旧知の自民党ベテラン県議から連絡があって、東京に来ているのでちょっと会おうとお誘いがあった。何かと思えば、「安倍晋三首相が国会で『日教組はどうした』などと野次を飛ばしているのを見て、こりゃあもうダメだ、こんな奴をいつまで総理に置いて日本はお終いだと思い詰めて上京し、何人かの大物幹部と会って意見交換した」のだと言う。「だって、あれは品格とかいう以前の問題で、総理が予算委員会の閣僚席からヘイト・スピーチを吐いているようなものでしょう。『日教組』という御札を突き付ければ野党議員は黙るだろうと思う、その時代錯誤。しかも、日教組が国から補助金を貰っていると思い込んでいた無知、無教養。カッとなると自分を抑えられない幼児性。今どき、うちの県会にだってこんな馬鹿な政治家はいないよ」と、まあボロクソなのだ。彼はもともと宏池会系のハト派だということもあるが、春の統一地方選を控えて余計に危機感を募らせたのだろう。
彼の怒りの言葉を浴びながら、一昨年6月の本欄で、安倍に「自己愛性人格障害」の疑いがあると書いたことを思いだした。「ささいなことでも自分のやり方に注文をつけられると、相手かまわず激しく反撃に出る」「気紛れで、気分がよいとペラペラと長広舌をふるうが、機嫌がわるいとささいなことで怒鳴り声をあげ、耳を疑うような言葉でののしったり、見当外れな説教をしたりする」「明らかに過ちを犯しても、謝罪は口だけで、心の中では自分が正しいと思っている」等々。
さてそれで、自民党の大物幹部たちと会ってどうだったのか。「みなさん、あの野次で『なんとか我慢して安倍政権を支えていこうという気持ちがすっかり萎えた』と言っている。二階俊博総務会長や福田康夫元首相など親中派は本気で動き出すでしょう。河野洋平元議長も最近の講演で『いまは保守政治でなく右翼政治だ』とはっきり言ったようだし、古賀誠元幹事長も何やら生々しい動きを始めていて、引退した大物OBも含めて『保守政治を取り戻そう』という流れが出て来て、ひょっとすると『9月政変』はありですよ」と彼は言った。
確かに二階はこのところ存在感を増している。2月に安倍の朴槿恵宛の親書を携えて訪韓した際には全国の観光協会を通じて募集した1400人の観光団を連れて行った。5月には3000人の大訪問団を編成して北京に乗り込む。米国から「中国、韓国との関係を何とかしろ」と再三言われている安倍外交がいよいよ行き詰まった時には「俺の出番だ」というデモンストレーションなのかもしれない。▲
( 日刊ゲンダイ3月12日付から転載)
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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
彼の怒りの言葉を浴びながら、一昨年6月の本欄で、安倍に「自己愛性人格障害」の疑いがあると書いたことを思いだした。「ささいなことでも自分のやり方に注文をつけられると、相手かまわず激しく反撃に出る」「気紛れで、気分がよいとペラペラと長広舌をふるうが、機嫌がわるいとささいなことで怒鳴り声をあげ、耳を疑うような言葉でののしったり、見当外れな説教をしたりする」「明らかに過ちを犯しても、謝罪は口だけで、心の中では自分が正しいと思っている」等々。
さてそれで、自民党の大物幹部たちと会ってどうだったのか。「みなさん、あの野次で『なんとか我慢して安倍政権を支えていこうという気持ちがすっかり萎えた』と言っている。二階俊博総務会長や福田康夫元首相など親中派は本気で動き出すでしょう。河野洋平元議長も最近の講演で『いまは保守政治でなく右翼政治だ』とはっきり言ったようだし、古賀誠元幹事長も何やら生々しい動きを始めていて、引退した大物OBも含めて『保守政治を取り戻そう』という流れが出て来て、ひょっとすると『9月政変』はありですよ」と彼は言った。
確かに二階はこのところ存在感を増している。2月に安倍の朴槿恵宛の親書を携えて訪韓した際には全国の観光協会を通じて募集した1400人の観光団を連れて行った。5月には3000人の大訪問団を編成して北京に乗り込む。米国から「中国、韓国との関係を何とかしろ」と再三言われている安倍外交がいよいよ行き詰まった時には「俺の出番だ」というデモンストレーションなのかもしれない。▲
( 日刊ゲンダイ3月12日付から転載)
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THE JOURNAL編集部
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