アメリカのインディプロレスの“現在”を伝える連載! アメリカインディープロレス専門通販「フリーバーズ」(https://store.shopping.yahoo.co.jp/freebirds)を営む中山貴博氏が知られざるエピソードを紹介していきます! 今回のテーマは、カナダの狂乱のハードコア団体『IWS』――人生の栄光と転落です!




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2005年7月11日、アメリカ国境に隣接するカナダ・ケベック州の小さな町ヘミングフォードで、16歳少女の捜索願いが出された。警察は、その2週間後の26日に、カート・ローダー(当時23歳)という一人の男性を第一級殺人容疑で逮捕した。

身長195センチ、体重136キロの恵まれた体格を持ち、日本のプロレスが大好きで、友人が旅行で日本へ行くと言うと、ゼロワンのTシャツをぜひ買ってきて欲しいと懇願し、100ドルを渡すほどだった。そんな彼は、モントリオールの英雄一家と言われるルージョー家のジャック・ルージョー・レスリング・スクールの出身者であり、モントリオールのインディ団体IWS(International Wrestling Syndicate インターナショナル・レスリング・シンジケート)に参戦しているカート・ローダーデールというプロレスラーだった。優しげな顔からは想像もつかない"The Career Killer"が、彼のニックネームであった。

少女が行方不明になる2日前、IWSは、米フィラデルフィアにあるハードコアの聖地ECWアリーナで、「Freedom To Fight 」と冠したアメリカ初進出大会を開催していた。カートは第5試合に出場し、グリーン・ファントムと対戦した。翌日、皆と行動を別にし、カナダの自宅へと戻った彼は、北米プロレス史に残る残酷な犯罪を犯してしまった。同居している両親にすぐさま、地下の自室で少女を殺してしまったことを告白した。体は大きいが大人しくて優しい息子だった。たとえいけないこととはわかっていても、両親は我が子を殺人犯にはしたくなかった。3人は必死で考え、遺体をバラバラにして遺棄することにした。切断した遺体をホッケーバッグに詰めて、郊外の森まで運んで埋めた。そして彼らは通常の生活に戻った。

カートは犯行後、何もなかったかのように、15日にMWFというモントリオール郊外の団体に出場。23日にはIWSのメインイベントの4WAY王座戦に出て、その3日後の26日に逮捕された。もちろん、父親と母親も事件に関与したとして一緒に逮捕された。IWSの選手達はまさかあの優しいカートがそんな酷い事件を起こしたなどとは知る由もなく、いつもどおりにプロレスをしていたのだった。


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