RIZIN LANDMARKのMMAデビューをKO勝ちで飾った“怪物くん”鈴木博昭インタビュー。ONE離脱後、怪物くんはなぜMMAにチャレンジしたのか(聞き手/松下ミワ)
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――RIZIN LANDMARKで行われた奥田啓介戦は、鈴木選手にとってじつに2年ぶりの試合だったんですね。
――奥田選手との対戦はRIZIN.30のリング上で発表されましたが、あのときからエンジンかかってましたもんね。
鈴木 自分としては普通でいたつもりだったんですけど……、そこは漏れちゃってたのかもしれないですねえ。
鈴木 ハハハハハ! 「また、ここに戻ってこれた」というのもあるし、もともとMMAをやりたかったのもあるし。なおかつ、その舞台がRIZINで凄く反響をもらえていたという燃える要因がいっぱいあったのでね。「俺はこれをやりたくて生きてるんだ!」という思いが爆発しちゃったかもしれないですねえ(笑)。
鈴木 そうですよね(笑)。まあ、選手によって性格は違いますから。それに、「脳みそが判断する」というのは、「脳みそが瞬時に判断できるまで作戦を擦り込んでいる」ということでもあるんですよ。
――ああ、なるほど! 単純なインスピレーションというわけではないんですね。
鈴木 オートマチックに身体が動くまで意識して練習して、その結果、考えなくても身体が動くということですから。目新しいものって、意外と簡単には染み込むもんじゃないんですよね。同じ仕事でも、1週間目、1年目、10年目の人ではまったく違う仕事になるのと一緒で。だから、緻密な作戦という作戦は、あの試合の中にもいっぱいあるんです。
――それ、もう少し具体的に教えてもらえますか?
鈴木 まあ、奥田選手はレスラーということで、もちろん一番はシンプルにタックルへの警戒ですよね。だから、それに対する対策をしっかりと擦り込んで、そこからどう仕留めるかを逆算して考えたという。つまり、警戒、対策、フィニッシュを計算して一直線に結んだら、出来上がるのはあの試合なのかな、と。
――タックルを切る練習というのも、練習相手がサトシやクレベルですもんね。
鈴木 一線級どころか、超級ですから(笑)。そこは、彼らが一流だから絡んでいるという意識はまったくなくて。ボクが普段から言ってるのは、「いまいる仲間たちとやっていく」ということなんでね。仲間が増えたり減ったりすることもありますけど、どんな状況であれ、その仲間と一緒にやるのがボクのポリシーだから。ただ、いま持っている手札がちょっと特別すぎたという(笑)。
――たしかに(笑)。試合展開としては、最初に奥田選手が詰めてきたとき、鈴木選手のヤバめのヒザが入ったシーンがありました。
鈴木 まあ、試合は全部が計算どおりにいくことはないんですけど、あれはタックルを想定しての動きでしたね。
――さらに、奥田選手をコーナーに追い詰めて打撃でたたみ掛けるシーンがありましたが、あそこもパンチとヒザとの絶妙なコンビネーションでしたよね。
――となると、想定していた中でタックルは対処できたということですね。
鈴木 ただ、ボクはぜひ言いたいと思っていたことが一つあって。最初に対戦相手がプロレスラーと言われたときに「どんな選手かわからないなあ」と思っていたんですけど、フタを開けてみたら奥田選手は完全な総合格闘家だったな、と。結果だけを見ると、すぐに試合を終わらせたように見えますけど、ボクは奥田選手は強かったと思っています。「プロレスラーだから」というのでイメージを持つ人もおったんですけど、そこは声を大にして言いたい。あんまりナメたらあかんぞ、と。
――試合前後のパフォーマンスに惑わされがちですが、奥田選手もちゃんと準備をしてきていた。
鈴木 タックル、打撃のフェイント、目線、身体の動き……。だから、最初はもっとムチャクチャに「オラァ~~~」と向かってくるかなとも思っていたんですけど、確実にボクに勝つためのことをやってきてるなと感じました。だから「試合時間が短いから奥田選手は弱い」とか、そんなんではないという。「なんか思ったり手応えなかったわ」という感覚は全然ないし。ただ、ボクの攻撃が強かったから終わったんじゃないの? と(笑)。
――ハハハハハ! さすがです(笑)。というか、単純にMMAルールはどうでした?
鈴木 やっぱりね、MMAは充実感が抜群にありますねえ。
――おお! それって、キックルールとは何が違ったんでしょう?
