多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナー。今回のテーマは平本蓮のアメリカ修行先5つの候補はこれだ!!です!!(この記事はニコ生配信されたものを編集したものです)



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シュウさんがマネジメントしている平本選手を取り巻く状況はどういう感じなんでしょう?

シュウ 順序正しく説明しますと、まず平本くんが海外に練習に行くという話が注目されていますが、アメリカに3ヵ月以上行くんだったらビザが必要になるんですね。それにコロナ禍で渡航が限られてくる中、実際問題アメリカに行くのは少し先になると思われるので、そのあいだ、ちゃんと日本で基礎づくりをやらないといけないと考えているところです。その一方で、じゃあアメリカで練習するのはどのチームがいいのか。ボクは5つ候補を挙げて、いい点、そうでない点、彼に説明して考えている最中なんですよね。

――
絶賛選考中なんですね。

シュウ
 まあ、こっちで「ここがいい」と決めても、そのチームと交渉して条件を詰めないといけないので、合意に達さない場合もあるんですけど。

――
受け入れ先としても何か条件があるということですか?

シュウ
 場所によってはありますよ。簡単に言ってしまえば、たとえばファイターズハウスが満員だから新しい人は入れられないとか。

――
ああ、そういう物理的な理由も含めて。

シュウ
 まあ、堀口恭司選手が朝倉海選手に勝っちゃったことによって、皆さん「アメリカに行かなくちゃダメだ!」という雰囲気になってますけど、そんなに簡単にアメリカに行けるわけじゃないし、行ったとしても強くなれるわけじゃないんですよ。お金もかかりますしね。なので、いまから言うことは、ボクが平本選手に説明したことと同じ内容です。これを聞いたら、皆さん「なるほど」と納得していただけるのではないかと。まず、一番はじめに気にしなくちゃいけないのは、コーチとの相性です。

――ああ、毎日練習するわけですし、参謀になるわけですから相性は大事ですね。

シュウ
 コーチがどれだけモチベーションを持って選手を見てくれるか。コーチだって人間だから、やっぱり平本くんとなんとなく共通するものがあるコーチのほうがいいと、ボクは思うんですよ。そうすると、たとえばキックボクシングをやったことがあるコーチ、またはK-1に出ていたコーチなんかだったら特別な関係性が生まれてくると思うんですよね。もともとアデサニヤ(UFCミドル級王者)のところに行かせようと思っていたのは、あそこのコーチはK-1に出たことあるからなんです。K-1ヨーロッパ大会ですけどね。

――つまり、アデサニヤが目当てではなく、アデサニヤのコーチに教わることがいいんじゃないか、と。

シュウ
 だって、スパーリングパートナーとしてアデサニヤはデカすぎますよ(笑)。もちろん一緒にいて学べることはたくさんありますけどね。練習に対する姿勢とか生活態度とか、やっぱり世界チャンピオンから学べることはたくさんありますから。それにあそこのチームにはフェザーのチャンピオンのヴォルカノフスキーやこの前チャンドラーに負けちゃいましたけどフッカーもいますから、階級的にも合う選手もたくさんいますし。でも、まずはやっぱりコーチだと思うんです。ストライカーを現代MMAファイターに変えていくのがうまいコーチ。これもやっぱり条件だと思うんですよ。ポイントは、平本くんをどういうファイターに育てるか、その完成形をイメージできるコーチで、それに導けるコーチですよね。

――
コーチがどういうビジョンを持って選手を育てるかが重要ということですね。

シュウ
 絶対的に平本くんが目指さなくちゃいけないのは「倒されないストライカー」ですよ。倒されたら負けと思うぐらいの気持ちでやらないといけないですから。そうするとレスリングとMMAスクランブルをしっかり強化できる環境がいい。これプラス、練習相手のタイプ、スタイル、バリエーション、たとえばフィジカルおばけ、突進型タイプ、レスリング系とか、階級が近くてバラエティに富んだ選手がいっぱいいると練習が充実しますよね。

――選手が充実していると、いろんな練習ができそうです。

シュウ
 そして、やっぱりお金がかかりますから、比較的住居にかかるお金が安いところに行ったほうがいいですよね。田舎で、練習以外に何もすることがないようなところに行けば、さらに集中できるとボクは思ってます。

――
アメリカ行きってそこがポイントだったりしますね。

シュウ
 で、皆さん意外に気づいてないと思うんですけど、「メガジム、メガジム」と言っても、ATTやAKAの選手だってほかのジムに出稽古に行ったりするんですよ。つまり、大切なのがそのメガジムの周りにどれだけMMAのジムがあるか。そのネットワークの協力体制がどれだけできているか。これが意外と重要なのは、対戦相手によってそのネットワーク内から練習相手やコーチを派遣してもらえる可能性が増えますから。

――
はー、そこまで考えなきゃいけないんですね。ちなみに、アメリカ修行というのはだいたいどれくらいの予算を見込めばいいんですか?

