大会後恒例のRIZIN広報・笹原圭一インタビュー。RIZIN.17の裏側を1万字で語り尽くします!(聞き手/ジャン斉藤)




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笹原
 今回のRIZIN.17は面白かったですよね? 

――
はい、面白かったです。

笹原
 面白かったですよね?

――
なんで聞き直すんですか!(笑)。

笹原
 「面白かった!」って人から言われるのがこんなに気持ちいいんだ、って改めて感じているんですよ(笑)。もうなんでRIZINはこんなに面白いんだろと、日々自画自賛しています。

――
ガハハハハハハ! RIZINの面白さの要因の一つにイベント構成があると思うんですけど、たとえば今回のオープニングマッチはキックボクシングルールだったじゃないですか。

笹原
 そうですね。今回はベラトール経由でケビン・ロスという大物キックボクサーが来るはずだったんですけど……ケガで欠場して、別の選手が出場することになっちゃったんですけどね。キック、女子、軽量級・重量級のMMAをどの順番にするのかは、毎回けっこう腐心していますね。

――
ボクのツイッターのTLには「第1試合からMMAの注目カードを組んでほしい」なんて言ってる人がけっこういたんですけど。最近の格闘技イベントって第1試合や前半から勝負カードは切らないですよね。

笹原
  UFCもメインカードの前はお客さんが入ってなかったりしますもんね。

――
RIZINは第1試合に敢えて注目試合を組むことがありますし、最初から最後まで楽しんでもらおう!という構成を考えてるから、必然的にハードルも上がるし、その狙いがハマったときの充実感は凄いんじゃないですかね。

笹原 たしかにPRIDEの頃から、オープニングVやオープニングセレモニーで最初からお客さんに楽しんでもらおうとはしていますよ。でもですよ、斉藤さん。時代は変わってきてるんですよ。

――どういうことですか?

笹原
 今回オープニングVが始まる頃、ある件で会場入り口付近を走り回っていたんですよ。 まだお客さんが入場口や通路を歩いていたんですけど、会場内からオープニングVの音が聞こえてきてるのにみんなゆっくり向かっていて。これはたぶんオープニングVから見る習慣が浸透してないんだろうなって。

――
ああ、なるほど。新しいファンかもですね。

笹原
 ファンの方がツイッターで言ってましたけど、「そんなのラーメン屋に入ってメンマだけ食べてるみたいなもんだ!」と。昔からのファンはオープニング Vとオープニングセレモニーを見て気分を高めてパッケージで楽しむことを知っていますけど、新しいファンにはその習慣が根付いていない。「最初から見たほうがRIZINはもっと楽しめるよ!」ということを、改めて伝える必要があるなと。暖簾をくぐってラーメンを食べて店を出るまでがRIZINってことですね。

――
ここ10年間くらいの格闘技観戦ってお目当ての試合だけを見る、もしくは後ろの試合だけでいい……というスタンスなんですかね。ボクもUFCやベラトールなんかは、最初からは見ないですし、途中でも見たり見なかったりしてますからねぇ 

笹原
 PRIDEがアメリカ進出したときも「オープニングから必ず見てくださいね」って向こうのファンや関係者に本当に繰り返し言ったんですよ。エンタメの本場に人たちに向かって「オマエらは本当のイベントの楽しみ方がわかっていない!喝だ!」くらいの勢いで(笑)。でもアメリカはボクシングもそうですけど、格闘技をオープニングから見る習慣がないじゃないですか。

――
地上波だけで済ませちゃうファンもいますね。

笹原
 で、事前の会見やインタビューも含めてそのカードの意味を知っていればさらに楽しめると。とりわけ今回のメインみたいな物語があると、大会前からむちゃくちゃ楽しめますよね。本当ね、RIZINファンがうらやましいですよ(笑)。

――
今回の朝倉未来vs矢地祐介みたいな熱い因縁ってそうそうないですもんね。

笹原
 朝倉vs矢地は事前の舌戦や煽りを含めてうまくハマりましたよね。両者の因縁が伝わっていなかったら、あの試合展開で、あれだけ大勢のお客さんが集中して見られなかったと思うんですよ。正直試合内容だけを見れば、そこまで激しい攻防があったわけじゃないですか。でも凄い緊張感を持って見られましたよね。

――
朝倉選手が髪をかきあげる仕草まで注目してましたからね(笑)。スケールは違いますけど、桜庭和志vsホイス・グレイシーも事前のストーリーがなければ、見るのはキツイ試合展開だったと思います。

笹原
 あの試合も事前のストーリー作りがうまくはまったので90分見ていても、見る側の集中力が全然切れなかった。もちろん格闘技は技術的な視点で楽しむこともできますけど、今回のメインのように「こいつにだけは負けたくない」という選手の剥き出しの気持ちを煽れると、見る側の気持ちが乗っかりますよね。

