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大好評アジャ・コングインタビュー第3弾!  




<これまでのアジャ・コングインタビュー>
①「全女はAKB48やジャニーズだった」
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1087876

②「恐るべし全女の異種格闘技戦/ダンプ松本、究極の親分肌」
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1112784





――前回の続きに入る前にSEAdLINNNG後楽園大会で実現した世志琥選手とシングルマッチについてうかがわせてください。

アジャ そうですねぇ。試合後にリング上でも言ったように、つまらなかったなって。あの子とは2年前くらいに仙女でタッグで当たったことがあったんですよ。あんときはクソ生意気だったから、こっちもイライラして面白かったんですよね。ところが、あの件のせいかわからないですけど、妙にお利口さんになってしまってて。

――あの件とは安川惡斗戦の騒動ですね。

アジャ 本来は頭のいい子だと思うので、こうしてリングに戻ってきたからにはちゃんとしなきゃいけないと思ってるんでしょうけども……。ちゃんとする方向を間違えてるんじゃないかなって。

――ああ、なるほど。悪い意味でブレーキを掛けてしまってるというか。

アジャ 自分の中でお利口さんになって「そういうことをしちゃいけないんだ」「他人に迷惑をかけちゃいけないんだ」ってなってるのかなあ、と。でも、プロレスってリングの上なら迷惑をかけてナンボだし、そもそも迷惑と受け取られるのか、面白いと受け取られるのか見る側の問題なので。

――たしかにそうですね。

アジャ 迷惑だったとしたらリングで取り返すしかないし。今回の試合ももっとガンガン攻めてくれるのかなと思ったんだけど……。あのSEAdLINNNGは世志琥が戻ってこれるために高橋奈苗が作ったところはあるじゃないですか。そのリングでヘタなことはできないという気持ちが出てるのかもしれませんね。

――高橋奈苗選手への気遣いがあるのかもしれないわけですね。

アジャ 変に気を遣うなら、自分の横に並んでやったほうが面白いんじゃないかなって提案はしたんですけどね。だからって自分が「頑張れ!」って応援するわけじゃないですよ。「やれ!」ってケツを蹴り飛ばすだけです。

――アジャさんの目から見て、いまと昔では若手の育成の仕方に変化は感じられますか?

アジャ 全女のときと比べて下積みのかたちも変わってますからね。全女のときは「25歳定年」という暗黙の了解があったじゃないですか。

――25歳になったら誰であろうと強制的に引退しなきゃいけない。

アジャ 15歳からプロレスを始めても現役期間は10年しかないんですよ。いまは自分が「やめる」と言われないかぎり、いつまでもできますから。「10年選手」になっても若手と呼ばれる時代ですし、ゆっくりと伸びていくことができる。全女の頃はそれが許されなかったんです。2年3年でメインにたどり着けなかったら「いらない」って言われた世界なので。

――たった数年でジャッジされてしまうんですね。

アジャ だから多くのレスラーが5年前後でやめていくんです。自分は15歳で全女に入ったので、10年という時間がありましたから、比較的余裕はあったんですけどね。18歳で入った場合はもう時間はないですよね。

――本日の取材の大きなポイントになりますが、アジャさんはバイソン木村さんに引っ張られるかたちで、当時全女のトップに君臨していたブル中野さんに反旗を翻しますよね。バイソンさんが中野さんに歯向かったのは、年齢的な焦りもあったんでしょうか。

アジャ そうかもしれないですね。バイソンは18歳で入って25歳定年までそんなに時間がなかったですし。私は中野さんと対立する気はなかったんですけど……。

――「トップに立ってやろう!」という姿勢ではなかったんですよね。ガツガツしてなかった。

アジャ はい。目立って潰されるくらいなら……って感じでした。それは私はまだ15歳で余裕があったからもしれませんよね。

──でも、クラッシュキャルズが引退して全女は集客に苦しんでましたよね。

アジャ お客さんが一気に減りましたね。なんとかするためにメデューサや下田美馬に異種格闘技戦をやらせたり、“第2のクラッシュ”としていろいろとユニットを作ったりして模索してましたね。とにかくベビーフェイスを立てなきゃ会社が儲からないというので。ビューティ・ペアで神風が吹いた、クラッシュギャルズで神風が吹いた。次の神風を誰かが吹かせてくれると会社は思っていますから。ペアを組ませて歌わせればどれかしらは当たるだろう!ってね。

──ところがベビーフェイスで全女に神風が吹くことはなかった。神風を吹かせたのは、ブルさんとアジャさんのヒール同士の抗争でした。事の発端はアジャさんがルチャ団体のユニバーサルプロレスに出場されたことですが、どういう経緯があったんですか?

