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【全文公開】藤田vs小川、IGFでしかできない“本性暴き”への期待感 ■格闘技酔拳批評

2012/11/25 14:21 投稿

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 さて困ったな……というのが、今年の大晦日である。もちろんさいたまスーパーアリーナの『DREAM.18&GLORY.4』を取材に行くわけだが、見たいのはそれだけじゃない。
 実はさいたまの前にアイスリボンの後楽園大会(昼興行)に行こうと思ってたんだけど、さいたまの開始時間が繰り上がったので難しそうだ。それで困ってる人はそう多くないかもしれないが、IGF両国大会も見たいし……と困ってる人はけっこういるんじゃないか。
 僕はちょっと前まで、IGF両国に関してはほぼノーマークだったのである。「あ、やるんだ」という程度。ところが『Dropkick』最新号を読んで、急に興味が出てきた。
 この大会では、藤田和之vs小川直也の一戦が行なわれると言われている。10.16TDCホール大会には小川が登場し、藤田と舌戦を展開した。
 ところが、IGF総帥のアントニオ猪木が、この対戦に疑問を投げかけている。『Dropkick』掲載のインタビューによると「売り物が“旬”じゃなくなっちゃった」。目玉カードのはずなのに、主催者側が「旬じゃない」と言ってしまう……。逆に興味が出てくるってものだ。
『Dropkick』には藤田のインタビューも掲載されており、これがまたおもしろかった。藤田は小川を挑発し、リングで対峙することで何がしたいのかを、こんなふうに語っている。
「みんな“あのとき”のアイツを待ってるんでしょ。あの本性を暴き出せるのは俺しかいないし、俺の本性もアイツなら引き出されるんじゃないかなと思うんですよ」
 藤田vs小川は“本性暴き”の試合。確かに“旬”のカードではないかもしれないが、そこには確かに意味が出てくる。小川の本性、藤田の本性。そこにはやはり興味があるのだ。
 小川直也という男には何かがある。たぶん誰もがそう思っている。でも、その何かを見せてくれたことは、これまであまりない。それこそ藤田の言う“あのとき”、新日本1.4ドームで橋本真也を一方的に潰したときを超えるものは、それ以降見せていないと思う。明らかに“危険な匂い”がありながら、しかし本人がそれをコントロールしていた、とでも言えばいいだろうか(ちなみに僕は、オリンピックで銀メダルに終わった後の記者会見で怒り、ふてくされていた“コントロールできていない”小川がかなり好きだ)。
 実を言うと、僕は“闘い”を前面に押し出してくるようなプロレスがあまり好きではない。必要だとは思うけれど、見たいと思うのはエンターテインメント性の高いものだ。キャラクターを作り込んだって“強さ”や“恐さ”や“迫力”は出てくるものだとも思う。WWEを見ていて感じるのは、エンターテインメントであっても“勝ち負け”にドキドキできるということだ。
 だから“闘い”が見たいのなら「それは格闘技でいいんじゃないの」と思うわけである。格闘技にだって“勝ち負けを超えた魅力”がある。よく“グレーゾーンの魅力”みたいなことを言う人もいるが、もうこの世界にははっきりとした“白”も“黒”もあるわけで、グレーには“どっちつかず”という意味も出てきてしまう。
 そういう中で“グレー”に意味があるとしたら、たぶんこの藤田vs小川なんだろう。小川は“白”も“黒”もやってきた男だ。柔道で世界トップの成績を残し、PRIDEにも出た。一方でハッスルの中心選手でもあった。PRIDEやハッスルで完璧な実績を残したとは言えないが、でもその場の“空気”を察知して合わせることはできた。自分に求められている“振る舞い”を理解できる器用さ、頭のよさがあるということだろう。
 でも、そんな器用な小川だからこそ、地金が、つまり本性が見たい。小川の魅力は、そこにこそあるんじゃないかと多くのファンが思っている。その本性は、たぶん白なり黒なりの色がはっきりした世界ではなくグレーなところ、器用さが発揮しにくいところでなければ“暴く”ことができないものなんだろう。
 そして藤田自身も、そういう小川と向き合うことで、自分の本性が暴かれることに期待している。インタビューを読んでわかるのは、藤田もまた頭がいい人だということ。だからこそ、その頭のよさが通用しない世界を見たいと思っているのだ。いわく「スリル満点のアトラクション」。
 藤田vs小川は“いま”のカードではないかもしれない。でも“ここ(IGF)”でなければいけないカード,ではある。旬だろうが旬じゃなかろうが、藤田と小川の“本性の暴き合い”はやはり、見たい(橋本宗洋)

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