毎大会恒例! 笹原圭一RIZIN広報のインタビュー!!  今回は鈴木千裕vs平本蓮のLANDMARKなどを振り返ります!(聞き手/ジャン斉藤)


 
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笹原さん、RIZIN LANDMARKの鈴木千裕vs平本蓮は最高でした! でも試合内容はイマイチでしたけど(小声)。

笹原 いきなり面倒くさい感想ですね。でも、最高だったのは同意です。

――試合内容はイマイチなのに最高だったって逆にすごいことですよ。

笹原 それはRIZINが以前から掲げている「人間丸出しの椅子取りゲーム」になっていたからでしょうね。

――前々からMMAって人間性がむき出しになるなと思っていたんですが、MMAって「動」と「静」がゴッチャになって争うファイトスポーツじゃないですか。この「静」という部分は膠着もあって、そこは万人受けしない攻防のようで、じつは人間らしさが詰まっているなと。今回でいえばコーナーポストで組み合うシーンも、なかなか抜け出せない平本蓮の表情が本当に見ごたえがあって。

笹原 動きがないシーンだからこそ、じっくりと見ることができる。つまりそれって、見る側が「いま平本蓮は何を考えているんだろ……」とその胸の内を想像できるってことですからね。

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――立場によっては「頑張って突き放せよ!」とか「この程度なんだ」とか、湧いてくる感情は違ってくると思います。MMAは打撃や締めなんかで一瞬で終わってしまうドキドキ感もあるし、あと「組み伏せる」行為って相手を屈服させることですし、日本語には他人に冷たい仕打ちをすることを「足蹴にする」なんて言う。やるほうもやられるほうも何か人間の尊厳をかけた戦いに見えちゃいますねぇ。

笹原 UFCは「2人が入って、1人が出てくる」というコンセプトから出発していますし、MMA以前のバーリ・トゥードも、「どちらが強いかはっきりさせる」という思想のもとに生まれたものでしょうから、人間の尊厳を奪い合うように見えるのは自然ですよね。

――でも、榊原さんや笹原さんってべつにMMA自体は好きじゃないですよね。

笹原 んあ〜、なんてことを言ってるんですか! 「笹原死すともMMA死さず」って背中にタトゥーを彫ってもいいくらいMMAのことを愛してますよ!

――もう平本蓮みたいに顔に彫りましょう!

笹原 まぁ斉藤さんの言わんとしていることはわかりますよ。MMAはあくまで人間性を剥き出しにする装置で、見せたいものはMMAという競技そのものよりも、そこから立ち上ってくる人間性だってことですよね。

――ボクの言いたいことをわかりやすく説明してくれてありがとうございます(笑)

笹原 でも、こういうこと言うと「笹原は競技性をないがしろにしている!」とか言ってくるおタワケな方がいるんですけど、そういう話じゃないですからね。説明するのが面倒くさいので、しませんけど。

――RIZINはそういうところ誤解されがちですよね。その誤解が熱気を生んでるところがあるんですけど(笑)。

笹原 でも、これは好みの問題だと思います。人間性の中で競技性を見せるのか、それとも競技性の中で人間性を見せるのか。ボクらは単純に後者が好きだってことだけです。

――変な話、相撲でもいいんでしょうね。「変な話」といって、ホントに相撲をやりかねないのがRIZINなんですが(笑)。

笹原 スダリオ剛vs貴賢神の兄弟相撲をやろうと思えばできますからね(笑)。ボブ・サップvs大砂嵐の相撲ルールとか。なんか面白そう! それ次のLANDMARKでやりますか!?

――U-NEXTのサーバーダウンじゃなくて、RIZINの人気がどん底まで落ちますよ! たとえば平本選手がRIZINでキックルールに専念して戦っていたら、ここまで話題性が広がったかといえば……。

笹原 無理でしょうね。でも、これはべつにキックという競技が人間性が剥き出しにならないと言っているワケじゃないですよ。作り手である我々が、MMAでこそ平本蓮の人間性が剥き出しになるって、心から信じて作っているからそうなったというだけの話ですから。

――先ほどのMMAという競技の出自だけがそうさせるんじゃなくて、作り手がその装置作りにどこまで命を吹き込めるか、ってことですよね。

笹原 川尻達也戦のときに北岡悟選手が「負けて死ぬことはない。でも、負ければ全存在が否定されるんです」って言ってるんですよ。で、続けて「そうじゃなきゃ格闘技じゃないでしょ」って、あの怖い顔で話しているんですよね(笑)。