――
「スポーツを競技だけ純粋に楽しめないのはおかしい」という声もあるんですけど、やっぱり思い入れがないと……。ボクは中日ドラゴンズの公式戦143試合を全試合リアルタイムで見るくらいのプロ野球ファンですけど、他球団同士の試合は一切興味ないですからね(笑)。

笹原
 ツイッターで斉藤さんを見ていても、勝ってあれだけ喜んで、負けてあそこまで悪態をつけるって本当に幸せだと思います(笑)。今回で言えば、シュメトフなんてRIZIN初参戦なのに、ここにいたるまでの無駄に壮大なドラマがあるから、凄い大歓声を浴びましたよね。普通にパンチを出しているだけで「え?シュメトフ、ちゃんとMMAできるぞ。本物じゃん!」って、やたら評価されましたし(笑)。

――
「強くあって欲しい」っていうファンの願望もあってシュメトフが輝いて見えたところもあったというか。だから今回のRIZIN.17ってたしかに面白かったんですけど、「絶対に盛り上がって欲しい」というファンの熱い気持ちが後押ししたところもあったと思います。それはゴールデンタイムでやらなかったから。

笹原
 ああ、なるほど。那須川天心、堀口恭司、RENA、浅倉カンナ、山本美憂……というスター選手抜きでやる大会だからこそ盛り上がって欲しいってことですね。

――
ファンからすれば、この大会がつまらなかったら自分の存在が全否定される気持ちになるはずですからね。ボクは日陰者のファンだったのでその気持は痛いほどわかります(笑)。

笹原
 とくに最後の3つ(朝倉未来vs矢地祐介、石渡伸太郎vs佐々木憂流迦、扇久保博正vs元谷友貴)の緊張感は凄かったですけど、だからこそ逆にシュメトフも際立った。格闘技の試合で笑いが起きることって少ないですけど、シュメトフは入場で笑わせて、さらには「オマエはよく頑張ったぞ。また帰ってこい。俺たちはRIZINで待ってるぞ!」みたいな謎の感動まで作りましたからね(笑)。

――
笑いが起きる試合の極北が大砂嵐vsボブサップだったりしますね(笑)。

笹原
 あんな試合をやってくれと頼んでも無理ですからね(笑)。ファンも全試合、緊張感を持って見るのはもの凄く難しい。いまは1大会10試合超えがあたりまえですから、どこかで箸休めというかちょっと肩の力を抜いて見るような試合が必要だと思っています。

――
今回ヘビー級の試合(イヴァン・シュトルコフvsキム・フン)が最後の3つの前の位置だったのも、一息入れる場面転換の意味があったということですよね。

笹原
 そうです、そうです。初参戦同士なので、ちょっと肩の力を抜いて見られる、という狙いですね。

――
川尻選手もベテランらしい試合ぶりでよかったですよね。

笹原
 終わったあとに川尻選手本人にも言いましたよ。「本当にみっともない試合だった。でも最高だった」って(笑)。

――41歳のオッサンが、口から血を垂らしてハアハア言いながら20代のロシア人を封じ込めるわけですからね(笑)。

笹原
 ファイト・オブ・ザ・ナイトじゃなくて、泥臭い・オブ・ザ・ナイトですよ(笑)。でも川尻選手がよく言っている「ファンの声援が力になる」ということを体現した試合でしたね。

――
「川尻!」コールも起きましたもんね。

笹原
 よく戦い抜いたと思います。相手のアリ選手の前蹴りでアゴに相当ダメージがあったんですけど、試合後はメチャクチャ機嫌がよかったですよ。

――
久しぶりの勝利ですからねぇ。充実感はあったでしょうし。

笹原
 試合前に本人とも話をしたんですけど、北岡戦での敗北で「自分は北岡悟のように死ぬほど勝利にこだわって、本当にがむしゃらにできていたのか」って、相当自問自答したらしいんですよ。「UFCから戻って、俺はUFC帰りのファイターだってどこかで格好つけていたんじゃないか」って。で、本当にゼロから取り組んで、必死で手にした勝利でしたから、それは相当嬉しかったんだと思いますよ。

――
川尻選手って車でいえば旧式ですからね。ガタガタ車体を揺らしながら新型車に競り勝っちゃうんですからねぇ。

笹原
 ド根性というエネルギーだけで、黒い煙を吐き出しながら走りきったわけですからね(笑)。相手のアリ選手も強かったですけど、試合後にドクタールームでしばらく動けなくなっていたんですよ。あんなしつこい相手はもう二度とごめん、みたいな表情でまさに泥のように疲れ果てていましたからね(笑)。

――
トラウマになるかもしれない(笑)。逆に北岡ちゃんは残念というか心配な終わり方でしたけど……。あんな状態で負けた選手は見たことないので。

大恥をかいてこそRIZIN朝倉未来vs矢地祐介、ハム・ソヒの山本美憂&浅倉カンナ評、佐々木憂流迦のパフォーマンスの裏側、石渡伸太郎の「ただいま」の意味とは? 

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