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WWEが体現する「ウイズ・コロナ」 の時代のプロレス■斎藤文彦INTERVIEWS

2020/07/26 22:26 投稿

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80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト
斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 
今回のテーマは WWEが体現する「ウイズ・コロナ」 の時代のプロレスです!




Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー

■全女消滅後の女子プロレス新世界

■エンド・オブ・デケイド――プロレス界の2010年代

■新日本プロレスの“ケニー・オメガ入国妨害事件”という陰謀論

■WWEvsAEW「水曜日テレビ戦争」の見方

■WWEペイジの伝記的映画『ファイティング・ファミリー』


AEWチャンピオンベルト盗難事件

■「ミスター・プロレス」ハーリー・レイスの偉大さを知ろう


■ウルティモ・ドラゴンの偉大なる功績を再検証する


■ネット社会に出現したニュータイプAEW、その可能性

■都市伝説的試合映像ブレット・ハートvsトム・マギー、ついに発掘される
 

■レッスルマニアウィーク現地取材レポート

■平成という「アントニオ猪木が去った時代」

■アメリカの新団体AEWは脅威になりえるか

■それでもケニー・オメガは新日本プロレスに残るか


【追悼・爆弾小僧】すべてはダイナマイト・キッドから始まった


■“怪物脳”に覚醒したケニー・オメガ


■怪物デイブ・メルツァーと『レスリング・オブザーバー』


■新日本プロレスのMSG侵攻は「WWE一強独裁」に何をもたらすのか


■怪物ブロック・レスナーを通して見えてくる「プロレスの作り方」


■追悼・マサ斎藤さん……献杯はカクテル「SAITO」で


■皇帝戦士ビッグバン・ベイダーよ、永遠に

■ジャイアント馬場夫人と親友サンマルチノ、2人の死――

■ベルトに届かず…されど「世界に届いた中邑真輔」のレッスルマニアを語ろう 

■ステファニー・マクマホン、幻想と現実の境界線がない生活

■ロンダ旋風、中邑&ASUKAダブル優勝!! ロイヤルランブル1万字総括

■アメリカンドリーム、ゴールダスト、コーディ……ローデス親子それぞれの物語

■ジェリコvsケニー実現で考える「アメリカから見たプロレスの国ニッポン」


旭日双光章受賞!! 白覆面の魔王ザ・デストロイヤー

■みんなが愛した美人マネージャー、エリザベス!

■職業は世界チャンピオン! リック・フレアー!!

■怪死、自殺、大事故……呪われた鉄の爪エリック一家の悲劇

■ミスターTからメイウェザーまで! WWEをメジャー化させたセレブリティマッチ

■馬場、猪木から中邑真輔まで!「WWEと日本人プロレスラー」

■WWEの最高傑作ジ・アンダーテイカー、リングを去る

■『1984年のUWF』はサイテーの本!
■伝説のプロレス番組『ギブUPまで待てない!!』 

■「現場監督」長州力と取材拒否

■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男


■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑

■ドナルド・トランプを“怪物”にしたのはビンス・マクマホンなのか




――
WWEのPPV「ザ・ホラーショー・アット・WWE エクストリーム・ルールズ」では、また物議を醸す試合が行なわれたそうですね。

フミ 今年4月のレッスルマニアでは、アンダーテイカーvs AJ スタイルズの墓場マッチというハリウッド映画ノリのロケーション全開の試合や、 ブレイ・ワイアットとジョン・シーナが幻覚の中で過去と現在を行き来するというミステリアスな試合がありましたが、今回もその方向に振り切っていました。つまりそれはいまのWWEは 「ウイズ・コロナ」 の時代のプロレスを最も体現していると言えると思うんです。

――
たしかにWWEほどコロナの影響でプロレスのかたちを変えている団体はないですね。

フミ
 「ビフォー・コロナ」は正常な状態で、「アフター・コロナ」は現段階ではまったく見えてない世界。社会全体がまだコロナの出口が見えてない中で、WWEはそんなときでもプロレスをプロデュースしていかなければならないという宿命を背負っているので、WWEそのものが「ウイズ・コロナ」の時代の現実を映し出しているということなのでしょう。日本のプロレスの場合はほとんどの団体の興行が自粛となった。業界最大手の新日本プロレスが無観客興行で再スタートを切ったということが世間的にもニュースになりましたね。 テレビ朝日の『報道ステーション』がそのことをニュースとして取り上げて、そこで棚橋弘至と松岡修造が対談したり、 無観客というかたちがプロレスの“新しい日常”だと伝えた。そのあとの新日本プロレスの大阪城ホール2連戦は、ソーシャルディスタンスの図面を作製して観客ありの興行を提供しました。

