member:咲 / 文 / 義 / 啓
*紙面にはwebでは使ってないライブ写真有
心が傷ついたときは、甘い暴力のライブに足を運べ。
そして、あるべき自分の姿を取り戻せ!
甘い暴力がこの秋に行った全国ツアー「甘い暴力プレゼンツ「幸せな奴は甘い暴力を聴くな」」。ここでは、チケットがSold Outした11月29日(月)に愛知ElectricLadyLandで行われたライブの模様をお届けしたい。
開場時の場内には、甘い暴力の楽曲の歌詞をAIが読み込む朗読?が延々と繰り返し流れていた。改めて歌詞だけを聴いていると、かなり過激でグチョグチョだ。彼らは甘い表情を見せながらも、じつはグチョグチョなほどヤバい連中。それを示すような嬉しい演出だ。
幕が開いたその先には、楽器を手にしたメンバーたちの姿があった。義のベースの音色が、螺子の外れたような歪んだ音を鳴らしだす。そこへ絡むドラムの演奏。その音へ導かれるように、ヴォーカルの咲がラップをしながら姿を現した。とてもデンジャラスな空気をまとった始まりだ。甘い暴力のライブは、その雰囲気通りの様を示した「危険人物」から始まった。お立ち台の上に立つ咲が、演奏陣が、舞台の上からドス黒い音を突きつけ、観客たちを刺激する。彼らの煽りを受け、フロアでは観客たちが飛び跳ね、頭をガンガン振り乱していた。早くもこの会場は、危険人物たちが巣くう場と化していた。
熱を持って演奏が駆けだした。甘い暴力は、甘くメロディアスな歌とロックンロールの衝動をミックスアップした「夜乙女」を歌い奏で、観客たちの心を激しく、妖しく乱してゆく。とても艶かしいパフォーマンスだ。甘い声色も見せながら。でも、しっかり観客たちに熱と圧を与え続けていく。その刺激に犯され、恍惚した感情が治まらない。
狂おしいほどの前戯は、まだまだ終わらない。甘い暴力は、伸ばした音の手を「前戯」を通してさらに激しくこねくりまわしていた。この刺激がもっと欲しい。その刺激の源となった彼らの本能や欲望を「もっと知りたい」。
序盤から甘い暴力は、甘さと激しさをぐちゃぐちゃに掻き混ぜた音楽で熱い刺激を与え続けてきた。でも、彼らの暴欲な面はここからが本番だ。身体を激しく揺らす重厚なサウンドと、がなる咲の煽り声がフロア中に響き渡る。甘い暴力は「ミナゴロシ」を叩きつけ、観客たちを、騒ぎ狂う螺子の外れた人形へ変えてゆく。激しい転調を繰り広げるトリッキーな楽曲を武器に、甘い暴力は観客たちの理性をどんどん奪い去っていった。誰もが、破壊力を持った甘い暴力の熱情した演奏に心殺されていった。
激しく頭を振り過ぎたのか、三半規管がおかしくなってゲロを吐きそうだ。なのに彼らは,もっともっと狂っちまいなよと轟音ハードコアナンバー「ゲロ」を突きつけ、観客たちを容赦なく攻め続けてゆく。止まんないよ、興奮が。もっともっとグチャグチャになってしまいたい!!
