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篠塚恭一:街へ出よう(6)── 地域交通を使いこなす(4) 航空機の利用

2013/12/01 13:27 投稿

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  • 篠塚恭一
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山本サキさんは、今年78歳。

7年前に夫をみおくり、今は都内の自宅に一人で暮らしている。

近くに住む娘の洋子さんが毎日のように訪ねてくれるが、身の回りのことは介護ヘルパーの支援を受けながら、ほとんどが事足りていた。

ただ、娘の家族にも多少の気兼ねはあるし、先の心配もあるから、年内に地域包括ケアを提供してくれる高齢者住宅へ入居することにしていた。

その前に昔からサキさんが一度行ってみたいと言っていた北海道に、母娘二人の記念旅行へでかけることにした。

日常生活では、不便を感じていないサキさんだったが、羽田も新千歳も大きな空港だから、乗り遅れでもしたら大変と不安を感じていた。それに揺れる機内でトイレに行きたくなったらと思うと心配で洋子さんに大丈夫かと相談してきたという。

洋子さんは、以前、夫と中学生の子供たちを連れて北海道旅行をしたことがあったので、多少自信はあるつもりだったが、腕白な子供たちと虚弱な年寄りを連れての旅行では勝手も違い、戸惑っていた。そうした視点で旅先を見たことがなかったからだ。

日本航空や全日空など大きな航空会社は、障がいを持つ人や介助が必要な小さな子供、あるいは配慮が必要な妊婦など、さまざまなサポートを必要とする旅客に向けたサービスがあり、専用デスクも設置されている。

ここでは、さまざまな乗客の搭乗に関する疑問に答えてくれ、車いすの貸し出しや設備の説明もしてくれる。

サキさんのようなケースは、チェックインをした際に車いすの貸し出しを受け、搭乗待合室で乗り捨てられるようになっている。揺れる機内での移動が不安なら、狭い通路が通れるサイズの小ぶりな車いすを用意してもらうこともできる。

2000年の交通バリアフリー法の施行とともに空港内のトイレや段差解消など、ハードの整備はもちろん、視覚、聴覚に障がいをもつ旅客への接遇応対や介助訓練など、体系的なサービスシステムの導入を繰り返してきた。

空港はターミナルビルの運営管理をする会社と人と荷物を運ぶ航空会社に分かれており、その連携ミスによる問題がしばしば苦情として指摘されていたが、こうした問題も少なくなっている。

地域包括ケアは、30分で駆け付けられる日常生活圏域でのサービスをさすが、同じ高齢者には墓参りや一時帰宅など30分を越える日常生活圏域がある。さらに遠くの親戚を訪ねる帰郷や家族との思い出をつくる旅行など、もっと広域な文化的生活圏域というものもある。

障がいを持つ人が受けている割引運賃制度は、要介護高齢者には適用されていない。

超高齢者時代、こうした、暮らし全般の課題を包括的に解決していこうという視線が大切だと思う。


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【篠塚恭一(しのづか・きょういち )プロフィール】

1961年、千葉市生れ。91年(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。



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