シュウ とりあえず、ONEの話からにしますか。というか、ONEの状況について日本ではどんなふうに報道されているんですか?
――毎年「巨額の負債がある」という海外報道が取り上げられ、「これはどうなるんだ!?」とみんな騒いだりはするんですけど、すっかり忘れてまた1年後に報道されたときに、また騒ぐみたいな(笑)。
シュウ なるほど(笑)。これ、格闘技ファンからすると、前にあったアフリクションやエリートXC、あるいはボードッグみたいに「潰れてしまうの?」という疑問もあると思うんですけど、ボク自身もそこまで詳しくはなかったので、この話をするために、ウォール街のファンド・マネージャーにレクチャーを受けてきました。
――そこまで! ありがとうございます(笑)。
シュウ 付け焼き刃ですが(汗)。そのファンドマネジャーにONEに関する記事も読んでもらって、公になっている財務諸表も見ていただいたところ、まあ結論から言うと短期的には「これは絶対に潰れないね」ということみたいです。
――えええ! あの赤字でも専門家から見るとセーフなんですか?
シュウ ボクも聞いたときに「え?」と思いましたよ。今回出た2019年の財務諸表からすると、1年だけで101億円ぐらいの赤字を出しているということなので、ボクらみたいな庶民の感覚ですとアウトと思いますよね。しかも、その赤字はどんどん大きくなっているし。ただ、投資家から見ると感覚が違うようで、まず投資家はリターン率を期待しますよと。いまの状態ですと、そのリターン率はマイナス160パーセントぐらいらしいので、「マイナス160パーセントなんて、どう考えてもマズいでしょ!」と思うんですが、その次に彼らが見るのは負債比率という部分らしいんです。
――その負債比率というのはどう見ればいいんでしょう?
シュウ わかりやすいように庶民感覚で話しますけど(笑)、要はいま持っているお金の中で、毎月の家賃だとか電気代とかいろいろ払っていけるのか? ということで。そうなるとONEは今のペース、規模で大会を継続できるのか?という観点で見たときに「ONEには、それを6年ぶん払うだけの金はある」というそうなんです。
――ああ、まだそんな余裕が。
シュウ で、去年の途中ぐらいに追加で7000万ドルぐらい投資を得たというプレスリリースを出しましたよね。それと同時に、20パーセントぐらい人材を切ったという発表もありました。あれ、ボクが聞いた話によると、20パーセントというのはフルタイムの人であって、フリーランスも含めると50パーセントぐらい切られているらしいんですよ。
――そんなにカットしてたんですか!
シュウ そうすると、投資家に対しては「ちゃんと対応していますよ」と。それプラス、利益が一応倍近く上がっているので、スタートアップの会社としてはまだ大丈夫という感じらしいです。要は、まだ向こう2~3年は何かしらV字回復できるプランがあって、それを説明する材料も何かしらあるはずだから、投資家を納得させられるだろう、と。
――でも、そこが肝心ですよね? V字回復させる策が何なのか……。
シュウ その策に関しては、「逆にどうなんだ?」とボクが聞かれたんですけどね(笑)。なぜ聞かれたかというと、このファンド・マネージャーも、投資家の方々も格闘技業界に詳しいわけではないですから。だから、前例や競争相手を見て、それと比較するんですって。そうすると、ベラトールでさえ10年ぐらいずっと赤字だったけど、DAZNとの契約でやっと黒字になりました。PFLもずっと赤字で、つい一昨日のことですけど、また7500万ドルぐらいの投資を受けたと発表していて。そういうのを見ても投資家からするとまだまだONEにはポテンシャルはあるんじゃないかということみたいです。ボクが思うにONEがV字回復するポイントは2つだと思うんですよね。一つ目は、リアリティ番組。前例を見ると、UFCだって赤字を回復したのはリアリティ番組ですから。
――UFCはTUFの人気で盛り返しました。
シュウ で、いまONEは『The Apprentice(アプレンティス)』というリアリティ番組をやろうとしているじゃないですか。
――たしかに、あれもリアリティ番組ですけど……あれはチャトリが主役っぽいですよねえ。
シュウ まあ、その話はあとにするとして(笑)。で、2つ目、やっぱりアメリカのテレビ会社、または配信会社との契約ですよね。これを成立させれば、年間何十億円、何百億円と入るかもしれないのでバーンと回復できるじゃないですか。そうなると、これぐらいの赤字すぐに回復できますから。で、そのファンド・マネジャーが指摘するには、2019年の赤字がパーっと増えた中でも利益は上がっている、と。ただ、利益の160%ぐらいのお金をONEはマーケティングだけに使っているんですよ。だから「これは異常だよ」と。ちなみにUFCは利益の10%ぐらいしかマーケティングに使っていないんで、赤字を流しながら、利益の160%をマーケティングに使うのはちょっと「異常なことで」これで「回復したら、ある意味奇跡というかすごい」とも、言ってました。
――ああ、逆に。
シュウ ファンド・マネジャー曰く「TNTやテレビ東京なんかは、全部枠買いして放送したんだろう」と。そうやってマーケティングにお金を使って取りにいくという戦法に出ているので、まだまだ途中段階だし、投資家には充分に説明できるはずだと言っていましたね。それプラス、ONEの事業というのはシンガポール政府も関わっているじゃないですか。政府が株を持っているから。で、シンガポールの政府というのは、結局独裁経済みたいな感覚があって、ちょっと国民を犠牲にしても国家を発展させようみたいな考えがあるので、そんなに簡単にダメになったりしないよ、と。そういう考え方みたいです。
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コメント
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K‐1の商標はいまだにキムゴンイル氏が持っているのか…。