昨年起こったコロナ禍の影響により、LM.Cの2020年は大幅に活動をセーブした1年となった。配信ライブや音源のリリースなどがないことを心配したリスナーも多かったと思うが、彼らはコロナ・ショックに襲われて無気力になってしまったわけではない。そこには彼らの明確な思考や判断があったようだ。
昨年12月29日に放送された【HAKUEIのニコ生ラジオ「居酒屋はくえい“年末特番”」】にゲストとして招かれたAiji(g)をキャッチして、コロナ禍の中で思っていることや今後の展望などについて話してもらった。
Interview:村上孝之
メンタル的な面もそうだし、物理的な“物”に対しても、もう断捨離しまくりました。
――今日は2020年を振り返っていただこうと思っています。コロナの影響で昨年3月頃からアーティストは普段どおりの活動ができなくなっていきました。当時は、どんなことを思っていましたか?
Aiji:LM.Cは3月から5月までツアーが決まっていたりしたので、困ったことになったなとは思いましたね。ただ、慌てても仕方ないので、当時は状況を見守ることにしました。ツアーは延期・中止することにしたけど、それは自分達だけじゃなくて、どのアーティストもそうせざるを得ない状況でもあったから仕方ないなと思ったし。
ただ、LM.Cの運営は全部自分達でやっているので、経営って意味では痛手でしたね。活動ができないと売上が立たないので。とはいえ、基本的にはあまりジタバタしないタイプなので、自分なりに情報収集をしながら、自分達が思う正しいジャッジをしていきたいなと思っていました。
――冷静に状況を捉えていたんですね。それは長く活動されていることに加えて、2011年3月11日に起きた東日本大震災を経験されていることも大きいような気がします。
Aiji:それは、あるかもしれない。“3.11”のときも、しばらくライブは自粛しようということになったんですよね。当時は音楽事務所に所属していたので、今とはまた思考やスタンスが違っていたけど、そのときの経験というのは活きているような気がします。
ただ、“3.11”のときとは様相がかなり違っていますよね。大きな地震は世界各地でわりと頻繁に起こるけど、今回はウイルスじゃないですか。しかも、ちょっと様子がおかしいというか。未知のウイルスによるここままでの世界規模なパンデミックというのは、今生きてる人類が初めて経験することだから、正しい答えがないのは仕方ないとは思うんですよ。
でも、適当なことは言えないけど、ちょっと陰謀論的なことを信じたくなるような部分もある。マスコミも変じゃないですか。感染者の数ではなくて、陽性者の数で大騒ぎしていたりしますよね。陽性反応が出ただけで発病していない人も感染者としてカウントされたものを報道して。NHKですらそうだから。つまり、不確かな情報が蔓延しているわけですよ。だから、俺はもう5月以降はほぼテレビは観ていないです。
どこの局のワイドショーも視聴率を取りたくて不安を煽るような報道ばかりするし、もう日本の報道機関はダメだなと思って、ニュースすら観なくなった。昔からずっと観ている『情熱大陸』と『アナザースカイ』だけは観ていますけど(笑)。
――どちらも、いい番組ですよね(笑)。では、“STAY HOME”期間中は、どんな日々を過ごされていましたか?