鈴木 やってはいけないことが少ない、そこですよね。もちろんルールはあるんですけど、ボクのRIZINルールに対する見解としては、脊髄攻撃、目つぶし、金的が反則で、それ以外なら何やってもいいんでしょ? と。だから、いろんな展開が生まれるんですよ。ストライキング、テイクダウン、寝技というのがセオリーだと思うんですけど、ボクの中では「反則しなけりゃ何やってもいい」という。……言い方は悪いですけどね(苦笑)。
――つまり、鈴木選手の狂気性がより発動されやすいルールなんですかね。
鈴木 もちろんボク自身への危険もあるし、大ケガをする可能性もありますけど。でも、グラウンドのヒジ、ヒザ、サッカーボールキック、なんでもOKと言われたら、「え! なんでもやっていいの!」と(笑)。
鈴木 フフフフ……、そこはあんまりツッコまんといてください(笑)。
――つまり、鈴木選手にも路上の伝説があるということなんでしょうか(笑)。
鈴木 いやいやいや、路上の伝説というほどでもないですけど……まあ、路上の伝説にもいろいろあるじゃないですか。ボクはべつにヤンキーでもないし、めちゃくちゃ喧嘩をしていたとかそういうのではないんでね。ただ、そこで注目されるような状態をつくりたくなかったから、これまであんまり言ってこなかったですけど……まあ、いろいろありますわな(笑)。
――ハハハハハ! あと、凄くいい勝ち方して最後のマイクも「また会おう! フハハハハハ!」と怪物くんっぽく締めたのに、「……では、お話をうかがいましょう!」と非常に間の悪い実況席インタビューが始まるシーンもあって(笑)。
鈴木 いやあ、完全にボクをコントにしてくれましたよねえ。「まだあんのかーい!」と(苦笑)。でも、ボクは逆に「そういうオチをつくってくれてありがとう!」と言いたいです。なんか急に笑いが起きたような、なんなら座っていたお客さんがズッコケるレベルでしたから。
――それも含めて、今回はいいMMAデビュー戦だったんですかね。
鈴木 いや、本当にいい時間でしたよ!
――それにしても、今回のRIZIN参戦はいつぐらいにお話が来ていたんですか?
鈴木 ええっと、いつなんだろう? まあ、ボクはもちろんずっとONEとの契約があって、ONEでチャンピオンになることを目標にやってた人間なんでね。ただ、どうしてもコロナの状況で海外に……行ったとしても「隔離でまた待つのか」とかそういう感じだったんで。それで悩んでいるときに、クレベルたちの東京ドームでの試合があって。やっぱりあれで鳥肌が立つようなものを感じたし、「いいなあ。そういえば俺はMMAをやりたかったんだよなあ」と。
鈴木 そんなときに、朝倉兄弟のマネジャーの宮島(翔)くんが……まあ、もともと宮島くんとは前にそんな話をしていたことがあったんですよ。ボクがONEに出始める前、ちょうど朝倉くんたちがRIZINに出始める頃に、「鈴木さん、RIZINで一緒にやりましょうよ」と。
――朝倉兄弟がRIZINに出始めた頃というと3~4年前ですよね。
鈴木 あれは2018年の頃ですかね。でも、いろいろあってボクはもう世界で勝負かけようと思ってたし、「退路なんかねえんだよ」ということで、英語が飛び交うような周りに誰も知り合いがいない状況で実力だけでのし上がっていくのに魅力を感じていて。だから、今回はそれが巡り巡っていろんな状況がリンクしたという状態なんですけども。それもあって、彼にマネジメントを任せてRIZINに上がったということなんです。
――宮島さんは朝倉兄弟のマネジャーだから、クレベルや(アラン・ヒロ・)ハマニハと練習している鈴木選手がマネジメントを任せるというのは不思議な部分でもあったんですけど、じつは以前からそういうつながりがあったわけなんですね。
鈴木 宮島くんとは、クレベルやサトシたちとの前に関係性があったから。まあ、彼らとは独立する前のジムでもつながりはあったんですけど、当時はコーチという立場でもなかったし。だから「なんでボンサイ側の人間が、朝倉兄弟のマネジャーと契約するの?」とよく言われるんですけど、個人的なつながりの中でのことですね。まあ、地元が一緒なのもありますし。
――……ええっと、そこは蒸し返すようで申し訳ないんですけど、宮島さんもかなり昔は“やんちゃ”だったという話で。つまり、そういう中でのつながりだったんでしょう?(笑)。
鈴木 ああ、彼は昔そういう感じでしたけど、そのつながりではないですね。ボクがいた格闘技ジムに彼が来て、というつながりです。それに、やんちゃのジャンルでいうと、宮島くんとボクはちょっと違いますから。
――いや、“やんちゃ”にジャンルがあるとは初めて知りました(笑)。でも、ONEで試合ができなかったのは、やはりコロナの影響が大きかった、と。
鈴木 コロナで難しくなったのと……、と言っても、ボクはオファーはもらっていたんですよ。言っちゃえば2020年は試合のオファーは4回はもらってますから。
鈴木 なので、「ONEが鈴木博昭を飼い殺しにした」というのは違っていて。ボクはONEに対してイヤな思いは一切なくて、感謝しかないんですよ。2020年は、まず3月にオファーもらったんですけど、そのときはジムの子たちの試合が9週連続であって。
――9週連続! それは長としては自分の試合はできないですね……。<1万字インタビューはまだまだ続く>
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