Dropkickのプロレス格闘技本読書会!! 今回取り上げる本はミスター高橋さんの『流血の魔術 最強の演技 すべてのプロレスはショーである』です。この記事はDropkickニコ生配信で語られた『プライド』の感想を再編集・加筆したものです(語り・ジャン斉藤)
今月の『Dropkick読書会』が取り上げる本は、ミスター高橋さんの『流血の魔術 最強の演技 すべてのプロレスはショーである』です(以下『流血の魔術』)。なんでいまこの本なのかといえば、ちょっと前にツイッターで中邑真輔選手の女性ファンの方がプロレスが真剣勝負ではなかったことにショックを受けてたんですね。「そんなことは聞いてない!」って感じで新日本プロレスに対してかなり憤ってたんですよ。中邑真輔はかつてMMAをやったり、現在はWWEで活躍しているんですけど、熱心なのに気づかないもんだなぁと。
まあ、そこは置いといて、その方は周囲の方々とプロレスについて議論されてたんですけど、その中にプロレスの仕組みを明かしてる『流血の魔術』も出てきたんですが、どうも悪書という扱いだったんです。『流血の魔術』は悪い本であり、暴露本であると。
暴露本という側面はたしかにあるんですけども、個人的にはプロレスを否定している本だとは思わなかったんですね。プロレスの内幕は明かしてますが、読んでいて嫌な感じはしなかった。全体的に凄く面白い本だと思います。
『流血の魔術』は悪書であるという批判がある一方で、高橋さんは真実を明かしたことでプロレス界から迫害を受けたというような扱いもされている。でも、これはどちらも過剰な評価じゃないかと思うんです。
当時のプロレス界の状況からすれば、出現してもなんらおかしくない本というか、『流血の魔術』が発売されたタイミングはバッチリだったんですね。アメリカでは『レスリング・ウイズ・シャドウズ』や『ビヨンド・ザ・マット』というプロレスの裏側を撮ったドキュメンタリー映画が公開されていました。高橋さんは『ビヨンド・ザ・マット』を見たことが執筆の動機の一つと言ってますね。あの本が発売された2001年12月には、大晦日に初めて総合格闘技のイベントが行なわれ、地上波中継された。しかもですよ、その月にWWEの興行が日本で初めて直輸入されることが報じられたんです。それまでレスリングサミットやマニアツアーはありましたけど自主興行は初めて。
こうしてMMAとWWEの挟み撃ちに合うような形で「プロレスとは何か?」がクローズアップされているときに、新日本プロレスというメジャー団体でレフェリーをやっていた高橋さんが『流血の魔術』を上梓した。プロレスの仕組みを打ち出す時期としてはベストもベストだったわけです。
そうはいっても批判は出るんですよ。そりゃあプロレス団体からすれば意図しないわけですから歓迎されるわけがないんですけど、最近発売された宝島の『告白』という本で高橋さんは被害者の立場を強調するんです。
「本の内容を認められたのは稀」
「肝心のプロレスマスコミはこの本をほぼ黙殺。レスラーからも直接の反論はなかった」
「この本を読んでもないのに批判された」と不当な扱いを受けたことも訴えるんですが、誰かといえば永島のオヤジの仕業ですよ。あのオッサンをプロレス界の代表者扱いにしないでくださいって話なんですけど(笑)。「レスラーからも直接の反論はなかった」って元レスラーや関係者は反論してますから「レスラー」に限定してるのはちょっと嫌らしいですね。
「肝心のプロレスマスコミはこの本をほぼ黙殺」
この「ほぼ」も気になりますよね。この「ほぼ」にボクは心当たりがあって。以前Dropkickで高橋さんにインタビューしたことがあるんですけど、そのときの雑談でも「プロレスマスコミには無視された」と怒ってて。ボクは「カミプロで高橋さんのことを何度か取材してましたよね?」って言ったら、ちょっとムッとされていて。
「肝心のプロレスマスコミはこの本をほぼ黙殺」の文は、高橋さんを取材されたライターさんが書いてるんですけども、もしかしたらボクとのやり取りがあったから「ほぼ無視された」という表現になってるのかもしれないですね。ちょっと自意識過剰かもしれませんが(笑)。
高橋さんにとって「無視された」ということは逆に勲章になってると思うんですね。真実を告白したが、私は世間から迫害を受けた。地動説を唱えたガリレオ・ガリレイじゃないですけど、「すべてのプロレスはショーである」は「それでも地球は回る」なのかもしれません。
高橋さんの立ち位置は、暴露本と呼ばれ、批判されればされるほど殉教者として名は残る。でも、高橋さん本人は、そこにもどかしさが感じてるんじゃないでしょうか。なぜなら自分は正しいことを主張しているつもりだから。ヒールにはなりたくない。高橋さんの発言や原稿を読むと警戒心を凄く感じるんですね。
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