アジャ 要は全女の試合に私のことが組み込めなかったからです。

──だから他団体に貸すことができたということですね。

アジャ はい。中野さん率いる獄門党の中で、私は強制的に中野さんのタッグパートナーとなってましたけど、その後、クレーン・ユウさんが中野さんと組むようになったんですよね。ユウさんはもともと、ドリル仲前さん、影かほるさんと一緒に覆面三人組みたいなヒールユニットをやっていたんですけど、一度レフェリーに転向したあと、もう一度、覆面レスラーのダイナマイト・ジャックとして戻ってきたんです。それで中野さんと組んでメインを出るようになって。

──つまりアジャさんはブルさんのパートナーから外されてしまったわけですか。

アジャ そういうことですね。当時の全女ヒール枠は中野さんのタッグと、その覆面三人組さえいれば間に合ったんです。獄門党のメンバーだった私とバイソン木村、グリズリー岩本さんの3人は全女で試合がなかなかできなくなったんですね。

──ブルさんは「試合ができるヒール軍団」を目指して獄門党を立ち上げたわけですよね。だからこそアジャさんたちも厳しい練習を仕込まれていたわけで。

アジャ 中野さんはそういう考え方で会社は「ヒールは技なんか出さなくていい。凶器を持ってベビーフェイスをメチャクチャに痛めつければいい」という考え方だから。

──ブルさんと会社のあいだに温度差があったんですね。

アジャ その頃ちょうどユニバーサルプロレスの選手たちが全女の道場で練習をしていて。「試合はメキシコのスタイルでやるんだけど女子の試合も組み込みたい」と会社に相談があったみたいで。「じゃあ、ここらの連中だったら貸せますよ」とリストアップしたメンバーが、岩本さんやバイソン、私だったんです。

──全女の中で持て余してるレスラーを貸し出したんですね。

アジャ だと思います。

――それはつまり、いつクビにしてもおかしくなかったとも捉えることができますが……。

アジャ 当時の私は「そこそこの仕事をやって、そこそこの給料をもらっていればいいや」と思っていた人間ですし、本来ならばそんなヤツは不良社員なわけじゃないですか。

──会社からは何も言われないんですか?

アジャ 「そろそろ田舎に帰ったら?」みたいなことは言われるんですよ。でも、自分が首を縦に振らないかぎりは「そう。じゃあ、いいけど」で終わりですね(笑)。

──出稼ぎに出されたユニバーサルでの最初の試合はグリズリーさんとバイソンさんのタッグで、アジャさんはセコンドをだったんですよね。

アジャ 私は一応セコンドとして凶器を渡す役でしたね。ホントにどうでもいい役割ですよ(笑)。試合に出ていないんでお金ももらえなかったし。

――90年代・全女の中心人物にのし上がるとは思えない扱いですね……。当時はどういう心境だったんですか?

アジャ ユニバーサルは全女にいるよりも、みんな優しくしてくれるんですよね。ご飯を食べに連れて行ってもらえるし、ギャラはもらえないけど、お小遣いをくれる人もいたし。私的には「超ラッキー!」みたいな(笑)。

──グウタラですね(笑)。

アジャ そりゃあ全女でも使われないですよねぇ(笑)。

――そんなセコンドのアジャさんに対して「おまえは誰だ!?」という野次が飛んだことで人生が変わるんですね。

アジャ そうなんです。「おまえは誰だ!?」ってお客さんに野次られまして、そしたら、最初に野次ったお客さんとは別のお客さんが「アジャだ!」って返したんです。そうしたら、また別のお客さんが「アジャって誰だ!?」って、また、別のお客さんが「アジャはアジャだ!」って……というやり取りで会場が凄く盛り上がって。一緒に来ていた全女広報部長のロッシー小川が「明日、アジャを試合に出そうと思う」と言いだして。

――なるほど。この盛り上がりを活かそうというわけですね。

アジャ それはいいんですけど、バイソンと入れ替えるんじゃなくて、岩本さんと入れ替えるというんですよね。

――それは岩本さんの先輩としてのプライドが……。

アジャ そうなんですよ! 岩本さんは2人にとって先輩ですからプライドは傷つきますよ。しかも帰りの車の中で言い出したので「別のところでこっそり言ってくれればいいのに……」って。

──車内で! それは気まずいですねぇ。

アジャ 岩本さんからすれば、後輩2人のセコンドになんかつくわけないですよね。車の中で「じゃあ明日、私は行かなくていいよね」って(苦笑)。ホント、あのときは気まずかった……。

──でも、これはチャンスだと思いました?

アジャ いやいやいや! だって「試合がなくて超ラッキー」と思っていた人間ですよ。それに「試合をやったところで、どうせねえ……」って感じでしたし。

――試合を盛り上げる自信がこれっぽっちもなかったんですね。ネガティブすぎます
よ!

アジャ そうなんですけどねぇ(笑)。今日の野次はたまたま面白かったかもしれないけど、プロレスファンはルチャを見に来ているんだから「女子の試合はウケないでしょ?」と。「まあ、いっか。ギャラもらえるし」ぐらいのやる気のない感じで試合に出たら、やることなすこと全部がウケるという。あんなにウケたのは初めてだったんですよ。

──いままでと何が違ったんですかね。

アジャ うーん、前日に見に来ていたお客さんがけっこういたし、「あのアジャが試合に出る」ということで面白おかしく観てやろうという心構えがあっただけだと思います。

──会場ができあがっていた。

アジャ デブでセコンドにいるだけだった人間が今度は試合に出る。「どんなことをするんだろう? 笑ってやろう!」というね。そんな雰囲気の中、私が試合をしたら「あいつ、意外とちゃんと動けるぞ!」と。そこで中野さんとの猛練習が活きてくるわけなんですよね。

──ああ、偶然じゃなくて必然だったんですね!


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