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北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥が語る
UFC日本人ファイターです(この記事はニコ生配信されたインタビューを構成したものです)


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――
今回は、日本人選手が多数出場した2月5日のUFCについてお聞きしたいと思います!

水垣
 よろしくお願いします!

――
まず、平良達郎選手がめちゃくちゃ強かったなと。これで3連勝。

水垣
 強かったですよねぇ。対戦相手のヘスス・アギラー選手のギロチンチョークを凌いでからは、もうワンサイドで圧倒的な強さでした。ただ、最初はちょっとドキっとしましたよね。カーフキックを食らって冷静さを失ったのか、うっかり首に腕を巻かれてしまったので。

――
危なかったのは最初のシーンだけですね。

水垣
 負けるパターンとしては、相手の得意パターンしかないと思ってたんですよ。首を巻かれてギロチン一発もらう以外は大丈夫だろうなと。でも、いきなりそのカタチにハマってしまったので……。

――結果的にあっさり勝ったように見えますけど、一瞬のすきを見逃さず自分の勝ちパターンに持ちこんだ相手もさすがですねぇ。

水垣
 平良選手も試合前に「首を巻かれないように気をつけている」と言ってたんで警戒はしていたんでしょうけど、やっぱり攻撃されると冷静さを失う部分もあるわけで。

――
どんなに強いファイターでも、MMAというゲームではそういうシーンが生まれてしまう。

水垣
 でも、そこもちゃんと対処したので。終わってみての感想ですけど、やっぱり負ける要素はなかったし、あとは完璧すぎてとくに何も言うことはないです!(笑)。

――
結果、腕十字で決着。「自分が上になったら極められない相手はいない」というコメントつきで(笑)。

水垣
 ボクは、逆にほとんどの選手を極められないですよ。だから、ぜひ言ってみたいセリフです!(笑)。

――
5連勝という日本人UFC連勝記録を持つ水垣さんの自虐ネタが出ました!(笑)。次戦はおそらくランカーとの対戦になるんですけど、そこも突破してくれるんじゃないかという期待感がありますね。

水垣
 充分に可能性はあるし、ここからが勝負ですよね。ランキングに入れば今回の相手よりかなり実力のある選手が出てくるので。ただ、平良選手はいまの段階でも、ランカー相手でも勝てる可能性がある選手だとは思いますね。

――まだ底が見えてないですしね。

水垣 負けてないというのが大きいですよ。それに、UFCに来てから1戦目の硬さも抜けて、2戦目以降は完全に自分のゲームにしている雰囲気があるから安心して見ていられます。フライ級のもう1人の注目選手ムハマド・モカエフよりも安定した勝ち方をしている感じもありますから。

――モカエフとの無敗対がありえるかもしれないですね。

水垣
 そこで潰し合いをさせるのか、タイトル争いまでいって対決させるのか。

――
UFCもフライ級はリニューアルしたいと思ってるから、潰し合いはしないんじゃないかなという見立てもできるんですが。

水垣
 まあ、ブランドン・モレノvsデイブソン・フィゲイレードが4回もタイトルマッチをやるくらいですから(苦笑)。やっぱり、UFCも新しい風がほしいですよね。とはいえ“見えないトーナメント”じゃないですけど、UFCは期待されていても、ある程度の選手同士を当ててますし。たとえば、ベラトールのチャンピオンとかがUFCに参戦するとなったら、いきなりトップランカーと戦うことはありますけど、いまはそういうことは少ないんじゃないですかね。

――
マネル・ケイプやイリー・プロハースカのように初戦からランカー相手だったケースはめっきり減りましたね。

水垣
 あの2人はやっぱりRIZIN王者だったことが大きかったんでしょうね。まあ、平良選手はアメリカでの試合にも慣れてきていると思いますし、いい感じだと思います。順調すぎますね。やっぱり海外では実力を発揮できない選手というのはいるんですよ。移動もあるし、雰囲気も違うし。そういう意味では、しっかり結果を残してきているので、ちゃんと勝負できる選手だとは思います。