狂え、狂え、もっと狂っちまえ。優しいギターの音色の上で、絶叫し続ける咲。これまでの激しさが嘘だったように、甘い暴力は温かな旋律の数々を奏でながら、見ている人たちの身体を優しく揺らしていった。でも咲は、言葉を次々と吐き出すように「天使でいたかった」を、かなるようにポエトリーしていた。狂うとは激しく騒ぐことばかりではない、心の奥底を痛くなでまわすことでも十分気が違ってゆく。甘い暴欲も、彼らなりの攻めた手法だ。
「俺、めちゃくちゃ煽るけど、状況が状況だから無理すんな。俺ら、わかってるから。お前らと絆を深めたい。俺は幸せからほど遠いところで生きてきたからこそ、幸せに執着しようとしていた」。咲の言葉を受け、ライブは次のブロックへ。
グチョグチョになるほどに熟したみずからの傷口を晒すように、甘い暴力は雄大な景観を描く「傷口」を演奏。スケールあふれた曲とは裏腹に、この歌はとても生々しい。痛みを晒した心の傷口を広げるのではない、その傷口を優しく嘗め、少しでも痛みが治まるようにと彼らは歌い、奏でていた。みずからの痛みを晒しながら、振れた人たちの心の痛みに寄り添っていた。それこそが、病んだ感情の傷口を塞ぐ一番の良薬なのを彼らは知っているからこそ…。
街の喧騒が流れる場内。その雑音へ導かれるように、甘い暴力は「神様に言ってやろ」を突きつけた。重厚な義のベース音が身体の奥へ奥へと浸透してゆく感覚が心地好い。重さと荒々しさを重ね合わせ、甘い暴力は「いけなんだ いけないんだ 神様に言ってやろ」と歌い叫びながら、観客たちを"いけない世界"へ導いてゆく。でも、いけない世界にこそ、僕ら、私たちが欲しい興奮や恍惚、欲望が満ちている。いけないのを知りながらも、その欲望を手にしたい。そこで、彼らともっと愛欲を深めたい。
文の掻き鳴らすギターが、胸を熱く騒がせる。その上で、歌いあげる咲の歌声がなまめかしい。楽曲は「愛罰」へと変貌。甘い暴力らしい愛欲を示しながら、彼らは満員の観客たちを、罪作りないけない欲望の世界へ連れだしてゆく。甘い暴力は、汚れない心を欲に満ちた演奏と歌声で赤々と汚していった。そんな痛い興奮こそが、じつは一番印象深く心に刻まれてゆくのも事実。だから、もっともっとその音で汚してほしい。
楽曲は止まることなく「どくいりきけん、聴いたら死ぬで」へ。啓の叩きつけるドラムビートを合図に、狂気を帯びた音がグサグサと身体を突き刺してゆく。咲は、お立ち台の上から観客たちを激しく煽りたてる。フロア中の人たちが激しく頭を振り乱し、理性をどんどん消し去っていた。それ、危険な衝撃だ。でも、それに病み付きになってしまうんだもの。求めたくなるのも当然だ。危険なものほど、その衝撃を欲しくなる。
「お前らともっと愛を深めたいと言ったろうが、どこまでもイコうか!」。絶頂へ浸りたい気持ちへ、熱狂に溺れたい感情へ止めを射すように、甘い暴力は「トドメ」を演奏。もうとっくに理性も感覚もグチャグチャだ。あるのは、本能へ導かれるままに飛び跳ね、頭振り乱す行動のみ。激しくイカせる、その感覚に止めを刺された??いやいや、もっともっとその刺激をぶつけてくれないか!!
MCでは、「不幸エピソード」と題し、メンバーそれぞれが不幸のどん底に落ちたエピソードを語りだす。でも、4人中3人がフィクションで、1人だけがノンフィクション。それを当てるゲームだ。
義は、「二十歳のときにエッチなサイトを見て架空請求サギにあい、40万円振り込んだ」と発言。啓は、「寝てる間にゴキブリを食べさせられた」と言い出した。咲は、「痴漢の冤罪騒動に巻き込まれ、裁判にまで発展した」と当時の苦労話を語っていた。文は、「大阪の祭りのひよこ釣りで釣ったひよこを鶏まで育てたのに、ある夜いなくなったと思ったら晩御飯の食卓にから揚げとして出てきた」と語っていた。
正解は、啓。一番フィクションのような話がノンフィクションだったとは。彼は、男4人と一緒にワンルームに住んでいたときに、寝てる間にルームメイトたちに勝手に口にゴキブリを入れられていたそうだ。
ライブも後半戦へ。甘い暴力は「いざ、尋常に!」を演奏し、ふたたび観客たちを上へ上へと跳ねさせた。キャッチーだけどトリッキーな要素も内包した楽曲を通し、甘い暴力はフロア中に騒ぎ祭る景色を描きだしていた。フロア中に咲き誇る数多くの手の花が狂ったように乱れていたのも、美しい光景だった。
