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80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは「ドナルド・トランプとビンス・マクマホンです! イラストレーター・アカツキ@buchosenさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付きでお届けします!





Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー

■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」
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■オペラ座の怪人スティング、「プロレスの歴史」に舞い戻る
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■なぜ、どうして――? クリス・ベンワーの栄光と最期
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超獣ブルーザー・ブロディ
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「プロレスの神様」カール・ゴッチの生涯……
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■『週刊プロレス』と第1次UWF〜ジャーナリズム精神の誕生〜
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■ヤング・フミサイトーは伝説のプロレス番組『ギブUPまで待てない!!』の構成作家だった http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1115776

SWSの興亡と全日本再生、キャピトル東急『オリガミ』の集い
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■「現場監督」長州力と取材拒否
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■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男
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■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑
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斎藤文彦の最新著作
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昭和プロレス正史 下巻

ジャイアント馬場・アントニオ猪木の日本プロレス独立から、NWA幻想の高まりと猪木対アリ“格闘技世界一決定戦"を経て、週刊プロレス創刊・UWF誕生、そしてブロディの死で終焉した時代とは何だったのか。活字プロレス誕生から60余年――、いま初めて綴られる、プロレスのほんとうの歴史「第二弾」。



――今回のテーマは「アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプとWWE」になります。

フミ ドナルド・トランプがアメリカ大統領選挙で当選してから、いくつかのテレビ番組からコメントを求められました。「トランプがプロレスの手法をマネたというのは本当ですか?」と。でも、テレビ局のほうでは最初から“答え”は用意されていて。もちろん「プロレスの手法をマネていた」なんですけど。

――そのほうが面白いですからね(笑)。

フミ  つまりドナルド・トランプはプロレスでいうところのヒールを演じていたということなんですね。いまは時代的にポリティカル・コレクトネスがあって、倫理的・人道的に正しくないことは口にはしていけない。でも、トランプはひょっとしたら、みんなが内心思ってるかもしれないことだけども、言っちゃいけないことをおおっぴらに言ってしまう。それは人種差別や男女差別、排外主義的な発言に当たります。トランプは思想信条的にはかなり過激で、これまでの共和党の保守派の人ですら、眉をひそめるというものなんです。実際、元大統領のブッシュ親子でさえ、かなり早い段階でトランプ不支持を正式に表明していた。

――アメリカやヨーロッパって差別にうるさいわりには差別がはびこってますね。

フミ アメリカは移民の国ですし、いろんな人種、いろんな宗教の人が集まってますから、そういう属性で他人を差別をしてはいけないということになってる。それは身の回りから始まる人種差別があるからなんですね。子供の頃から「肌の色で差別をしてはいけません」と習うわけですが、アメリカの教室には白い人も黒い人も黄色い人もネイティブ・アメリカンもみんな一緒に席に座ってます。

――だからこそ差別が生まれやすいんですね。

フミ アメリカ建国以降、一度だけ南北戦争(1881〜1865年)という内戦が起こりましたが、その戦争は黒人奴隷を解放するか、しないかが発端でした。北軍が勝利して奴隷解放に至りますが、差別が根絶されたわけではありません。そのためそれから100年後の1960年代にはマーティン・ルーサー・キングの公民権運動が起きたりしています。

――それでも差別はなくならない。

フミ いまのアメリカには白人の低所得層からすると不公平感があるというか、そこをトランプが突いて「移民が白人の仕事を奪ってる」と確信犯的に言ってるところはあるんです。そんなトランプがなぜウケたかという話ですけども。もともとは“トンデモ候補”だったわけです。メディアの予測ではあのトランプがよもや最後まで残ると思われなかった。

――民主党候補のヒラリー・クリントンとの戦いになりましたね。

フミ その前にはオバマが8年間その職務を務めていました。オバマは黒人初の大統領として完全なるベビーフェイスだったわけです。今度はアメリカ初の女性大統領ヒラリー・クリントンが誕生……という可能性が高かったんですけど、ヒラリーもトランプも2人とも非常に評判の悪い大統領候補だった。「どっちが嫌いか?」という争いになってしまったんですね。

