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衝撃プロデビューを果たした中村倫也が所属するLDH martial arts。同チームを率いる高谷裕之
LDH martial arts代表取締役CEO)の1万字インタビュー。LDHという日本屈指のエンターテイメント企業が作り出す格闘技界の未来とは(聞き手/松下ミワ)


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――
髙谷さんが監修したFIGHTER BATTLE AUDITION、そしてその模様に密着し配信したABEMAの『格闘DREAMRS』両社がタッグを組んで立ち上げたこのプロジェクトでLDH martial arts所属を勝ち取った中村倫也選手が、7月の修斗でプロデビューを果たしました。2RにハイキックでKOするという衝撃の試合でしたね!

髙谷 倫也はレスリング出身だから、まさかハイキックで倒すとは思ってなかったんで驚きましたね。というか、逆にこっちがめちゃくちゃ緊張しました(笑)。

――戦っている本人より(笑)。

髙谷 ボクも指導者1年生ですから、あれだけの素材をちゃんと育てないといけないというプレッシャーもあるし……でも、ビックリしますよね? レスラーがハイキックで勝ったんだから。みんなも「ビックリした」と言ってました。

――
「みんな」というのは、LDHの皆さんのことですね。

髙谷
 そう、みんなリアルタイムで観てて。HIROさん(LDH JAPAN チーフクリエイティヴオフィサー)もライブで観てたので、試合後には速攻で連絡が来ました。

――
HIROさんからも! となると、結果として凄く手応えがあったというか。

髙谷
 今回は本当に最高の勝ち方だったと思います。

――
今回のマッチメイクは髙谷さんがGOサインを出したんですか?

髙谷
 ああ、そうです。というか、みんなで考えて決めました。

――
対戦相手の論田愛空隆選手は、岡田遼選手や魚井フルスイング選手とも戦ったことのある選手です。キャリアのある選手との対戦をOKするということは、デビュー戦ながら倫也選手の実力に相当、自信があったということですよね?

髙谷 キャリアの差があるのでドキドキはしましたけど、自信はありました。ただ、倫也もデビュー戦だったので、そんなめちゃくちゃなカードは組みたくなかったんですよ。たとえば、太田忍選手のデビュー戦は所(英男)くんが相手でしたよね。きちんと考えたときに「ちょっと無理じゃない?」というような選手の立場に立った際、愛のないカードは組みたくなかったんで。

――
注目されている選手だからこそデビュー戦のマッチメイクは難しいですよね。

髙谷
 正直「デビュー戦なのに」という感じです(苦笑)。デビュー戦なんて普通は「この相手でどうですか?」「はい、お願いします」って簡単に決まるんですよ。自信はあったとはいえ勝ってホッとしたというか。

――その倫也選手の勝利で、さらにLDH FIGHTER BATTLE AUDITIONそして『格闘DREAMRS』に箔がついたかたちですが、今回はこの企画の発端からうかがいたいなと。まず、髙谷さんは2019年の斎藤裕戦を最後に引退されましたが、その後、ご自身のライフプランについてはどう考えていたんですか?

髙谷
 引退する数年前から地元のジム『FIGHT FARM』と、ここ『EXFIGHT』をオープンしていたんですよね。ボク自身はすぐに指導者として切り替えられたというか。

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ケージも常駐され環境はバツクンのEXFIGHT


――そんな中でこのFIGHTER BATTLE AUDITIONが持ち上がった、と。

髙谷 2017年にLDH martial artsを設立した際、すでに将来格闘技イベントを開催することを目標の1つに設定していました。そこに向けて、まずは『EXFIGHT』を開業し、格闘家を育成する拠点を設けつつ、格闘技の裾野を広げる活動を開始しました。サプリメントの開発、販売などもさまざまな事業を展開しつつもイベント開催につなげられるいい選手を発掘するためにもFIGHTER BATTLE AUDITIONを実施するタイミングを図っていました。このプロジェクトを盛り上げるためにも選考のリアルを追っかけて番組として世の中に出せる。そんなパートナーさんを探すべく、ABEMAさんにこの話を持ちかけたところ、プロジェクトに賛同していただいた。という感じです。

――
となると、LDHが会社として取り組むプロジェクトだったわけですね。

髙谷
 martial artsという会社で取り組むメイン事業です! ですが、事の発端はHIROさんですね。HIROさんが格闘技が好きというのもありますし、ボクにこういう場所を用意してくれたということもあります。ボクも新人発掘とかそういうことをやりたかったんで。そういう流れで「いい選手を集めよう」という話になりました。HIROさんはボクの引退後のことも考えてくれてたと思うんで、その流れを自然に持ってきてくれたというか。

――
それができるHIROさんも凄いですが、HIROさんから信頼を勝ち取っている髙谷さんも凄いです!