「ほんま、ダルいわぁ」の咲の言葉を合図に飛びだしたのが、甘い暴力流のファンキーなダンスロックナンバー「ダルい。」。激しく跳ねた演奏に乗せ、観客たちが跳ねだした。その様を見ながら、みずからもステップを踏みながら咲は歌っていた。みんなで一緒に踊り狂おうじゃないか。身体を揺らそう。それが快楽へと繋がる最短の道なのだから。
「ここからもっともっと俺たちとお前らは愛を深めあって、幸せになるんだろうがー!!」。咲の言葉を合図に、甘い暴力は熱狂の景色を作り上げる共犯者になろうと誘うように「共犯者」を演奏。終盤にポップでトリッキーな楽曲を演奏し、観客たちの緩んだ螺子の螺子穴まで溶けさせるプレイに出るとは。さすが、曲者な連中らしい冴えたいじり方だ。
次に披露したのが、会場限定で販売中のシングル曲「乱痴気卍娘」。タイトル通り、フロア中の娘たちを乱痴気騒ぎの中へ巻き込む熱狂暴欲チューンだ。フロア中の人たちが化粧崩れなど忘れ、ヒステリックに騒ぎ狂う様が最高だ。途中、メンバーらの煽りに合わせ、会場中の人たちが「適当!適当!」と心の中で叫びながらピースサインし続けていた姿も印象的だった。
甘い暴力は、観客たちをもっともっとヒステリックな美獣たちへ変えるように「ヒス症」を叩きつけ、容赦なく煽りたてていた。アガる、アガる、イッてしまいたくなる。熱狂に塗れた中で騒ぎ狂ってこそライブ。コロナ禍以降なかなか味わえなかったライブらしいライブを甘い暴力が目の前に示していた。だから、激しく身体を折り畳み、その場で飛び跳ね続けてしまう。心の音頭が、止めどなくアガっていく。
「仕上がってきたな、おい。バンギャらしくなってきたな。俺らが夢見てたのはこんな景色だったよ。この瞬間がいつまでも続くように願い、しっかりやりきるんだ。そしたらお前らと心を繋げられる。いこうぜ、これが俺たちの心の温度!」
沸き立つ心の衝動を、咲は語るように歌いだした。演奏が一気に激しさを持って駆けだすのを合図に、「心の温度」が火を吹いた。歌声や演奏し駆使し、緩急巧みに表情を付けながら、甘い暴力は心の中に渦巻く思いを熱を高めながら吐き出し続けていた。気持ちが猛々しく騒ぎだす。心が暴走し出す。
「暴動」を合図に、満員の観客たちが熱く手拍子すれば、全力で頭を振り乱しだす。彼らは「やっちゃえ、やっちゃえ」と煽っていた。「暴動」を通して、この会場にいるすべての人たちの本能に火をつけ、荒ぶる野獣へと変えていった。止めようにも、もう止められない。本能のままに騒ぎだした感情は、限界など超えながら暴走し続けてゆく。
「イッちゃって」の声を合図に、甘い暴力は最後に「好きな人でしかイケません。」を演奏。冒頭から最後までズーッと熱を高めたまま。いや、ズーッと昂る感情の温度を上げ続けたまま、彼らは、なりたい自分に変えてくれた。無邪気な笑顔を浮かべ、最強で最狂の自分になれる。舞台上のメンバー自身が、自分たちのライブを通して最高の自分になっていた。それも、目の前にいる仲間たちが一緒に熱狂の中で熱くまみれていたからだ。互いに激しく求めあったからこそ生まれた絶頂の光景。これがライブだ。互いに求め愛うライブを、甘い暴力はしっかりと見せてくれた。「また殺し愛おう」の言葉。ぜひ、交わし愛たい。
本気でヤバいライブだった。でも,そのヤバさこそが、みんながライブに求めている本能だ。それを今、改めてこの時代の中で感じれたことが嬉しかった。心が傷ついたときは甘い暴力のライブに足を運べ。そして、あるべき自分の姿を取り戻せ!
PHOTO:Fugu
TEXT:長澤智典
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≪21年12月号 LINE UP≫
12月20日(月)18:00 Psycho le Cému / GOTCHAROCKA
12月21日(火)18:00 甘い暴力(LIVE repo) / 11月21日 Vijuttoke pre.「レポっとけ!」 (LIVE repo)
12月23日(木)18:00 シンデレラキャッスル / Zeke Deux / ANSIFLE
12月24日(金)18:00 OFIAM / パラダイム × REVIVAL OF THE ERA
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