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高野孟:崩壊したアベノミクスから理論的教組も逃げ出した

2016/01/26 08:00 投稿

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安倍晋三首相は18日の国会答弁でも、「景気は緩やかな回復基調を続けている」と、呪文のように決り文句を繰り返したが、そうならば東京株式市場の日経平均が3日連続で下落、同日ついに1万7000円を切るなどということがなぜ起きるのか。年明けからの10営業日で昨年末の終値に比べて1割以上マイナスというアベノミクス始まって以来、最大の下落である。

 マスコミの解説はおおむね、米連銀の利上げ、原油安、中国経済の減速など外部要因ばかり挙げていて、確かにこれは世界的な株安連鎖の一環だから、それらの要因が影響しているのは間違いないが、かといって何もかも「他人のせい」にするのはいくらなんでも無理で、「いよいよ株価頼りのアベノミクスの魔術は化けの皮の剥がれる時を迎えた」というトレンド認識を持つべきではないか。

 去る11月の6〜9月期のGDP速報値が年率換算0・7%のマイナスで(確定値では1・0%プラスにはなったのだが)、2四半期連続のマイナスとなったのを受けて、その時でも日本のメディアは「景気回復の動きが足踏みを続けている」(朝日新聞の安倍に優しい表現)などと報じていたのに対し、米欧主要メディアは、アベノミクスは「失敗に終わった」(ロイター)、「抜本的に再考を」(ウォールストリート・ジャーナル)、「成功しなかったのは明らか」(ニューヨーク・タイムズ)などと、一斉に見切りをつけるような論調を掲げた。

 それを見て、私は「ああ、これはもう、ヘッジファンドはじめ海外投機家たちが日本市場から逃げ出す準備に入るな。年末か年明けにそれが顕在化するだろう」と観取した。当時それを口にすると、「ちょっと先走りじゃないの」と言われたりしたが、私の判断の基礎には、それ以前、10月20日付のニューヨーク・タイムズ電子版のコラムでノーベル経済学賞授賞者でリフレ派=インフレ・ターゲット論の教組ともいうべきポール・クルーグマンが「リフレ理論は日本では通用しなかった。ご免なさい」という趣旨の長々とした弁解論文を書いていたという事実が重く横たわっている(このことも日本のマスコミは無視した)。

 教組が撤退してしまっては、その亜流というか輸入代理業の浜田宏一内閣参与や岩田規久男日銀副総裁らのアベノミクス・ブレーンらもお終いで、つまりアベノミクスはすでに理論的にも崩壊していて、それが3カ月遅れで相場に具体的な姿を現し始めたのが今である。(日刊ゲンダイ1月21日付から転載)


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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
Facebook:高野 孟

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