髙谷
 まあ、もう15年以上はLDHに所属しているので。

――
若い選手を発掘したいというのは、髙谷さん自身も格闘技に救われたからという思いがあるからですか?

髙谷
 ボクは本当に格闘技に人生をよくしてもらったし、ある意味で格闘技しかやってこなかったんで。その恩返しの意味もありますね。

――
先日、スカパーの番組『DREAMで逢えたら』で所(英男)選手と仲良く思い出話をされていた姿が印象的で。

髙谷
 ホントですか?(笑)。所くんとは同い年なんでね。

――髙谷さんがうれしそうに当時の試合を振り返っているのを見て、あらためて充実した選手生活だったんだなと感じました。

髙谷
 ああ、ボクは100やりきったと言えると思います。まあ、やり過ぎたぐらいやったんじゃないかなって(笑)。

――
お父さんとの微妙な関係性もお話されていましたよね。

髙谷
 結局、親父は1試合しかボクの試合は観にきてないですね。いまは仲はいいんですけど、そんなに「子供、子供」というタイプでもなかったし。その1試合は、タイトルマッチのビビアーノ・フェルナンデスとの試合だったと思います。番組から「観にきてくれ」という感じだったんで、「しょうがねえな」みたいな。……だから、“言われて”ですよ(苦笑)。

――
ハハハハハ! そういうことで人生が好転していくのを体感されて。

髙谷
 それは、むちゃくちゃ感じてました。格闘技とメディアの力を凄く感じましたね。悪かったときは、親戚中の鼻つまみものみたいな感じだったのが、テレビに出た瞬間に突然、周りの態度が180度変わって。凄く応援してくれたり「チケット手に入らないの?」とか言われたり(苦笑)。

――
周囲の態度が変わったときは内心どう思われていたんですか?

髙谷
 ……テレビって凄いな、と(笑)。

――
ハハハハハ!

髙谷
 それは、ホントに思いましたね。でも「なんだよ……」とも思いましたよ。「あんなに態度、悪かったじゃねえかよ。俺は前と同じだからな!」って。

――
まあ、そう思いたくもなりますよねえ。

髙谷
 でも、格闘技って特殊な世界だし、自分が見本になるのかどうかもわからないですけど、周りが喜んでくれたり、「自分も頑張ろう」という気持ちになってもらえたりすると、試合を通して「何か伝わっているのかな」とは思いました。

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――
今回のFIGHTER BATTLE AUDITIONと『格闘DREAMRS』は、そういう髙谷さんの経験が活きてくるというか。

髙谷
 人生が180度変わったんでね。たとえば、倫也なんかは小さい頃からずっと格闘技で積み上げているじゃないですか。でも、ボクは全然違うところから来たんで、その差が凄くわかるんですよ。

――
そういう経験もあるから、いま燻っている子たちも格闘技で救いたい、と。

髙谷
 そういう気持ちはあります。ただ、“やんちゃな子”はあんまり応募してこなかったんですよ。

――
あ、そうなんですか?(笑)。

髙谷
 何人かはいたんですけど、合宿とかでも生き残れなかったです。まあ、喧嘩自慢みたいなのはたいして練習してないじゃないですか。準備不足で合宿でケガしちゃったり、練習についてこれなかったり。

――
今回のオーディションは、最初に200人ぐらい応募があったと聞きました。

髙谷
 まあ、冷やかしも含めてだと思いますけど。基本、こういうオーディションだと新宿のホストとかがけっこう来るらしいんですよね。

――
そ、そうなんですか?(笑)。

髙谷
 実際に、そういうのもチョロチョロいながら……。でも、本質的にはLDHのオーディションだったんで、そこまで変な応募はなかったですね。ボクや岡見(勇信)とか、ちゃんと格闘技をやってた人間が募集をしていたというのもあると思うんですけど。

――
ただ、LDHのオーディションとなると、格闘技とはちょっと人種が違う人も来たんじゃないかなあ、と。

髙谷
 ああ、それもちょこっとありましたよ。「歌も歌えます!」みたいな(笑)。

――
ハハハハハ! いや、強くて歌えたら最高です!

