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田原総一朗:「新成長戦略」を阻む「外と内」の抵抗勢力とは?

2014/07/10 09:00 投稿

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  • 田原総一朗
6月24日、政府は「新成長戦略」を閣議決定した。いわゆる、アベノミクスの「第三の矢」だ。ここからが正念場といっていいだろう。

だが、その内容をよく見ると、そこかしこに「抵抗勢力」の痕跡がある。だから、本当にこの「新成長戦略」をやり遂げれられるのかと、僕は安倍さんに問いたくなるのだ。

例えば、新成長戦略の「日本企業の収益を高めるためコーポレートガバナンスの強化」である。具体的には、企業は「社外取締役を1人以上」置くという内容だ。だが、社外取締役が1人では、到底足りないのではないか。

欧州では、役員の4分の1以上が社外取締役だ。アメリカに至っては、社外取締役が半数以上と決められている。「新成長戦略」にある「1人以上」というのは、強く反対する経団連に歩み寄った結果であることは明白だ。

もうひとつ例をあげよう。農業改革だ。「新成長戦略」では、「農水産物の輸出を平成32年に1兆円、平成42年に5兆円に」と高らかにうたっている。農業を輸出産業にしよう、というのだ。僕は、おおいに賛成だ。

だが「規制改革実施計画」を見ると、「全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする中央会制度は新たな制度へ移行」と極めてあいまいになっている。本当は農協を解体し、株式会社にしたかった。だが、これもまた全農からの強い反対があったのだ。

これまでの体制で、日本の農業を、輸出力のある「攻めの農業」に変えることが、果たしてできるのか。僕は、懐疑的にならざるをえないのである。

安倍内閣は、本当なら「雇用の流動化」も盛り込みたかった。いま、大手企業の正社員は、非常に解雇しづらい。この状況が、大量の非正規社員を生む原因となっているのだ。さらにいえば、格差問題の原因のひとつもここにある。

だから、解雇しやすいようにして、「流動化」をはかろうとしたのだ。流動化すれば、人材が余っている産業から、人材を必要とする新産業に流れていく。経済の活性化にもつながる。しかし、メディアは「解雇の自由化」などと書きたてた。メディアが抵抗勢力になったのである。そのため、今回の「新成長戦略」には、盛り込まれなかった。

いま、安倍さんがやろうとしているのは、新自由主義だ。できるかぎり規制を緩和して、政府は極力、市場に介入しない。いわば「小さい政府」である。小泉純一郎さんが首相のとき、竹中平蔵さんがやろうとして、ひどいバッシングを受けたことは、記憶に新しいだろう。

既得権益を持っている人たちの抵抗は非常に大きい。そして、「抵抗勢力」は、外にだけいるわけではないのだ。むしろ、内部の抵抗勢力のほうが恐ろしい。改革を厳しく進めていけば、支持率は下がるだろう。すなわち、選挙で自民党が敗北するかもしれないのである。自民党議員がもっとも嫌がるのが、選挙で負けることなのだ。

以前、ここで僕は、ドイツの元首相、シュレーダーさんについて書いた。彼も厳しい改革をしたのだが、その成果が上がったのは、失脚した後だった。

政治家というのは厳しい商売なのだ。成果が出るのに、時間がかかることが多い。果たして、安倍さんにその厳しさを乗り越える力強さがあるのか。そこに、この「新成長戦略」の成否がかかっている、と僕は思っている。


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〈田原総一朗(たはら・そういちろう )プロフィール〉
1934年、滋賀県生まれ。60年、岩波映画製作所入社、64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。また、『日本の戦争』(小学

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