PRIDE、DREAM、ストラクフォース、UFC……とメジャー団体を渡り歩いた川尻達也が見たRIZIN浜松大会です!
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――川尻さん!今日はRIZIN浜松大会を振り返っていただきたいんですが……その前に嫌な記憶を掘り起こしたいんですけど。
川尻 なんですか、いきなり。正直、俺は近々オープン予定のジムの話しかしたくないんですよ。
――朴光哲選手の朝倉未来選手への対戦アピールが物議を醸していますが、そういえば川尻さんがPRIDEの会場で五味隆典選手に対戦要求したときも会場が静まり返っていたなと(笑)。
川尻 ハハハハハハ。あれはですねぇ、あのカードが決定したのは大会前日の深夜3時なんですよ。それで急遽「会場に来てくれ」と。
――あのときのPRIDEってヒョードルvsミルコの大一番があったやつですよね。
川尻 もう凄いお客さんですよ。PRIDEの運営本部に行ったら「これこれこういう状況だからリングに上ってマイクアピールしてくれ」と。いやいや、ボクはPRIDEに参戦したばかりの新人でアドリブも効かないし、もう頭の中は「どうしよう?」となって試合どころじゃなかったんですよね。で、リングに上がってマイクアピールしたんですが……いま振り返っても大根役者すぎる(笑)。
――あれは川尻さんがマイクがどうのというより、PRIDE武士道の求心力がまだなかった、という理由もひとつにありますよね。それで実現した五味隆典vs川尻達也はいまだに語り継がれる内容になって、PRIDE武士道の存在感が増していくんですけど。
川尻 PRIDE武士道で2戦しかやってない新人があんな場所に上がってくのはキツかったですよ。五味くんが試合に勝ったあとじゃなかったから、まだよかったけど。相手が勝ったあとだと試合を壊すみたいなところはあるから。だから今回の朴さんも内心は嫌だったと思いますよ(笑)。
――やりたくない仕事だったと(笑)。その朝倉未来選手の試合から伺いたいんですが、試合前は対戦相手のダニエル・サラスを「噛ませ犬」「金魚」扱いするファンが多かったですね。試合を見るかぎり普通に戦える選手で。
川尻 あー、そんな風に言われてましたよね。たしかに連敗していたりしてキレイなレコードではなかったけど、いまのMMAってそこまで弱い選手っていないですからね。未完成の選手はいるかもしれないけど、何か強い武器を必ず持ってますし、昔みたいに素人みたいな選手はなかなかいないですよね。
――MMAという競技が普及したことで技術が浸透しているってことですね。
川尻 それにRIZINの榊原(信行)さんって、鬼のようなカードを遠慮なく組むじゃないですか(笑)。
――経験者は語る!(笑)。無名でキャラがないならば、緊迫感のある攻防を作りたいってことなんでしょうけど。
川尻 仮に今回のサラスが「金魚」だとしたら、それくらい未来くんの格が上がっているってことですよね。世界的に見たら「朝倉未来」というMMAファイターの知名度ってまだそこまでないですよね。海外からすれば「無名の強豪」。海外の選手は基本的にUFCを目指してるからレコードを気にする。クリーンなレコードじゃないと UFCとは契約しづらいですからね。そうすると名前のある強敵とやりたがる。未来くんのような「無名の強豪」は勝っても評価されないから、世界的に見たらおいしくないんですよね。
――変な話、修斗フェザー級王者の斎藤裕選手や、DEEPフェザー級王者のヤマ……なんだっけ。
川尻 忘れないでくださいよ。俺たちの弥益聡志ですよ!
――すいません、「ドミネーター」でおぼえてました(笑)。
川尻 団体のチャンピオンの彼らのほう未来くんよりおいしいと思うはずですよね。未来くんに関しては対戦相手はなかなか大変だと思いますよ。このまま勝ち進めば評価はどんどん上がっていくと思いますけど。
――そのダニエル・サラスとは明確な実力差はありましたが、簡単な相手ではなかったですね。
川尻 大晦日に続いて今回の相手もタフでしたよね。未来くんのパンチは何度も当たってるんですけど、それでもKOできなかったし。試合を見てて思ったのは、未来くんは頭がいいですよね。二段蹴りのミドルからの左ストレートも、あえて当てようとしてないですよね。相手の反応を探ってる。パンチのプレッシャーからハイを打っていたり。
――打撃のテクニックは本当に優れているんですね。
川尻 今回の相手って試合データはそんなになかったはずですけど、試合中に分析して攻略してましたね。苦戦はしてなかったですけど、変則的でやりづらかったかなって。PRIDEで五味くんがルイス・アゼレードをKOした試合を思い出しましたね。五味くんもアゼレードの変則的な動きにやりづらそうでしたけど、後半は動きに合ってきて最終的にぶっ飛ばしたじゃないですか。
――いかに試合中に対応していけるか。
川尻 未来くんはそこが凄いですね。ニュージェネレーション。ボクら世代が持ってないものを持ってますね。バックステップからあんなストレートを打てる日本人ってそんなにいないですよ。みんな突っ込んでは行けるけど、バックステップをしながらあそこにうまくはできない。
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バックステップからのパンチは難しい技術なんですね。