――2018年の『平成最後のやれんのか!』のときですよね。北岡ちゃんのあの顔で言われたら、とりあえず頷いちゃいますよ(笑)。

笹原 でもこれって言ってしまえば過剰なまでの思い込みじゃないですか。「格闘技はスポーツですよ」って言うことだってできるんですけど、ボクらはMMAこそ「負ければ全存在が否定されるものだ」と言わずには、思わずにはいられない。そう信じて作り上げている舞台に平本蓮を立たせたら、その人間性が剥き出しになったってことだと思います。

――この試合の感想をツイートする格闘家、関係者の人間もむき出しになってますよね。

笹原 ホントにすごいですよね。カルピスを原液のまま飲まされる感じで(笑)。

――ちなみにマサ斎藤さんは「カルピスを原液で飲む」という豪快な噂がありましたが、ちゃんと水で割って飲むそうです(笑)。やっぱりSNSも薄めるべきなんですよ。

笹原 みんな感想が濃いんですよ。久田将義さんというアングラ系のマスコミの方がいるんですけど。TABLOっていうネットニュースの編集長をされている方です。

――はい、存じてます。

笹原 久田さんはオラオラした選手というか、アンダーグラウンド系の選手が好きなんですよ。以前も朝倉兄弟をインタビューしたり、今回も試合前に平本選手の取材をしたりしてるんですね。その久田さんから夜中の2時1分にですね、「いま冷静なのですが、世間が寝静まった頃、山の中で『チクショ―!!!!』と叫んでこようと思うのですが、良いでしょうか」とLINEが来まして(笑)。

――熱い!!

笹原 はい。狂っていて最高なんですけど(笑)。久田さんは平本選手が負けてホンットに悔しかったんでしょうね。でも、ツイッターでは冷静に「鈴木vs平本戦後のツイートを各格闘家が、していますが内容によって人格や人となりが出ちゃっている気がします。健全な肉体に健全な精神は宿りませんね。ドミネーター選手のツイートが一番、真っ当でありプロフェッショナル」「もう少しハッキリ言うと、格闘家の本性が見えてきてしまった、平本蓮選手vs鈴木千裕選手戦後の各プロ選手のツイート。便乗、揶揄などの醜い類とドミネーター選手や梅野選手の大人の対応や選手ファーストの心が見える清々しいものと二分。前者は嫉妬も混じっているのか、嫌なものを見てしまった感」と。

――ボクも似たようなツイートをしてますね。「平本蓮の敗北がトリガーとなり、選手や関係者の本性が剥き出しになってSNSに溢れかえっている」

笹原 久田さんは「嫌なものを見てしまった感」と批判していますけど、斉藤さんの場合は「これは面白くなってきたぞ~」という野次馬精神が透けて見えますよ!

――ハハハハハハ! いやでも、ここまで周囲が突き動かされるってすごい現象ですよね。

笹原 みんな格闘家・平本蓮に何か言わずにはいられないわけですもんね。勝とうが負けようが、平本連に夢中。彼のSNSの使い方のうまさももちろんあるんでしょうけど、今回の試合だって平本蓮が全人生をベットして戦っているからこそ、それが良くも悪くも跳ね返ってくるんだと思います。

――今回最高だったポイントのひとつは、鈴木千裕選手の勝利者インタビューが終わるまで待って、平本選手がマイクアピールしたことだと思ってまして。デビュー戦で敗れてもなお、強気な発言を繰り返してきた平本蓮がリングに残って泣いて「負けました。でも、負けてません」と発したことで、LANDMARKの幕が降りた感じがします。

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笹原 泣いてるのに「泣いてねえぞ!」って胸を張るのも最高ですし、最初から最後まで平本蓮という人間をさらけだしていましたからね。

――試合後に敗者もインタビューすることはあらかじめ決まってたんですか?

笹原 メインだけは勝者も敗者もインタビューする予定だったんです。もちろん試合内容によっては勝者だけも想定していました。でも、ボクら運営が選手にそういったお願いをしていても、選手本人が控室に帰ろうと思えば帰れますからね。選手からすれば、負けたのにリングに残りたくないのが本心でしょうし。

――敗者インタビューはUFCではよくある光景ですけど、日本では定着してないですね。

笹原 ボクはPRIDEのノゲイラvsミルコを思い出しましたね。

――2003年の東京ドームのPRIDEミドル級GP2003でのヘビー級王座決定戦。平本選手がまだ5歳の頃ですよ。

吉成名高vs榊原信行、クレベルvs憂流迦、ONEの青木真也vs秋山成勲まで語る1万字インタビューはまだまだ続く……
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