じつは、僕はその日の朝からワクワクしていた。池上さんとお会いするからだ。津田さんとは何度も討論や対談をしている。だが、池上さんと会うのは初めてなのだ。
「激論」の会場は早稲田大学だ。津田さんと僕にとっては母校である。だが、池上さんは慶応出身なので、「アウェイ」の気分だったろう。とはいえ、池上さんとの「初対決」に、僕のほうが緊張していたかもしれない。
現在の日本のジャーナリズムでは、池上さんは特異な存在だ、と僕は思っている。あらゆる分野に興味を持ち、そしてしっかり調べ、その本質まで明らかにして、報道する。なによりも、とても努力家だ。
池上さんは政治家などに対し、とても聞きづらいことでも遠慮せずに質問を投げかける。テレビ局が嫌がることでも、本音を聞き出すために、ずばずば斬り込んでいく。「タブー」を恐れないところ、そこが僕と似ているかもしれない。
だが、その先が僕とまったく違う。僕は、ときに批判を受けるくらい、自分の意見をストレートにはっきりと出す。だが池上さんは、「自分の提言や意見はおこがましくて言えない」とおっしゃっるのだ。そして、ニュースや社会問題を丁寧に解説する。
いままで、池上さんに対して、そういう印象しか持っていなかった。だが、今回の「激論」で気づいた。池上さんは、「解説する」というスタイルでありながら、自分の意見をみごとに語っているのだ。視聴者に押しつけることなく、解説をしながら、自然に自分の意見を述べていた。
僕は、そんな器用なことはできない。批判されても、強引だと言われても、どんどん持論も述べていく。このスタイルは変えるつもりもない。
視聴者にとっては、まったく異なる人間だと感じるだろう。だが、日本の行く末を案じ、日本がよい国であってほしい、という想いを持っていることだけは、共通していた。池上さんとの出会いは、非常に興味深く、刺激的なものだった。
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