小飼弾です。風邪がどこかの国の不況のごとく慢性化しつつあってやや涙目なのですが、今回は本ブロマガに寄せられた質問の中でも一番の難問にお答えします。
200 Any Questions OK
Q. 投票した候補が勝ったためしがない
選挙権を得てから20年。今まで一度も欠かさず投票してきたのですが、投票した候補が当選したことが一度もありません。私は人生をその分ムダにしてきたのでしょうか?
Q. 投票したためしがない
今年30歳になりましたが、まだ一度も投票したことがありません。私は国民としての義務を果たしていないのでしょうか?果たしていない以上、どんな政策を実施されても文句を言う資格がないのでしょうか?
A1. 「多数決にならなかった」わけ
まずは次の図をご覧下さい。
これは「もし全国1区比例代表ドント方式なら議席配分はどうだったか」の図を私がさらに増補したものです。一番上が、全有権者に占める各党への投票数、そして一番下が実際の議席数となります。
政権与党の獲得票数は過半数どころか1/4程度。四割を占める「無投票」に遠く及びません。それでも政権を取れてしまうのが、現在の選挙制度だということをまず再確認しておきましょう。
選挙制度というのは、ごくわずかな設定の違いだけでも簡単にこのような結果を生み出します。たとえば決選投票の有無。決選投票がない場合、m人が立候補しn人が投票した選挙区で当選するのに必要な最低各得票数は、 (n/2) + 1 ではなく (n/m) + 1 となります。4名が立候補していれば、過半数ではなく1/4で当選してしまうのです。残りは死票となるわけですが、今回の衆議院選における死票率は56%におよびました。
そもそも四割が投票せず、そして投票したうちの過半数が死票。投票が当選に結びついた有権者の割合はわずか26.4%。「投票した候補が勝たない」のは、むしろ圧倒的過半数なのです。
民主党の最大の失敗が、ここにあります。彼らは政権をとるやいなや、「政治をしはじめてしまったの」です。彼らがまずやっておくべきだったのは、彼らがより安心して政治に取り組める体制を作ることだったのに。
細かい事はもう3年も前に「民主党が次の参院選までにやっておくべきこと」に書いたのでここでは繰り返しませんが、「自分たちがより安心して」といっても、我田引水の必要すらなかった。一票の格差を縮小するだけでよかったのです。
優れた大工は、一日八時間のうち最初の六時間は道具の手入れに費やすといいます。なまくらな刃物で力任せに仕事しようとした結果がこうなったのはむしろ当然のように私には思えます。
A2. 多数決が「正しい」わけ
実はここからが本題です。仮に「より民意を反映する」、死票が生じにくい選挙制度を導入したとして、これまで死票を投じて来たみなさん(私含む)や投票所に足を運ばなかったみなさんはそれで満足するのでしょうか?多数決によってあなたに不利な政策が選ばれても、それに唯々諾々と従えるか、ということです。
そのためには、「なぜ多数決か」を改めて考える必要があります。
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