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篠塚恭一:感謝の言葉に励まされ──【介護旅行】安全で快適な旅のために(4)

2018/10/10 09:43 投稿

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  • 篠塚恭一
先日、旅行から戻ったばかりのお客様が亡くなったとご家族から連絡がありました。旅先でトラベルヘルパーが撮った写真を遺影に使いたいから送ってほしいという内容でした。

最期の旅は、孫の結婚式へ参列することでした。遠い故郷の施設にいる祖父を招きたいと新郎新婦が計画したものです。90歳を越える高齢でしたから周囲も心配して、もしも行けない時にがっかりさせたくないので、本人には出発間際まで内緒で旅の準備をしました。

住まいのある九州から東京まではご家族が世話をして、トラベルヘルパーは羽田空港で出迎えるところからバトンタッチ、サービスに入りました。以前は、出発地からスタッフをつけなければならなかったのですが、今は航空会社のサービスが行き届き、必要なところだけ介助に入るというスポットサービスが提供できるようになっています。

孫との再会を果たした本人は大喜びで無事式にも参列でき元気に帰郷したと聞いていたので突然の訃報に驚きました。

トラベルヘルパーは不自由な身体を補い、その方の意志を遂げることが役割です。もとより死期が迫る方の旅の手伝いが介護旅行ですから、これも仕方のないことですが、トラベルヘルパーとして旅にご一緒すると、まるで自分の身体がその方の一部になったように感じるので、そうした方とのお別れは辛いものです。

 私たちは介護旅行を引き受ける際に3つの確認をとるルールがあります。

一つ目は、まず本人が行きたいという意志を持ち、その確認ができること。確認の方法はたとえ瞬きや眼球を動かすだけでも構いません。次に家族が旅にでるのを同意していることで、家族がいない方は後見人など善意の第三者に代ってもらいます。そして、疾病のある方は、主治医の許可をもらうという3つの確認です。

 正確な身体の情報に基づき、確実な計画をたて温かいサービスを素早く届ける。そうした姿勢が介護旅行を提供するには必要です。

「ありがとう、この中から遺影に使わせてもらいます。」この旅でみせた笑顔が一番という家族の言葉に、私たちもまた励まされています。


【篠塚恭一しのづか・きょういち プロフィール】
1961年、千葉市生れ。91年株SPI設立代表取締役観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー外出支援専門員協会設立理事長。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。



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