――
客席の間隔を開けたり、人数制限をかけましたね。

フミ
 大阪城ホールは満員になれば、15000人も入る大会場です。ソーシャルディスタンスのかたちを取ると約3000人。観客には全員マスク着用を義務付けられ、大声を上げて応援することは禁止され、チケットの裏には自分の個人情報も書き込まなければいけない。

――
もし観客から感染者が出た場合、すぐに連絡が取れるようにするためですね。

フミ
 新日本がその方法を取ることで、他のプロレス団体も新日本を前例として右に倣うことになるのでしょう。先週ボクは新木場1stリングで行なわれた全日本プロレスのソーシャルディスタンス興行を取材したんですが、入場する際には検温と手指の消毒を求められ、新木場は満員で300人ぐらいの箱ですから100人程度しか入れることはできない。リングサイドも1列あたり5席ぐらいしか置けないですし、その席には全日本プロレスからのプレゼントとしてフェイスシールドが用意されていたんです。

――
どのスポーツでも見られるコロナ対策がプロレスにも求められるということですね。

フミ
 プロレスというジャンルは、世間というか社会の動きから独立して存在してるわけではないということですね。 WWEに話を戻すと、日本の状況とは違ってまだ無観客でしかできていないんです。 

――
観客動員興行の気配は見えないですね。

フミ
 まったく見えないです。プロレス以外のスポーツでいえば、メジャーリーグベースボールが7月の下旬から無観客でシーズン公式ゲームがようやく始まって、NBAやNFLも無観客でシーズンゲームがスタートします。世界には約1500万人のコロナ感染者が確認されていて死亡者数は約62万人。アメリカでいえば約400万人の感染者がいて、死亡者がすでに約14万人。 

――
アメリカの状況的に観客動員興行は厳しい。

フミ
 もの凄いパンデミックが続いているのに、アメリカのトランプ大統領は頑なにマスク着用を拒否しつづけてきました。

――
面白いのはUFC代表のダナ・ホワイトも公の場ではマスクはつけないんですよね。マッチョ主義の傾向がそうさせているのかなと。

フミ
 それはあります。マスク着用の有無はリベラルvs保守の政治的な論点にも結びついていて、こんなに感染者と死亡者が出ているのにも関わらず、アメリカでは「コロナはデマだ」という言説がいまだに根強いんです。

――
アメリカって天動説支持者がいたり、科学的根拠があるものなのに頑なに信じない層が一定数存在しますね。 

フミ
 アメリカにはダーウィンの進化論すらを信じない人もいるわけです。類人猿が進化して人間になるわけがないと。一部のクリスチャンの学校ではダーウィンの進化論を教えなかったりしますからね。

――
宗教の国たるゆえんですよね。そしてコロナもデマだと。

フミ
 トランプ大統領の支持者には、コロナがデマだ、あれはインフルエンザと同じようなものだと信じている保守層が多い。デマじゃなかったとしても、マスクなんかしても意味がないと信じている。

――
そういう支持者に支えられているからトランプはマスクをつけることができない。

フミ
 コロナによって経済も困窮してますし、死亡者がたくさん出ているからワクチンも開発をしなきゃいけない現実はある。そして今年の11月には4年に一度のメインイベントの大統領選を控えてますから、トランプからすれば、民主党の大統領候補バイデンとの戦いの焦点のひとつにコロナ政策があるわけです。

――
マスクをつける・つけないで票数が変わってくるわけですね。

フミ
 プロレスの話に戻すと、WWE内部でもコロナ感染者は出ちゃってるんです。レネ・ヤングさんや何人かのアナウンサーチームから出たり、テレビから姿を消したレスラーたちは感染していると言われている。感染しないように万全の態勢を取っているのかもしれませんが、4月のレッスルマニア以降ブロック・レスナーは一度もテレビの画面に出てきてません。ゴールドバーグやローマン・レインズもそう。レインズの場合は白血病再発の治療をしているので、合併症を再発する可能性があるのかもしれません。妊娠して休業中のリッキー・ベンチは当然出てきてませんし、 最近はシャーロット・フレアーも姿を消しました。そんな事態になってもWWEが番組を収録しなきゃいけないのは、観客がいてもいなくてもRAWは毎週月曜日にUSAネットワークで放送されていますし、 スマックダウンも毎週金曜日にFOXで放送されているからです。ロウとスマックダウンはそれぞれ年間で50億円ずつの放映権料が入ってきますから、WWEは何がなんでも番組制作だけは継続しないといけない。

――
UFCが無人島を借りてまで大会を開催しているのも巨額の放映権料を死守するためですね。
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