――そうなると、どっちのヒールに共感を抱きやすいかという話にもなってきますね。

フミ だから「口にはしてはいけない」ことを言いまくるトランプが支持を得て、あれよあれよという間に当選してしまったところはあるかもしれません。4年に一度の大統領選は“史上最大のショー”と言われていて、アメリカ国民全員が参加する4年に一度の大きなお祭りなんです。今回はトランプ旋風でいつも以上に盛り上がったことはたしかで、いままで投票に行かなかった人も今回はこっそり投票に行ったりしてますね。

――そのトランプの手法がプロレスから持ち込まれたと言われてますね。

フミ 選挙戦のニュースでもWWEのリングに登場するトランプの映像が使われてたりして、そこがプロレスとリンクした場面と言われていますが、実際にビンス・マクマホンとの共通点は多いんです。ドナルド・トランプは1946年生まれで今年で71歳。ビンス・マクマホンは一つ上の今年72歳で1945年生まれ。戦後の第一次ベビーブーマー世代、日本でいうところの団塊の世代なんですね。

――2人は同世代なんですね。

フミ 面白いのはドナルド・トランプもビンス・マクマホンも、お父さんの事業を引き継いで億万長者になっていることなんです。ドナルド・トランプという人はニューヨークのクイーンズ生まれの都会っ子。ペンシルべニア大学を卒業していますが、少年時代はミリタリースクール、つまり軍隊式の寄宿舎のある学校で生活を送っています。そこも2人の共通項で、ビンスも少年時代はミリタリースクールみたいな寄宿舎に通ってるんですね。

――似たような人生を歩んでるんですね。

フミ ドナルド・トランプのお父さんはフレッド・トランプと言って有名な実業家でした。トランプは1969年に大学を卒業したんですけど、お父さんの事業のひとつであった不動産業を継いだのは3年後の1972年。25歳のときです。そこからトランプは不動産王として駆け上がっていきます。

――ビンスも父シニアからWWE(当時WWF)を買い取って全米侵攻を開始させますね。

フミ いまのビンスは厳密に言うと三代目なんです。ビンス・マクマホン・シニアのお父さんはジェス・マクマホンという人で、プロレスとボクシングのプロモーターでした。いまのビンスには、かなり長いあいだ日本のマスコミは「ジュニア」をつけていたじゃないですか。

――「ビンス・マクマホン・ジュニア」表記。そういえば突然消えましたねぇ。

フミ アメリカではすぐに「ジュニア」表記は消えていたんですけど、日本のマスコミは90年代の終わり頃までジュニアをつけてました。それはシニアが偉大なプロモーターだったということもあるので、区別する意味もあったんでしょうね。そのシニアからいまのビンスがビジネスを引き継いだのは1982年。それは37歳のときですが、ビンスは若い頃から実力があり、そもそも1976年のアントニオ猪木vsモハメド・アリのアメリカ側のプロモーターだったんですね。プロデューサーとしてイベントに名を連ねていたのはシニアじゃなくていまのビンスなんです。

――猪木vsアリの衛星中継が行われたニューヨークのシェイ・スタジアムではアンドレ・ザ・ジャイアントvsチャック・ウェプナーの異種格闘技戦などが行われましたね。

フミ お父さんの事業を受け継いで世界規模にしたという共通項が2人にはあるんですが、彼らは日本の2代目と比べて桁違いにお金持ちなんですよね。いまのドナルド・トランプの個人資産は4.5ビリオン。ミリオンじゃないんですよ、ビリオンです。個人資産で約5150億円。

――想像もつきません(笑)。

フミ そのドナルド・トランプとビンス・マクマホンが運命的な出会いをはたすのが、1988年のレッスルマニア4です。このレッスルマニアはどんなカードだったかと言うと、前年のレッスルマニア3でハルク・ホーガンvsアンドレ・ザ・ジャイアントの頂上対決があって、ホーガンがアンドレをボディスラムで投げてフォール勝ちしました。



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