10月31日にサウジアラビア王国、キング・ファハド国際スタジアムで開催されたWWEのPPV大会「クラウン・ジュエル 2019」後に、こんな噂が流れた。「ビンスがサウジ皇太子と金銭面で揉めたため、彼らは人質となって出国できない」――と。いったいサウジアラビアで何が起きていたのか。
ムハンマド・サルマーン皇太子が推し進める経済改革計画「ビジョン2030」の一環として、WWEとサウジアラビアが10年契約を結び、2018年4月の「グレーテスト・ロイヤル・ランブル」から始まったWWEのサウジPPV大会。昨年、反体制派記者ジャマル・カショギ氏がトルコのサウジ領事館で殺害された事件が、大会開催前に起きたことにより、米上院議員から大会中止を要請されるなど、サウジ大会は何かと話題に欠かすことがない。
アンダーテイカーやゴールドバーグ、ショーン・マイケルズらが出場したり、今大会も総合格闘家のケイン・ヴェラスケスや、ボクサーのタイソン・フューリーが参戦したりと、石油マネーの力もあってか、通常の大会では見られない大物たちが大会に名前を連ねるのが、良きにつけ悪しきにつけサウジ大会の特色の一つだ。この10月大会では、宗教・文化・伝統上の理由で、これまで認められることのなかった女子レスラーの試合が行われたことは画期的だった。
ここ数年、WWEは女子革命を掲げ、女子レスラーの底上げに力を入れており、男女平等、性差別がないよう、女子レスラーにも活躍の場を与えている。それに比べ、サウジアラビアの女性への人権意識は、イスラム教の国々の中にあってもとりわけ低い。女性の自動車運転やパスポートの自由取得が認められたのはつい最近のことである。WWEはかねてから女子選手の試合をサウジに強く提案しており、今回ようやくそれが認められることとなった。
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