髙谷
 「両方達成して、唯一無二になりたいです」みたいなことを言ってるヤツがいたんですけど、その彼は強くなかったです(苦笑)。

――
あらら(笑)。今回、アーティストの皆さんも選考に入られていて、独自の視点で選んでいくみたいな雰囲気を感じたんですが、髙谷さん自身はどういう思いで選考に臨まれたんですか?

髙谷
 ボクたちは本当に強さだけを見て選んでいきました。ただ、アーティストの人たちはボクたちの見えないところとか、LDHの姿勢みたいなところとかも教えてあげながら選びつつ。ある意味、彼らは“持ってる人”じゃないですか。そういう“持ってる人”というのは第六感的にわかる部分もあって。「いいですね、彼」「スター性を感じますね」という意見を聞いたりしてました。

――
つまり、強さだけじゃなく、華やかさみたいなものも基準になって。

髙谷
 そういう意見も聞きましたね。ただ、格闘技に関しては「ボクらより髙谷さんたちのほうがわかりますよね。だからそんなに偉そうなことは言いたくないです」と任せてくれて。

――
じゃあ、華はあるけど強くない人は受からなかったということですか?

髙谷
 もちろんです。でも、まあ鈴木崇矢みたいに、華があって実力も証明した子もいましたし。

――
選考では、岡見さんが「みんなが純粋に『UFCを目指したい』と言ってくれたのがうれしかった」と言われていましたよね。

髙谷
 ボクの中ではそんなに驚きじゃなかったんですけどね。格闘技で一番を目指すならUFCだろうと思ってたんで、「みんな、そう言うだろうな」と。でも、岡見はメディアのイメージとかもあるから「きっとRIZINに出たいと言うんだろうな」と思っていたみたいで。だから、驚いたみたいです。

――
倫也選手も、経験のある人ほど「UFCを目指す」と言えなくなっているという話をしていて。

髙谷
 まあ、ボクらも「UFCを目指す選手、世界を目指せる選手を発掘する」と言ってきたんで、それが言いやすい環境だったというのはあるかもしれないですね。

――
これ、放送自体は2カ月ぐらいだったと思うんですけど、収録期間的はどのぐらいだったんですか? 

髙谷
 半年ぐらいです。ただ、自分が通っているジムで練習しながら合宿や大会に来たりしていた子がいたんで、そういう子はあんまり残らなかったですね。どういう練習していたのかわからなかったというか。だから、セカンドシーズンからは「合宿以降はちゃんと来れない人はダメです」ということにしようかな、と。格闘技なんで大怪我してしまう可能性もあるじゃないですか。そこに責任を持てる環境にしていくという感じですね。

――
合宿や練習試合が進む中で撮影もあるわけですが、そこは違和感なく受け入れられました?

髙谷
 そこは全然。というか、やっぱり番組で取り上げていただかないとね。みんな、新しい格闘技ファン層を取り込みたいという考えだったんで、撮影が大変とかはひとつも感じなかったですね。

――
途中で那須川天心選手が来たり、平本蓮選手の弟さんが来たりしましたけど、そういうのも自然な流れというか。

髙谷
 天心くんもトップ選手ですし、来てくれるならありがたいですよ。まあ、天心くんのお父さんも以前からちょこちょこ話す仲だったりするんでね。だから、そんなに違和感はなく「ありがとうございます」という感じでした。

――
「メディアの力は大きい」というのをご自身の体験で知っているから、メディアと一緒に進めることが自然だった、と。

髙谷
 そうですね、盛り上げに力を貸してくれるなんてありがたいですから。

――
そんな中、プロジェクトを通して一番印象的だったことはなんでした?

髙谷
 やっぱり、合宿が一番でした。あれは、もう過酷だったんで(笑)。

――
いや、あの合宿はヤバイですよねえ……いったい誰があんな厳しいメニューを考えたんですか?

髙谷
 ボクと岡見と、トレーナー陣みんなで考えました。

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世界と和術慧舟會を知る岡見勇信もサポート

――
それは、より過酷にしようと?

髙谷
 というか、ボクたちがそういう過酷なことを和術慧舟會の合宿でやってたんでね。

――
慧舟會の合宿は本当に凄かったんですよね……。

髙谷
 慧舟會の合宿だと腕立て2000回とかやってたんですけど、「さすがにそれはやんなくていいか」となって。

――
腕立て2000回!
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