Aiji:自分なりにコロナのことを調べたりしていました。そのうえで自分の考えに近い大学教授とか、感染症の専門家のブログやコメントを読んだりしていましたね。情報を一方的に与えるテレビと違って、ネットは自分で情報を選択できるところが強みだと思うんですよ。ただ、ネットはあまりに情報が多すぎるし、リアルもフェイクも錯綜しているので、ソースをどうやって選別していくかということが大事になってきますよね。
なので、そこは気をつけるようにしています。今回のコロナ禍の中では情報に対して完全に受け身でいると、不安を煽る報道が多いので、割とメンタルがやられていく思うんですよ。テレビと新聞しか情報源がないうちの親と話をして、ビックリしたんです。思考が極端に偏っているんですよね。なので、テレビを観るのはいいけど、鵜呑みにするのはやめるように言いました。それに、情報を選ぶということにつながるけど、STAY HOMEが始まってから自分にとって必要なものと必要じゃないものを見極めたほうがいいなと思って。
メンタル的な面もそうだし、物理的な“物”に対しても、もう断捨離しまくりました。
――コロナ禍が起こったことで、いろいろなことに気づいた人は多くて、そういう意味ではコロナ禍も悪いことだけではない気がします。
Aiji:そう思います。コロナがきっかけになって思考の整理ができた人はいいんですが、逆に不確かな情報とかに振り回されて不安になってしまって、いろいろ抱え込んでいくようなタイプだとちょっと渡り歩けないというか、サバイブできないですよね。自粛期間中はそんなふうにずっとコロナのことを調べたり、勉強したりしていて、あんまり音楽のことは考えられなかった。
“3.11”のときもそうだったけど、そういうメンタルではなくなるんですよ。大きな危機に直面すると、エンタメは自分の中で一番大事なものではなくなってしまう。今回も”音楽を作る”というモードには中々なれなくて、とにかく確かな情報が知りたいという気持ちが強かったですね。
――Aijiさんと同じようにコロナのことを調べたアーティストもいれば、時間があることを活かして自身のプレイなどを見つめ直した方もいたようです。
Aiji:その辺は、わかれるんじゃないかな。粛々と楽器に向かった人と世の中とコミットしていかないとって思った人に。自分の場合は会社のことも含めて、いろんなことを最終的にジャッジする立場なので、間違った情報に振り回されたくないというのが根底にあるんです。なので、コロナのことだったり、世の中の趨勢だったりを、とにかく調べていました。
――自身がやるべきことが明確に分かっていたんですね。とはいえLM.Cの活動を完全に止めてしまったわけではなく、ネットで生配信したり、オンラインで“Meet & Greet & サイン会”などを開催されていました。
Aiji:コロナ禍の中でやれることをやろうという話になったときに、いわゆる無観客の配信ライブというのはやりたくなかったんです。それは自分達のライブのスタイルにはフィットしないから。無観客の配信ライブ以外の選択肢として、普段喋らないような話ができる場を作ることにしました。YouTubeから始まって、ツイキャスに流れていった感じでしたね。
LM.Cはファンに対してオープンな方だと思うんです。自分達のキャラクター的な部分でイメージを作り過ぎたりはしていないし、割と素をさらけ出している。なので、トークのみでの生配信も苦にはならないんですよ。そこを活かして、生配信でファンの人が聞きたいことに答えたりする場を作りました。リアルタイムで同じ時間を共有できるというのは大事なことだと思うし、そういう場を設けることで、ファンの人達の不安な気持ちや淋しさを少しでも和らげることができるといいなと思ったんです。
――ファンの方は、本当に嬉しかったと思います。そして、10月30日・31日に【LM.C Club Circuit ’20 -Halloween-】と銘打った有観客ライブを白金SELENE b2で行ないました。
Aiji:ライブをする前に、ボーカルのmayaの誕生日の7月30日に渋谷CLUB QUATTROでバースデー・イベントをしたんです、有観客で。感染予防の対策をちゃんとして、オペレーションも考えつつ密にならないように1日3回しという形にしたんですね。そこでコロナ禍の中での有観客ということを経験して、ちゃんと対策をして、ファンもしっかりした意識で来てくれればライブもできるなと思ったんです。
――実際、今のところライブそのもので感染者が出たり、クラスターが発生したりはしていないですよね。
Aiji:そう。音楽だったり、バンドだったりが好きな人は意識が高いんですよ。すごくマナーもいいし、禁止されていることは絶対にしない。それは音楽をやっている側の姿勢が反映されているのかなという気もしますね。
――同感です。今回のコロナ禍の中でいろいろなミュージシャンと話をして、根が真面目で、ファンのことを大事にしている方が多いことをあらためて感じました。
Aiji:もちろん人によっていろいろだろうけど、特に長く活動してるミュージシャンは基本的には質が高いというか、言い方が不適切かもしれないけど、民度が高い人が多い気がします。ファンというのはアーティストを映す鏡みたいな言い方される事もあるし、ファンも意識の高い人が多いんじゃないかな。
だから、7月30日を経て、10月にライブをやろうと決めたときも全く心配しなかった。きっと感染者は出ないだろうと思ったし、ライブをした後11月中旬にファンクラブの旅行イベントもしたけど、そのときも大丈夫でした。
【第一回目はこちら】https://ch.nicovideo.jp/club-Zy/blomaga/ar1988458
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