営はベラトールというかアメリカのコミッション管轄だったので、ボクらもどうすることもできなかったんです。レフェリーのジェイソンにあとから聞くとコミッションに規定されているとおりの対応をしていたようですし。まぁでもRIZINで同じようなことが起こったら、我々がスムースに対応できたかどうかわかりませんが、少なくともお客さんにはもう少しわかりやすくアナウンスはできていたと思います。
笹原 そこは神龍選手が非常に純粋だからだと思います。一方の堀口選手は4月のベラトールの試合もレイ・ボーグの体重オーバーで飛んでますし、ホントについていないですよね。
――体重オーバーの常習者レイ・ボーグは「フライ級のオファーだと聞いてビックリした」というくたいだから人災っぽいところがありますよ! RIZINでアイポークで試合中止になったことってないですよね?(編集部より/ギャビ・ガルシアvsオクサナ・ガグロエヴァがアイポークでノーコンテストになってました!)
笹原 ないですね。というかアイポーク自体そんなにないです。RIZINグローブの形状的にアイポークは起こりづらいんですよ。自然と拳が丸まるような形状なので。
――拳を骨折しやすいとか難癖をつけられたRIZINグローブをいまこそ褒めろと。
笹原 あれ、なんだったんですかねぇ。こうなったらUFCやベラトールはぜひRIZINのグローブを導入してほしいです! お値段は勉強しますよ(笑)。
――しかし、堀口選手を通して「カーフキック」に続いて「アイポーク」という言葉も知れ渡ったという。
笹原 佐伯さんなら「アイポーク? うまそうな豚肉だわ!とりあえず3人前!」とか言い出しかねない(笑)。
――その時々の流行りのワードってありますよね。最近はドーピング問題で、木村ミノル選手の検査結果を気にしてますね。
13万字・記事15本詰め合わせセットはまだまだ続く……
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