佐山サトルさんに「Uインターなんて、あんなところに行っても全然練習にならないから無駄だよ」とか言われたみたいなんだよね
――UWFインターの後継団体として旗揚げされたキングダムですが、道場は麻布にあったんですよね。凄い場所にありますね(笑)。
金原 そのビルの中に合宿所と道場、事務所が入ってたんだよね。
――金原さんはその合宿所に寝泊まりしてたんですか?
金原 いや、俺はもう合宿所は出てた。そこには山本喧一、松井(大二郎)、上山(龍紀)、豊永(稔)が住んでいてね。
――そのほかのキングダムのメンバーは、安生(洋二)さん、佐野(巧真)さん、高山(善廣)さん、桜庭(和志)さん、垣原(賢人)さんですね。しかし、6階丸ごとキングダムは凄いですねぇ。
金原 各階60平米くらいの広さで、地下は“和田(良覚)の部屋”と呼ばれててウエイトトレーニング専用。1階は事務所、2階はレスリング五輪代表だった安達(巧)さんがコーチのグラップリング専用スペース。3階はムエタイのボーウィー・チョーワイクンが打撃を教えて、4階がちゃんこ部屋。5階が合宿所で6階は何があったか忘れた。地下の和田さんを倒せないと上に進めないみたいな感じだから、ブルース・リーの『死亡遊戯』みたいだったよ(笑)。
――勝ち残った人間だけが、ちゃんこ部屋にたどりつくという(笑)。それだけ環境が整ってると、普通にジムとして運営できますよね。
金原 いや、最初の予定では一般の人も通えるジムにして、キングダムの選手たちが教える話もあったんだよね。結局やらなかったけど、いま振り返ってみても最高の練習環境だったよね。Tさんもいないしさあ。
――ハハハハハハ!
金原 いつもの1日のスケジュールは、午前中に2階の安達さんの部屋に集まって、レスリングや関節技をやる。昼飯を食ったあとはおのおの昼寝。ビルは凄く広いからね(笑)。午後は和田の部屋や打撃の部屋で練習して。
――外部の選手が出稽古に来てたりしてたんですか?
金原 誰が来てたかなあ。エンセン(井上)は何回来てたけど、それはUインターの頃からの話だから。
――あの当時、修斗の人間がU系の道場に練習に来るって相当凄いことですよね。修斗は格闘プロレスの存在を全面否定していたわけですし、スパーリングなんかやったら殺伐としそうで。
金原 宮戸(優光)さんがいたらそんな雰囲気になってたかもしれないけど。Uインターの末期は宮戸さんもTさんもいないし、交流の意味でのスパーリングだったから、相手を壊してやろうとか極めてやろうという感情はないよね。「どんな技術を持ってるんだろう?」ってお互いに勉強するためにやるわけだしね。
――だからその後も交流が続いてたんですね。
金原 うん。そもそもエンセンと交流することになったのは、エンセンがたまたま新日本とUインターの対抗戦を見たからなんだよ。両国でやった試合を見て「Uインターの選手は強いと思う」と興味を持って。それから当時の修斗にヘビー級の練習相手がいないこともあって、「練習をしたい」という話があったんだよね。
――金原さんたちUインター勢も柔術系の選手とスパーすることの意味は大きかったんですよね。
金原 凄く大きかった。ガードポジションとか知ってはいたけど、どういう技術なのかはわからなかったから。Uインターにはガードポジションの概念がなかったんで、「抑えこまれてもガードに戻せばいいんだ」ってことは眼から鱗だったよね。まず俺らは寝技で抑えこまれたら「亀になって立つ」という発想でしょ。「下の体勢からこんなに極められるんだ」「こんな動きがあるんだ」って衝撃的だったよね。
――やっぱり実際にやってみないとわからないもんなんですね。
金原 エンセンとやってみて思ったのは、柔術とUインターでは寝技の流派が違うって感じかなあ。空手でもいろいろと流派があるでしょ。それと同じで寝技でも流派があるんだなって。だからお互いをミックスしたら凄いんじゃないかなって直感的に思った。それはエンセンにも言えることで「やっぱりUインターの人たちは強かった」という感想だったから、お互いにメリットはあったよね。
――Uインターのプロレスラーは弱くなかった、と。
金原 まず俺らの身体能力が高いことに凄く驚いてた。
――選ばれた人間だけが入門できて、そこから地獄のトレーニングを潜り抜けてきたわけですもんね。
金原 技術的には、亀の姿勢から極める技にビックリしてた。「こいつら、簡単にバックを取らせるけど、そこから腕を極めるのか」って。
――のちに桜庭さんがPRIDEなんかでよく見せた、バックからの腕取りですね。
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