シュウ
 たとえば、ちゃんとビザを取るとなると、一番いいのはとれば5年ぐらい有効で、アメリカで自由に仕事ができるO-1ビザを取るなんですけど、申請料や弁護士費用を考えると60万円ぐらいかかります。

――そ、そんなに!

シュウ なので、一番いいのはお試しでまず3ヵ月ぐらい行ってみることなんです。だってコーチと相性がいいかどうかわからないし、生活環境も自分に合うかわからないじゃないですか。それにコーチが平本選手を気に入ってくれるか!?というのもありますから。

――たしか堀口選手も最初はお試しでATTに行ってから……という話でしたね。

シュウ 整理すると、コーチ重視、練習相手重視、環境重視、それにかかる費用をいろいろ考えなければいけない。それを考慮して、ボクが候補として挙げるまず一つ目は、コロラド州にあるエレベーション・ファイトチームです。ジャスティン・ゲイジー、コーリー・サンドヘイゲン、ニール・マグニー、ドリュー・ドーバー、ヘビーでもアリスター・オーフレイムとか、カーティス・ブレイズとかがいるところですけども。

――錚々たるメンツですね!

シュウ そこはグラップリングコーチが2人、ブラジリアン柔術コーチが1人、レスリングコーチが1人、打撃コーチが3人いるんです。で、なぜボクがここを推すかというと、キーパーソンはトレバー・ウィッドマンというコーチなんです。

――それはどういう方なんですか?

シュウ トレバー・ウィッドマンはUFCの技術解説をしている方なんですけど、元ボクサーで、いまは格闘技用具のメーカーとかも経営していて。本当に気に入った選手しか見てくれないコーチなんです。たとえば、彼が見ているのはゲイジー、カマル・ウスマン、ローズ・ナマユナス、スティーペ・ミオシッチ、マグニー、昔のGSP、ここらへん全部彼が見ているんですよ。「MMAの試合でもジャブが試合を導き、ジャブが判定をもぎ取る」という名言をUFCの生中継で語って、とても話題になったコーチです。

――あ、思い出しました!

シュウ これ、余談ですけど、インヴィクタFCの現場で、小さいミットを持ってくるのをトレバーが忘れちゃって、ローズ(・ナマユナス)とアップするときになって困ってたんで、魅津希ちゃんが貸してあげたんですよ。「覚えてる?」と本人に聞いても全く覚えてないんですが(笑)。彼女が18歳のときです。あのときローズは、まだプロ3戦目で、魅津希ちゃんより下の位置での試合だったんですよね。月日の流れを感じます。

――話を聞くかぎり名伯楽なんですね。

シュウ だから、ボクは彼を口説けるんだったらコロラドかな、と。ただ、口説けるかはわからない(笑)。

――そうやってコーチのことまで調べて考えているんですね。

シュウ そうしないと、選手って求めるものが全員違いますもん。ボクが井上直樹選手をセラ・ロンゴ・ファイトチームに選んだのは、やっぱりMMAレスリングやスクランブルを強化しないといけないと思ったからですし。それに、アルジャメインやメラブ・ドバシビリがいるところなんて、最高じゃないですか。

――いや、おそれいります! では2つ目の候補をお願いします。

シュウ 2つ目の候補は、日本のファンもよく知っていデューク・ルーファスがいる、ウェスコンシン州のルーファス・スポーツです。有名なペティス兄弟やポール・フェルダーもここの所属ですね。

――ここを選んだ意図というのは?


シュウ これね、デューク・ルーファスはK-1 USAに出てますし、お兄さんのリック・ルーファスはK-1東京ドームでフランシスコ・フィリオと戦っているということで、ガチガチのストライカーをMMAに適応させるジムなんです。レベルはそれぞれですが、UFCファイターが12~13人ぐらい、ベラトールファイターも12~13人ぐらいで、ATTみたいに50~60人もいるわけじゃなく、中規模のファミリータイプのジムなので選手も入りやすいんですよ。

――その規模でファミリータイプなんですか! しかし、話を聞いているとボクが行きたくなりました(笑)。
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