――
同日はROAD TO UFCのバンタム級トーナメント決勝戦もありましたが、中村倫也vs風間敏臣は中村選手が秒殺KO勝ちという結果になりました。

水垣 風間選手の勝ちパターンとしては、なんとか組んで一本取りにいくという作戦だったと思うので、どういうかたちでテイクダウンを取りにいくのか注目していたんですけど。風間選手としては、その一手としての打撃戦だったと思うんですよね。打撃でプレッシャーかけて、そこからテイクダウンという作戦。でも一発もらっちゃったので、その算段は崩れてしまって。ただ、ボクは作戦としてはアリだったなと思います。

――
風間選手の作戦を中村選手が跳ね返したということですよね。

水垣
 組み付かれる前に一発当てたという感じですよね。もう少し打撃戦でプレッシャーをかけて、組みにいけたら風間選手は面白かったと思うんですけど、その前にやられてしまったという。

――
しかし、中村選手は打撃スキルが凄いですよね。7試合やって打撃フィニッシュが5。

水垣
 柔道から上がってくる選手より、レスリングから上がってくる選手のほうが打撃に順応するのが早い気はしますね。それに、軽量級はとくにですけど、フリースタイルの選手のほうが、タックルを打つタイミングと打撃の感覚って凄く似てると思っていて。そういう意味でも、グレコの選手よりもフリースタイルの選手のほうが打撃の感覚はつかみやすいのかなという気はしています。あとはレスリングに絶対的な自信があるというのも大きいと思いますね。多少組まれても「どうにでもできる」という自信があるから、おもいっきり打撃ができる。そこは凄く重要で。ボクも試合をしていて、「自分のほうがレスリング上だな」と思えるとけっこう打撃もガンガンいけるんですけど、レスリングで分が悪いと手が出にくくなっちゃうんですよね。それはボクの負けパターンでもあるんですけど。そういう意味では、ボクが中村選手ぐらいのレスリング能力を持っていれば、どんな相手でも自信を持って打撃にいけただろうなと。

――
ボクは、なんだかんだで風間選手が自分のペースに持ち込めるのかなと思ったんですけど。

水垣
 いつも言っている“じゃんけんの法則”では、レスラーvs柔術家だと、柔術家のほうが相性的には悪くないですからね。ただ、これはMMAだし、中村選手がストライカーとしての武器も備えているので、こういう結果になった。単純な相性だけでいうと、風間選手はぜんぜん悪くなかったと思います。だから、勝敗を分けたのはMMAとしての完成度と、風間選手はいまのところ“尖っている選手”なので、うまく円を描けてきてる中村選手のほうが試合では強かったなという印象ですね。

――風間選手の尖った部分、すなわち寝技に持ち込む前に封じ込めたということですよね。

水垣 「グー」と「チョキ」で、風間選手も「グー」のかたちがハマれば強いけど、それ以外を出されちゃうと……という。その点、中村選手はバランスよくできている印象がありますね。

――
試合後は「負けた選手側のセコンドがダメなんじゃないか」という声が出がちなんですけど、今回は風間選手のセコンドだった大沢ケンジさんがそういう意見にさらされていて。ボクは作戦としてはアリだったと思うんですが……。

水垣 ボクが風間選手のスキルを持っていたら、似たような作戦を取ると思うんですけど。唯一風間選手が失敗したなと思ったのは、パンチでダウンしたじゃないですか。あのあとも打撃の攻防を続けちゃったところかなと思っているんですよね。ダメージを負ってしまったときの処理の仕方が、もう少し何かできたら立て直せたと思うんです。でも、強気の部分が出て同じように撃ち合いにいっちゃっている。そこでもう一回同じことをしちゃったのが、ちょっとなあ、と。

――修正能力ですね。

水垣 そこは判断ミスだと思うんですけど、難しいんですよねぇ。パニックになったあとに冷静に「この場合はこうしたほうがいい」と気持ち的に立て直すのはけっこう難しいんですよ。やっぱり取り返そうと焦る部分もあるし。ああいうときって本能的に練習してきたことが出ちゃうんですよね。今回、風間選手はテイクダウンを取る前段の、打撃でプレッシャーをかける練習をいっぱいしてきたと思うんです。なので、ダウンして意識が飛んだときに出たのが練習してきたことだと思うので。そこを切り替えるというのはなかなか難しいと思います。

――タイムが取れる競技じゃないですからねぇ。

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・木下憂朔の負けが痛いのは……
・日本人の適正階級問題
・朝倉未来vs牛久絢太郎、齋藤裕vs平本蓮の勝敗予想……などなど1万字インタビューはまだまだ続く

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