先日、渋谷区役所の福祉部から連絡があり、平成27年春の選挙ですっかり若返った区長が、地域のNPOや企業と連携をはかりながら、区政をすすめる意向であることを伺いました。現在、厚生労働省は地域包括ケアシステムを機能させるため、市民活動と連携した新しい総合事業をすすめていますが、私はその関係で渋谷区も動き出したのだろうかと思っていました。
厚労省のまとめによれば、全国で1,579ある自治体保険者の内、平成27年度中に新しい総合事業の実施を予定しているのは202、平成28年度中のところは319、平成29年4月予定は966で、92の地域は未定、あるいはまだ検討中という回答でした。また、介護予防を目的に新しい取り組みとしてはじまった生活支援体制整備事業の実施予定は、平成27年度中のところが711、平成28年度中が243、平成29年度以降が478で、約1割にあたる147の自治体では、まだ実施時期は決まらず検討中というのが現状だそうです。
自治体によってその差は大きく、埼玉県のようにすべての保険者が平成27年度中に事業実施を予定しているところもあれば、佐賀県のように全く手つかずというところもあります。
新しい総合事業では、要支援から要介護1程度の少しの助けがあれば日常生活がおくれる方を対象に、サロンなどの居場所や通いの場づくりを支援していくというのが特徴です。これまでコミュニティカフェや認知症サロンなど、通う場のない地域の高齢者を手弁当で支えてきた方の活動を支援しようという考えには賛同できます。
こうした活動の多くは支える側もまた高齢者です。元気な高齢者が、さらに年上の高齢者を支えることでちょっとした仕事が生まれ、そうした活動自体が、支える側の元気高齢者の介護予防や健康維持にもつながることから、地域の健康づくりを促進するという好循環が生まれると期待されています。
社会参加は健康に良いという話になっていますが、よい居場所をつくっても、そこまでたどり着けない人をどうするのかという点については、未だ明確なビジョンが示されてはいません。
新しい総合事業の中には移動サービスや外出支援という言葉も頻繁に使われ、細部にわたったフォローや調整が必要な段階まで来ており、介護予防・生活支援サービス事業における訪問型サービスD(移動支援)は、その可能性を示しています。しかし、こうした細部を厚労省が他省庁と調整する動きは、まだまだ消極的だと思います。
現在、渋谷界隈には約20万人が暮らしています。今でこそ若者の街としての顔をもつ渋谷ですが、一本路地に入れば今なお日常生活の気配を色濃く感じます。私は渋谷で会社をはじめてから25年がたちましたが、街の顔も徐々に変わりはじめています。若手首長の活躍に大いに期待したいと思います。
【篠塚恭一しのづか・きょういち プロフィール】
1961年、千葉市生れ。91年株SPI設立代表取締役観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー外出支援専門員協会設立理事長。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。
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THE JOURNAL編集部
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